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36.1層突破

 ウトウ迷宮に挑戦して2日目、俺たちは早くも1層深部へ進んだ。

 ここには盗賊竜シーフラプトルから一転して、鎧竜アーマラスという大きな魔物が出る。


 最初の分岐点で待ち受けていたのは、いかにも硬そうな鎧といくつものスパイクに身を包んだ重装兵だった。

 地球の恐竜でいうと、アンキロサウルスと呼ばれるのに似ている。

 体格はシロサイと同じぐらいだろうか。

 そんな奴が、ドームの中央に2匹いた。


(噂には聞いてたけど、本当に硬そうだな)

(そうですね。鎧の隙間以外は剣も通らないでしょう)

(それなら私にお任せください、主様。見事奴らの動きを止めてみせましょう)

(トモエが止めるって言ったって、2匹同時は無理だろ)

(わふ、1匹は僕が引きつけるです)

(うーん、俺が3連射トリプルで援護すればなんとかなるか。それじゃあ、トモエが動きを止めた奴をヨシツネとベンケイが倒すってことでよい?)

((了解))


 念話で打ち合わせを済ませると、まずホシカゲが単独で突っこんだ。

 そしてアーマラスの鼻先をかすめながら、奴らをかき回す。

 そっちに気を取られてる間に、トモエも突っこんだ。

 彼女は軽快に敵の1匹に駆け寄ると、側面に頭突きをぶちかます。


「ボエーーッ!」


 トモエの頑丈な頭頂が側面のスパイクをへし折ると、アーマラスが悲痛な声を上げた。

 さらに後から追い付いたヨシツネが、剣を振るう。

 分厚い鎧に包まれた部分を避け、柔らかそうな首辺りを狙っている。

 続けてベンケイも戦闘に加わり、トモエは頭突きと尻尾攻撃を繰り返していた。


 袋叩きにされる仲間を助けようと、もう1匹が合流しようとするのをホシカゲが邪魔する。

 さらに俺もトリプルで援護していたら片目に命中し、そいつが暴れだした。

 そうこうするうちに、ようやくヨシツネたちが片方を仕留めた。

 こうなると残りは消化戦だ。


 危なげなくアーマラスを仕留めてから、みんなで休憩を取る。


「トモエのおかげで、アーマラスもわりと楽に倒せたな」

「クルルルルーッ(お役に立てて幸いです)」

「ワフッ(僕も頑張ったです)」

「ああ、ホシカゲもよくやったぞ。えらいえらい」


 そう言ってホシカゲの頭をワシワシと撫でてやると、嬉しそうに笑み崩れた。


「実際問題、トモエの存在は大きかったですね。ほとんど危なげなく狩れましたから」

「まったくまったく。実に心強い仲間ですな」

「クルルルルーッ(ヨシツネとベンケイも凄かったですよ)」


 仲間の関係も良好で何よりだ。



 その後もドームにたどり着くごとに、アーマラスを倒していった。

 たまに3匹同時に相手をすることがあり、さすがにその時は苦労した。

 そういう場合は俺も囮役になり、スザクの戦闘管制を駆使して乗りきった。

 彼女の指示なしでは、トリプルを撃ちながら逃げ回ることはできなかったろう。




 夕刻までに深部の半分近くを探索すると、今日は中で野営することにした。

 どうせ外に出ても野営するなら、狩場に近い方がいい。


 魔物が闊歩かっぽする迷宮の中でも、守護者部屋の前の待機スペースと通路の行き止まり部分は安全地帯とされている。

 この場所だけは誰かが陣取っている間は魔物が湧かず、よそから入ってくる可能性も低いからだ。

 特に深部にいるアーマラスはドームでしか湧かないし、フラフラ歩き回ることもないらしい。

 なのでわりと安心して眠れるのだが、見張りは絶対に立てる。

 敵は魔物だけではなく、別の冒険者パーティに襲われる可能性もあるからだ。


 俺達の戦闘メンバーは5人だが、スザクとニカもいる。

 この7人で4交代シフトを組んだ。

 1人足りない分は土精霊ノーミーのニカが補ってくれた。


 彼女は精霊だから、睡眠とかはあまり関係ないらしい。

 無口だから、お喋りの相手には向かないけどね。

 でも、ベンケイとヨシツネはあまり気にならないらしい。

 俺はスザクと組み、残りのホシカゲとトモエがペアになった。


 だいたい10時間を睡眠時間に充ててるが、その4分の3も眠れれば上々だろう。

 ちなみに地面が固くて体が痛いとぼやいたら、ニカが魔法でふかふかの土に変えてくれて少しマシになった。

