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14.1層深部

 昼飯の後も探索を続け、中盤をほとんど踏破することができた。

 その間に出会ったゴブリンズは、ヨシツネ、ホシカゲと連携して狩りまくる。

 ヨシツネが適度に敵を回してくれるので、俺にとっては良い訓練になった。


 夕刻に近くなると、その日は引き上げた。

 いずれは野営の道具を持ち込んで、泊まり込みで攻略なんてのもいいかもしれない。


 それにしても、今日だけでゴブリン26匹、ソルジャー23匹も倒すことができた。

 銀貨36枚の稼ぎは、今までの最高記録だ。

 これなら、じきに装備を充実させられそうだ。





 翌日も早朝から迷宮に潜り、まっすぐに深部を目指した。

 半刻ほど歩くと、とうとう深部の入り口に差し掛かる。

 ここから先には、弓矢を持った緑小鬼弓士ゴブリンアーチャーが出るらしい。

 ヨシツネとホシカゲに注意を促してから、先へ進む。


(わふ、この先にゴブリンがたくさんいるのです。なんだか待ち伏せしてるみたいです)

「ありがとう、ホシカゲ。この先でゴブリンが待ち伏せてるらしい。今までよりも手強そうだ」

「そんなことまで分かるのですか? ホシカゲは大したものですね」

「ワフン(それほどでもないのです)」

「それほどでもないってさ。それじゃあ、慎重に進もうか」


 足音を忍ばせて先に進むと、分岐点が見えてきた。


(あそこにゴブリンが潜んでいるのです)

