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良くなった機嫌

それからお昼過ぎ、幸助の別荘を出て、自宅に帰る事になった。

京美とまきはお昼前に帰ってしまい、篤史達五人は好美が作ってくれた昼食を食べてから帰る事になったのだ。

まきをカッコいいと思っていた留理は、別荘を出ていくまきを呼び止めてスマホで一緒に写メを取ってもらった。

「事件、あっけなく終わったね」

里奈は乗り込んだバスの中で内心ホッとした声で言った。

「そうだね。森山探偵が刑務所に入ったのを知らないで復讐心のためだけにずっと生きてたなんて・・・」

利佳は改めて何かを考えさせられていた。

「うん。居酒屋でたまに会ってたって言ってたけど、刑務所に入ってる間、居酒屋なんて来れないのにどうしてたんだろう?」

留理は幸助の言葉に疑問を感じていた。

「多分、刑期を終えてから会ってたんだと思うぜ。二人が会ったのは一年前かららしいし・・・。まぁ、これも森山探偵の日記を読んだんだけどな」

裕太は修の日記を読んだのを前提で、留理達に教えた。

「そうやったんや。それにしても、森山探偵を殺害した方法があっさりわかってしまうなんてね。IQ210っていうくらいやからもっと凝ったトリックを仕掛けてくると思ってた」

里奈は万が一事件が起こったら・・・という前提で言った。

「それはオレも同じ事を思った。でも、風間探偵が解けと言ってたのは自分の伯父を殺害した犯人だけだったし、森山探偵の殺害までは暴かれないと思ったのかもしれない。凝り過ぎると犯人は自分だって言ってるようなものだから、あえてシンプルなトリックにしたのかもしれない」

裕太は天才的探偵の幸助が今回の探偵の集まりを思いながら言った。

今回の集まりは、幸助自身の中に芽生えたおぞましくて恐ろしい殺意を、これ以上増殖させないように探偵達に止めてもらうためのものだったのではないか。プライベート以外で会う修を見ても平常心でいられるのか。殺意を抑える事が出来るのか。そんな幸助の思いを企画したのもではないか。

留理達の会話を聞きながら、探偵達を集め、犯行に及んだ背景を篤史は感じ取っていた。

「それにしても、留理ってば金子探偵と写真なんて撮って・・・。ファンだったの? 今まで知らんかった」

留理とまきが写メを撮ってもらっていたのを見ていた里奈は意外だという表情をする。

「初日に会った時にカッコいいなって思ってね。私も金子探偵みたいなカッコいい女性になりたい」

留理は一緒に写メを撮ってもらった事を思い出しながら言う。

「確かに金子探偵ってカッコいい女性って感じだよね。留理ちゃんの気持ちわかるな」

利佳も頷きながら言う。

「そうやろ? 写メ、消さないようにしないとね」

留理は撮った写メを愛おしそうに見ながら言う。

「留理が憧れるだけあるわ」

里奈は留理が自分にないカッコよさのあるまきを憧れるのも無理はないと頷く。

「それより小川君、機嫌は直ったの?」

利佳は篤史の顔を覗き込んで聞いた。

昨日の午後、機嫌が良さそうだったのに、今朝はなかなか部屋から出てこない篤史にまた何か気持ちの浮き沈みがあったのではないかと思ったのだ。

「は?」

篤史は何言ってるんだという表情をしている。

「オレは本当は探偵になりたくなかったんじゃないとか言ってたのは誰だっけ?」

昨日、篤史が食堂に来た時に機嫌が良さそうだったのを何も知らない裕太は、篤史に呆れながら横目で見て言う。

「それを言うたんはオレやけど・・・」

篤史はそういえば・・・というふうに顔を赤くさせて肯定する。

「そんなこと言って嘘なんだろ?」

裕太は篤史にあの発言をした真意を聞いてみる。

「ホンマや。ただ疲れてただけなんや。部活もそうやけど、勉強や委員会の事で色々あったからな」

篤史は今までの自分のやってきた事を思い返しながら答えた。

学校での勉強や部活、委員会活動などを一生懸命にやってきた結果、教師の何気ない一言や期待が想像以上に自分の中で負担になっていて、それが悩む元となり、探偵になりたくなかったという発言に繋がっていたのだ。

「他にやりたい事かと思った」

「ないで。あったらとっくにやってるわ」

「それもそうだな」

裕太はそう言うと、安心したようにふっと笑う。

「最近、忙しそうやったもんね。嫌になる時もあるやんな。弱音を吐かへん篤史やのにビックリした」

里奈も校内の篤史を見ていて、探偵になりたくなかったという発言をしたんだと解釈していた。

「まぁ、色んな事があって悩んでたからな。でも、オレ、みんなの顔見てたら元気出てきたで」

篤史はいつもの笑顔で全員にいつもどおりに戻ったと言う。

「元気になって良かった」

元気になった篤史を見て、留理もホッとしたような笑顔になる。

「留理ちゃんにとっては小川君が元気なほうがいいんだよね」

利佳は意味ありげに留理に言った。

「り、りかちゃん!?」

留理は顔を赤くさせながら利佳の腕を引っ張る。

「それは言えてるかも・・・」

里奈もフフフ・・・と笑いながら言う。

「里奈まで!」

留理はさらに顔を赤くする。

「お前ら元気いいよな」

女子三人組が仲良くしている姿を見て、裕太は数日で仲良くなった事を感心していた。

(こんな光景見てたら、元気にもなってくるし・・・。ホンマ、来て良かった)

篤史は行く前に感じていた行きたくないという憂鬱な思いから、今までに感じた事のない清々しい気持ちになっていた。

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