1.気がつけば異世界
新作の連載始めます。
今回は異世界転生物ですが、チートとかそういうのは少なめで行く予定です。
2017/7/2
1章を改稿しました。話のスジとか設定は変えてません。
「フゴッ……あれっ、ここどこ?」
気がつくと俺は草原に倒れていた。
右頬を草むらに押しつけた状態で、うつ伏せに寝転がっていたのだ。
なんで俺はこんな所に?
たしか俺は……。
思い出そうとすると、頭がズキンと痛んだ。
思わず頭に手を当て、しばらくじっとしていたら治まってきた。
そこで改めて自分のことを思い出してみると、ようやく記憶が蘇ってくる。
俺の名前は宮本龍真、35歳、独身。
中規模の自動車部品メーカーでエンジニアをやってたんだが、俺を裏切った会社にブチ切れて退職したばかりだ。
2ヶ月ほど自由を満喫し、そろそろ仕事を探そうかと思ってたはずだが……。
体を起こして地面に座り直すと、やはり俺は草原の中にいた。
快晴の空の下を風が吹き渡り、心地よい。
「ようやく気がつきましたか~? 主様」
ふいに声を掛けられたと思ったら、左肩に何かが触れた。
そちらへ目をやると、派手な色合いのインコが肩に乗っている。
緑の体に頭部だけオレンジ色で、クチバシは赤という具合だ。
「インコ?」
思わず呟いたら、そいつが喋り始めた。
「違いますよ~、主様。ただのインコではなく、神の使いなんですからね~。スザクとお呼びくださ~い」
「うわっ、喋った。しかも人間みたい」
インコが喋ること自体はあり得るが、妙に流暢だ。
しかも甲高い声で語尾を上げるから、少しイラッとくる。
「そうですよ~。私はこの世界で主様をサポートするための存在なので、こうやって喋れるんで~す」
「えっ、この世界って、何?」
「主様は地球とは異なる別の世界に転生されました。厳密に言うと、この世界で生きていた人格と主様の人格が入れ替わった形ですね~」
「……」
思わず言葉を失ってしまった。
なんだよ、異世界転生って。
お前はラノベ出版業界の回し者か、と突っ込みたくなる話だ。
しかし改めて俺の体に目をやると、見覚えのない風体であることは事実だった。
服装は、ちょっとゴワゴワする布のズボンとシャツに、革の上着を引っかけてる。
古ぼけた布製のリュックを背負い、ベルトに小物入れとナイフがくくり付けてある。
なんて言うか、アニメなんかで見る冒険者みたいな格好?
しかも、肉体も俺の物じゃない。
肌はスベスベツヤツヤしてるし、俺が作業中にへまをして付けた手の甲の傷も無いのだ。
さらに言えば、腹回りのぜい肉も無いし、腰も痛くなくて体が軽い。
俺は、両手を目の前でにぎにぎしながら呟いた。
「本当に、転生したってのか?」
「だからそう言ってるじゃないですか~」
また左肩のインコが喋る。
「いや、だってそんなこと、簡単に受け入れられるもんじゃないだろ?」
「まあ、それはそうでしょうね~。だけど事実は変わらないんだから、早めに受け入れた方が得ですよ~」
まるで他人事のように言われ、少し腹が立ったが、たしかに事実は変わらないようだ。
明らかにこの体は元の俺ではないし、元の人格の記憶もなんとなく浮かんできた。
この体の持ち主の名前はタツマ。
偶然か必然か、俺と同じだ。
ただしこの世界で平民は苗字を持たず、ただのタツマとして生きている。
タツマの年齢は15歳で、最近成人したばかりだ。
彼は6歳の時、親を魔物に殺されたので、その後は親切な商人に引き取られた。
その人と一緒に商売をしてもよかったのだが、彼は強くなりたくて冒険者になった、ってことらしい。
この世界では冒険者に登録して魔物を倒すと、その生命力を取り込んで肉体が強化される。
なんだそのご都合主義って感じだが、迷宮と冒険の神スサノオから与えられる恩恵だとか、なんとか。
でもタツマはまだ冒険者になったばかりだから、普通の人と変わらない。
「なあ、スザク。この体の持ち主はどうなったんだ?」