表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/116

43.重魔導銃ティーガー

 剛力竜マイティドラゴンを倒せるようになってからもう1日だけ2層を探索し、翌日にカザキへ帰還した。

 2日間の探索でドラゴンを8匹倒し、序盤の半分ほどは踏破できた。

 魔石の他にもドラゴンの牙、爪、皮革をいくつか入手している。


 我が家へ帰り着くと、まずは今後の戦力強化について話しあった。


「それでタツマ様、どうやって魔導銃を強化するのですかな?」

「まずは銃身を伸ばして肉厚も増やしたいんだ。それと、弾を鉄にしようかと思ってる」

「なんと、鉄製の弾丸ですか。しかし、それがニカにできますかな?」


 現状はそこら中にある石英を弾にしているため、材料には困っていない。

 ひょっとしたら鉄でもやれるんじゃないかと、ニカに聞いてみたんだが、そうは問屋が卸さなかった。


「むり。みぢかに、ないもの、じかん、かかる」


 一応、精霊術の材料は精霊界から引き出しているはずなのだが、現実世界の影響が皆無ではなかった。

 精霊界とは、この世界と重なり合うような存在であるため、現実の資源に左右されるんだそうだ。


「そうなのか~。なんかいい手はないかな~?」

「今までどおり、石英ではいけないのですかな?」

「石英だと鉄の3分の1ぐらいしか比重、つまり重さがないから威力も弱いんだ。弾の威力は速度と重量で決まるからね」

「それなら、事前に鉄の弾を作っておくというのは、いかがでしょう?」

「いやまあ、それも手なんだけどさ、持ち運びしにくいし、いちいち弾込めをするのも――」


 そんな話をしてたら閃いた。


「そうか……もし鉄の塊が手元にあれば、それを弾にできるんじゃないか? ニカ」

「……よく、わからない、けど、できる、かも」

「なるほど、それはよい手ですな。今までのように無限とはいきませんが、戦闘終了後に弾丸を回収すれば、それなりに使い回しもできるでしょう」

「そうだよ、ベンケイ。せっかくだから炭素なんかも調整してやってみよう」

「たんそ、ですか?」

「たんそ?」


 ベンケイとニカがポカンとした顔をする。

 そこで地球の鋼鉄に関する知識を、使役リンクも使いながら共有してみた。

 俺も細かいことは覚えてないが、炭素量を増やすと硬く脆くなることとか、クロムやモリブデンなどの元素を混ぜることでも性質が変わることを説明した。


 するとベンケイが、”あー、あれはそういうことだったのか”とか、”おお、その元素なら心当たりがありますぞ”とか言ってきた。

 さすがベンケイ、20年の修行は伊達じゃない。

 長年の蓄積と、ドワーフの不思議能力によって、ある程度の金属加工理論を会得しているのだ。


 そんな話をしているうちに我慢できなくなったらしく、ムラマサの工房に押しかけることになった。

 工房で事情を話して銑鉄せんてつを売ってもらい、その場で成分調整を始める。


「ハニヤスの力持て、この金の性を見分けんと欲す、金属分析アナライジング


 まず鍛冶魔法で分析すると、炭素量が4%ぐらいだと分かった。

 実はこれ、画期的なことで、普段は多い少ないという感覚でしか見ていなかった。

 しかし俺が鉄、鋼、銑鉄の概念を伝えたことで、パーセントで認識することができるようになったのだ。

 さらにベンケイのチート魔法が続く。


「ハニヤスの力持て金の素を集めんと欲す、金属収集ギャザリング


 これによって銑鉄の中の余分な炭素を抜き取った。

 何回か分析しながら、炭素量を1.5%に近づけていく。

 たしか日本刀の材料に使われる玉鋼たまはがねってのが、それくらいだったと思う。

 弾としてどれぐらいが最適か分からないけど、適度に靭性もあった方がいいでしょ。


 こうして成分調整と焼き入れまで済ませた鋼の塊を、10kgほど確保した。

 それを使いやすいよう2つに分け、トモエに運んでもらう。



 さっそく鋼鉄塊を郊外の森の中に持ち込んで、魔導銃で撃ってみることにした。

 とりあえず銃は今ある物を使い、鋼鉄弾の形成が可能かどうかを確認する。

 俺の傍らに鋼鉄塊を置いて、ニカを呼んだ。


「ニカ、ここに来て、この鋼鉄で弾を作れるか試してみてくれ。見本はこれな」


