表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/116

41.リベンジ・フォー・ドラゴン

 魔導銃の開発に取りかかった俺たちだが、とりあえず鉄の銃身を用いた有翼徹甲弾の実験に成功した。

 しかし、これだといちいち弾を先込めせねばならず、かなり不便だ。

 そこでベンケイに聖銀ミスリル製の銃身を依頼したのだが、1週間後にそれが出来上がってきた。


「ウハーッ、ピッカピカな銃身。なんか使うのがもったいないね」

「なんと言ってもミスリルですからな。製作には気を遣いましたわい」

「本当にご苦労様。でもこれ、試射が終わったら、もっと地味にできないかな? ちょっと目立ちすぎだと思う」

「ふーむ。それなら、表面を荒らしてつや消しにしましょう」

「うん、頼むよ」



 それからまた森の中へ行き、銃の試射をした。

 まずはこの前と同じように、ニカに作ってもらった弾に疑似火薬を付けてから先込めする。

 そして近くの枯れ木に向かって撃つと、見事にそれを撃ち抜いた。

 魔力伝達の良いミスリルを使っているため、操作性も抜群だ。


「よし、それじゃあニカ。この銃身の中に弾を生成できるか? この辺な」

「うん、やってみる」


 俺が銃身の後端より少し前を指しながらお願いすると、ニカが弾作りに取り組み始めた。

 最初は勝手が分からず、口をへの字にしてウンウン唸っていたが、やがて成功したのか、彼女がニコリと微笑んだ。

 すると銃身の中に弾が形成されており、今度は俺が弾の後端に疑似火薬を生成した。

 再び狙いを付けて撃つと、問題なく発射できた。


「うん、やっぱりミスリルなら弾を直接形成できるし、反応も速いな。たぶん威力の調整もしやすいと思う。それじゃあ、ニカはどんどん弾を作ってくれるか?」

「うん、いいよ」


 それから次々と弾を撃ち、いろいろ検証してみた。

 まず連射速度だが、最大で毎秒1発というところだ。

 さすがに弾の構造が複雑なので3連射トリプルは実現できないが、まあ十分な能力だろう。


 さらにその弾は、ひと抱えもある丸太を撃ち抜いた。

 別の指標としてニカに石の的を作ってもらったら、5センチくらいまでなら貫通する。

 それ以上は弾がもたず、反動も大きいのでこの辺が限界だろう。

 とりあえず膝立ち姿勢でも撃てるが、伏せ撃ちの方が安定する。


 あと、銃身を支える銃床部分にも問題があった。

 けっこう頑丈に固定してあったのだが、20発ほど撃ったらガタがきた。

 ちょくちょくベンケイに直してもらう必要があったので、もう少し改良した方がよさそうだ。


 しかし、それらを除けばなかなかの武器だと思う。

 なんと言っても、疑似火薬はほとんど熱を持たないから、排熱に気を遣わなくてもいい。

 発射時の摩擦で多少の熱は発生するが、伝熱性の良いミスリルでは大した問題にならない。

 いずれにしても、これがあればドラゴンにもなんとか対抗できそうだ。

 とびっきりの秘密兵器の誕生だ。


 ちなみに、この世界に銃や大砲が全く無いかというと、多少は存在するらしい。

 しかしこの世界には魔法があるため、あまり発展していないのが実状だ。

 魔術の使えない人たちが、細々と開発している状況だとか。





 それから3日間掛けて、”魔導銃”の改良に取り組んだ。

 木製の銃床は鉄部品で補強して、銃身の固定方法も見直してある。

 銃身は目立たないようつや消し処理にして、伏せ撃ち用の支持脚と肩に掛けるベルトも追加した。


 ついでに、持ち運び用のキャリングバッグも作ってある。

 あまり他人には見せたくないからね。

 ホント、多彩な職人のベンケイがいて助かった。

 鍛冶魔法サイコー!