 土魔法バンザイ。





 翌日も早朝から未踏部分を探索し、アーマラスを20匹以上倒した。

 そうして深部を調べ尽くした今、俺たちは守護者部屋の前にいる。

 先客が1組だけ陣取っていたが、今は休憩しているようだ。


「さて、せっかくだから、守護者に挑戦してみようか」

「そうですね。どうせ野営するなら、地上の方がいいでしょう」

「たしかここの守護者は、シーフラプトルとアーマラスの混成でしたな?」

「うん、ラプトル6匹とアーマラス2匹だって。これがまた嫌らしい組み合わせで、けっこう苦労するらしいんだ」

「それはそうでしょう。作戦はどうしますかな?」


 ベンケイに作戦を問われた俺は、少し考えて皆に相談した。


「ベンケイとトモエに1匹ずつアーマラスを押さえてもらって、残りでラプトルを殲滅しようと思う。やれそうかな?」

(ベンケイの援護があればやってみせます、主様)

「……うーむ。まあ、トモエと一緒ならなんとかなるでしょう」

「うん、あくまで押さえるだけだから、無理しなくていいよ」


 ベンケイは少し不安そうだったが、彼らならなんとかなるだろう。

 作戦が決まり、先客の前を素通りしようとしたら、声を掛けられた。


「おお、兄ちゃんたち、守護者に挑むのかい? 敵は手強いから、気をつけろよ」

「あ、ど~も~」


 珍しく気のいい冒険者だったので、にこやかに応じて扉の前に立った。

 扉に手を当てると、横にスライドして入り口が開かれる。

 その入り口にみんなで踏み込むと、扉が閉まって部屋が明るくなった。

 そして部屋の奥で、敵が立ち上がる。


 情報どおり、ラプトル6匹とアーマラス2匹だった。

 これが別々ならどうということもないが、相互に連携するってんだから厄介極まりない。

 しかし、それならば連携する前に潰すまでだ。


「みんな、行くぞ!」


 ラプトル目がけて俺が走りだすと、仲間も後に続いた。

 急な行動に戸惑っているラプトルに、まず散弾銃ショットガンをぶっぱなした。


「ギャースッ!」


 ギンギンに尖った散弾を至近距離でくらい、ラプトルが悲鳴を上げる。

 そこにヨシツネとホシカゲが飛び込み、ラプトルを倒し始める。


 その一方でトモエがアーマラスに駆け寄り、頭突きと尻尾攻撃を繰り出した。

 アーマラスは2匹でトモエに対抗しようとするが、それをベンケイが盾で邪魔する。

 彼は防御に徹して、トモエをサポートするようだ。


 それを確認した俺は、ヨシツネとホシカゲに襲いかかるラプトルを3連射トリプルで牽制した。

 さすがに石英弾だけでは倒せないが、仲間の背後を守るぐらいはできる。

 そうやって、ようやくラプトルを殲滅できようかという時に、スザクから警告が飛んだ。


(主様、ベンケイが危険です)


 とっさにベンケイの方を振り返ると、アーマラスに突き飛ばされて倒れる彼が見えた。

 トモエがもう1匹の相手で忙しい中、敵が追い討ちを掛けようとしている。

 すかさず俺は、そいつの頭部にトリプルを連射した。

 するとその内の何発かが目に当たったらしく、アーマラスが悲鳴を上げる。


「ボエーッ!」

「あ、ありがとうございます、タツマ様」


 危機を脱したベンケイが立ち上がり、今度は戦斧を振り上げてアーマラスに斬りかかった。

 さらに、ようやくラプトルを殲滅したヨシツネとホシカゲもそれに加わる。

 片目を潰された奴を彼らに任せ、俺はトモエを援護した。

 トモエと戦っているアーマラスの頭部にトリプルを連射すると、わずかに敵の動きが止まった。


「クルルルルーッ(感謝します、主様)!」


 すかさずトモエが頭突きを食らわすと、敵の動きが鈍くなった。

 さらに彼女が頭突きと尻尾攻撃でラッシュを掛けると、アーマラスは防戦一方だ。

 やがてもう1匹を片付けたヨシツネたちも加わると、すぐに守護者戦は終了した。


 こうして俺たちは、ウトウ迷宮への挑戦3日目にして第1層を突破した。

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エウレンディア王国再興記 ~無能と呼ばれた俺が実は最強の召喚士?~

亡国の王子が試練に打ち勝ち、仲間と共に祖国を再興するお話。

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