「そうか。あの辺にゴブリンが潜んでるらしいんだけど、どうしよう?」

「それなら私が先行しておびき出すので、魔法で援護してもらえますか?」

「そんなんで大丈夫?」

「ゴブリンの矢など、簡単に防げますよ」

「分かった。でも気を付けてね」


 ヨシツネは軽く頷きながら、無造作に歩きだした。

 俺とホシカゲは壁際に張り付いて様子を窺う。

 やがてヨシツネが10歩ほど進むと、分岐路の陰から3匹のゴブリンアーチャーが現れた。


 奴らは即座に矢を撃ってきたが、ヨシツネはそれを切り払いながら突進する。

 そんな彼を援護するため、俺はアーチャーに向かって熱弾ヒートを連射した。

 その内2発がアーチャーに当たり、奴らが怯む。


 そこにヨシツネが突っ込んで、瞬く間にアーチャーを3匹とも切り伏せた。

 すると隠れていたソルジャーがもう3匹出てきたので、そいつらと戦闘になった。

 さすがにヨシツネでも3匹同時はヤバいので、俺もヒートを撃ちながら突進する。


 ホシカゲも既に飛びだしており、吠えながらソルジャーの注意を引こうとしていた。

 俺もすぐに追いついて、ソルジャーと対峙した。

 いつもどおりヒートを当ててから、怯んだところをメイスで攻撃。


 しかしソルジャーは1発やそこらで倒れたりはしない。

 やむを得ず至近距離からヒートをぶっぱなしつつ、隙を作ってメイスを振り下ろした。

 向こうも短剣を振り回してくるが、ヒートを牽制に使って終始優勢に戦うことができた。


 やがてソルジャーの息の根を止めると、すでに2匹を片付けたヨシツネが俺を見守っていた。

 俺は息を切らせながら、彼に話しかける。


「ハアッハアッ……もう、終わってたか。さすが、ヨシツネ、だな」

「いえ、タツマ様もご苦労様です。私が魔石を回収しますから、休んでいてください」


 そう言われたら、俺はへたり込んでしまった。

 思った以上に疲れてる。


「大丈夫ですか~、主様? 体力ありませんね~」

「や、やかましいわ……」


 相変わらず口の悪いスザクである。


 そんな俺達を横目に、ヨシツネは黙々と魔石を回収している。

 俺も倒したばかりのソルジャーの胸の辺りから、魔石をほじくり出した。

 ホシカゲも口だけで、いくつか魔石を取り出していた。


 魔石を全て集めると、座って話をした。


「アーチャーはちょっと厄介だけど、ヨシツネがいれば問題ないよね」

「そうですね。しかし今後のことを考えると、タツマ様にも剣か何かを使ってもらった方がいいように思います」

「うーん、剣ってけっこう難しいんでしょ? 槍の方がまだ使いやすいって聞いたことあるけど」

「そうですね。タツマ様は魔法が主ですし、間合いの取れる槍の方がいいかもしれません。帰りに武具屋を覗いてみましょう」



 その後もホシカゲの探知能力でゴブリンズを見つけ出しながら、探索を続けた。

 中盤に比べるといっぺんに出てくる数が多く、戦闘もそれなりに時間が掛かった。

 全部ヨシツネに任せれば、もっと楽だったとは思うが、俺も経験を積んで強くなりたいので仕方ない。


 深部を半分ほど探索して帰還すると、討伐数はゴブリン6匹、ソルジャー17匹、アーチャー14匹にもなった。

 アーチャーの魔石は2匹で銀貨3枚なので、合計で銀貨41枚だ。

 またまた記録更新だ。




 この稼ぎに少し足して、銀貨55枚で槍を買って帰った。

 迷宮での取り回しを考えて、槍の長さは俺の背と同じくらいにした。

 俺の背はたぶん165cmくらいだと思う。

 もう少し成長するとしても、せいぜい170cm止まりといったところか。


 ちなみにヨシツネは180cmくらいあるので、羨ましい。

 しかも細マッチョでかっこいいんだな、これが。

 彼は呪いが解けて表情に生気が戻ったので、精悍な顔立ちが女性の目を引くようになっている。


 すれ違う女性がしばしば振り返るほどなんだけど、ヨシツネは全然気にしてないみたい。

 単に鈍感なのか、それともそっちの欲望が薄いのか?

 いずれにしろ、彼に惚れた女性は苦労しそうだね。




 家に帰ったら、テッシンたちがヨシツネの部屋を準備してくれてた。

 しかもベッドまで備わってる。


「テッシンさん、こんなことまでしてくれなくても」

「いやいや、使ってない部屋を片付けただけだから。ヨシツネ君も床の上じゃ疲れが取れないだろう」

「いえ、俺は平気ですけど……」


 予想外の厚遇にヨシツネが戸惑っていると、テッシンはニコニコ笑いながら言う。


「もちろんタダじゃないよ。タツマと同じように、銀貨30枚を毎月入れてもらうことになる」


 なるほど、これからはヨシツネも賃借人ってことか。

 それならここで、家賃アップを提案しておこう。


「それなら、これからは2人合わせて金貨1枚を毎月払いますよ」

「別に、そんなにもらわなくても……」

「今までが安すぎたんですよ。大丈夫、今日だって銀貨40枚以上稼いだんだから、それぐらい余裕ですって」

「ほほう、タツマも頼もしくなったなあ」

「これもヨシツネのおかげですけどね」

「そうかそうか、それじゃあ夕食にしよう」


 夕食の席では、迷宮に出てくる魔物の話と、ヨシツネがいかに強いかで盛り上がった。

 俺のことを心配していたシズクも、少しは安心したようだ。





 翌朝は久しぶりに薬草採取に行き、森の中で槍の訓練をした。

 ヨシツネに槍の使い方を教えてもらいながら、組手にも付き合ってもらう。

 俺には魔法もあるので、防御的な槍の使い方を中心に練習した。


 ヨシツネは元戦士だっただけあって、この手のことには詳しい。

 ホント、良い仲間ができたものだ。


 彼にはもっと親しく接してもらいたいんだけど、まだまだ固いんだよな。

 まあ、一応俺が主人だし、呪いを解いた大恩人だから、そうなっちゃうのは仕方ないんだろう。

 少しずつ、親しくなっていけばいいかな。

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エウレンディア王国再興記 ~無能と呼ばれた俺が実は最強の召喚士?~

亡国の王子が試練に打ち勝ち、仲間と共に祖国を再興するお話。

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