 こうして準備を整え、いよいよ剛力竜マイティドラゴンにリベンジする日がきた。

 久しぶりにウトウ迷宮の2層に下りて魔導銃を装備すると、敵を求めて探索を始める。

 そして以前、遭遇した分岐ドームにたどり着くと、奴が中央に鎮座していた。


 それを確認した俺は、ドームに続く通路で腹ばいになり、魔導銃を構えた。

 まだこちらに気づいていないドラゴンに狙いを定めると、容赦なくぶっ放した。

 30メートルほどの距離を有翼弾が一瞬で飛び抜け、ドラゴンの目に突き刺さる。


「グギャーーッ!」


 血しぶきと悲鳴を上げながら、奴が身悶えした。

 そして俺たちに気づくと、殺意のこもった目を向けてくる。

 しかしこちらもヨシツネ、ベンケイ、ホシカゲ、トモエが敵に向けて駆けだしていた。

 さらにスザクは上空に舞い上がり、ニカは俺の横で弾作りと見張りの役だ。


 2層のドラゴンが通路を歩き回ることはまずないと思うが、他の冒険者に出くわす可能性はある。

 調子こいて銃を撃ってて後ろから襲われないよう、ニカに見張りを頼んだのだ。

 彼女は戦いには加わらないけど、けっこう役立つ存在だ。


 おかげで俺は安心して銃を撃っていた。

 しかし、いくら魔導銃が強力だと言っても、1撃でドラゴンは倒せない。

 基本的には至近距離でヨシツネたちがミスリル武器を振るい、俺がそれをサポートする。

 しかもあまり調子に乗って撃つと銃がすぐにオシャカになりそうなので、要所要所で撃つよう心がけた。


 幸いにも俺の援護で、かなりドラゴンの攻撃を邪魔できていた。

 ベンケイをふっ飛ばしたような前足攻撃とか、噛み付きや尻尾の攻撃なんかも、その動作が見えた瞬間に邪魔してやると、かなり威力とスピードが削がれる。

 おかげで最初は恐る恐る戦っていたヨシツネたちも、徐々に大胆に動くようになってきた。


 そうすると不思議なもので、使いこなせていなかったミスリル武器の切れ味がどんどん良くなってくる。

 以前は表面しか切れていなかった攻撃がさらに深く食い込み、ドラゴンの流す血が増えていった。

 そしてとうとう前足を潰されたドラゴンが転倒すると、ヨシツネが首を深く切り裂いた。

 致命傷を受けたマイティドラゴンが、とうとう動かなくなる。


「ヒャッホー、やったぜみんな!」


 感極まった俺は、銃を抱えて駆けだした。

 近寄ってみると、前衛陣はみんな肩で息をしていた。


「ハアッ、ハアッ……お疲れさまです、タツマ様」

「俺なんかより、よっぽどみんなの方がお疲れだよ」

「フウッ、なかなか、ドラゴンが、倒れてくれないので、たしかに、疲れましたな」

「ワフン(僕も疲れたですぅ)」

「クルルルルーッ(本当にしぶとかったですよ)」


 みんなぼやいてはいるが、その表情は難敵を倒しきった満足感に満ちていた。

 すると、スザクも俺の肩に停まり、会話に参加する。


「皆さん、お疲れのようですね~。しかし、とうとう竜種を倒しきったのですから、誇ってもいいですよ~」

「アハハッ、がんばったね、みんな」


 やがてニカも追いついてきてはしゃぎ回る。

 彼女も一緒に仕事をやりきり、とても誇らしそうだ。


 そうやって勝利を噛みしめていると、ドラゴンの遺骸が霞のように消え去った。

 そしてそこには直径3センチほどもある大きな魔石と、竜の皮革が残された。


「さすが、まともなドラゴンになると魔石もでかいな。しかも、なんか素材まで残ってるし。ドラゴンは守護者みたいに形見を残す場合があるとは聞いてたけど、ラッキーだったね」

「それもけっこう大きな竜皮革ですぞ。これだけあれば、鎧を多少は補強できますな」


 ベンケイの言うとおり、皮革は1メートル四方ぐらいあって、それなりに使いでがありそうだ。

 たしか、竜の皮は軽いわりに強度が高いらしい。

 実際、俺たちも苦労させられたのだから、きっと役に立つだろう。


「なんにしろ、戦った甲斐はあったな。それに今回の反省をかせば、もっと早く倒せるようにもなるだろうし。とりあえず場所を変えて、飯でも食いながら反省会をしようよ」

「それがいいですね。もっと効率の良い倒し方を相談しましょう」

「そうですな。武器の手入れもしておきましょう」


 全く歯が立たなかった竜種をも、俺たちは打倒した。

 今後も力を合わせれば、さらなる強敵にも打ち勝てると信じたいものだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作始めました。

エウレンディア王国再興記 ~無能と呼ばれた俺が実は最強の召喚士?~

亡国の王子が試練に打ち勝ち、仲間と共に祖国を再興するお話。

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