 俺は石英で直径10ミリ、全長80ミリの有翼弾を作りだし、それをニカに見せた。


「うん、やってみる」


 そう言って彼女が右手で鋼鉄に触れながら、意識を集中させる。

 しばらくウンウン唸っていたが、やがて左手の上に鋼鉄の有翼弾が現れた。

 ちゃんと石の装弾筒サボも付いている。


「できた!」

「おっし、よくやったぞ。それじゃ、ちょっと貸してくれ」


 彼女から弾を受け取ると、それを魔導銃の先端から挿入する。

 そして腹ばいになって銃を構え、10メートルほど先の的に向けた。

 ちなみに的はニカが石で作ってくれたもので、5センチ厚の的を5枚重ねてある。


 そして銃身の中の弾尻に、従来の3倍ほどの疑似火薬を生成した。

 改めて狙いを確かめてから着火すると、強い反動と共に弾が飛び出す。

 一瞬の後、鋼鉄弾が的に突き刺さった。

 石英弾では1枚程度だった貫通力が、今回は4枚目に達していた。


「ほほう、さすがですな。これならドラゴンにも大きなダメージを与えられるでしょう」

「うん、そうだね。でも今ので3倍の威力なんだけど、さらに倍にしたいからやっぱり新しい銃が必要だな」


 石英の比重が2.7に対し、鉄は7.9で約3倍。

 さらに弾の長さを倍にしたから重量は6倍だ。

 これを同じ速さで撃ち出すには、それだけの爆発力が必要になる。


 銃身が長ければより爆発力が弾に伝わるので、30センチほど伸ばそうと思う。

 当然、反動が大きくなるので銃自体を重くするのと、構造の強化も必要だ。

 地球でいう対物ライフルみたいな銃になるな。

 ドラゴンなんて戦車みたいなもんだから、それぐらいでちょうどいいだろう。


 そんな話をベンケイとしていたら、目を輝かせて、”さっそく新型の設計に取りかかりましょう”、とか言ってる。

 さすがモノ作りキチガイ。

 まあ、彼あってこその魔導銃だから、これからも頼りにしてるけどね。





 それから5日掛けて、新型魔導銃を作りあげた。

 物自体は1日でできたのだが、いろいろと試験したり調整したりで手間取った。

 しかし、その甲斐あって強力な銃が誕生した。


 魔導銃が2丁になったので、古い方を”パンター”、新型を”ティーガー”と呼ぶことにした。

 理由?

 なんとなくノリで……。


 ティーガーは反動を抑えるためにわざと重くしてある。

 逆にパンターは普段使い用に、銃身を15センチ詰めてさらに軽くした。

 余った銃身はいずれ拳銃みたいなのにしようと思ってるが、とりあえず後回しだ。


 ついでにパンターで撃つための散弾も開発した。

 と言っても、銃身内に収まるような散弾をニカに作ってもらい、俺がぶっ放すだけだけどな。

 しかし爆発圧力がもろに散弾に伝わるから、威力は何倍にも増した。

 たぶん、赤血山猫ブラッドリンクスくらいなら、とどめは不要になったんじゃないだろうか。



 新型銃を作ってる間、ヨシツネたちはスザクの指導を受けて練度を上げていた。

 ヨシツネは魔闘術に磨きを掛け、かなり切れ味が増しているらしい。

 次は属性魔法を剣に付与することに取り組んでいるとか。


 ホシカゲも魔闘術の練度が上がり、肉体強化も少しできるようになっている。

 トモエも肉体強化を覚え、頭頂部に魔力をまとえるようになったとか。

 地味だけど、確実に戦闘力は高まっている。


 それと、ドラゴンから手に入れた竜皮革を鎧に組み込んで、防御力向上も図った。

 重要な部分を守る胸当てと兜を竜皮革で補強した形だが、それなりに効果はあるだろう。


 俺とベンケイは銃作りにかまけて練習できてないので、これから魔闘術の訓練をせねばならない。

 ある程度目処がついたら、ウトウ迷宮に再挑戦だな。

 これで鋼殻竜スチールドラゴンを倒せるぐらいには、なっているだろうか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作始めました。

エウレンディア王国再興記 ~無能と呼ばれた俺が実は最強の召喚士?~

亡国の王子が試練に打ち勝ち、仲間と共に祖国を再興するお話。

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