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知らなかった過去

そして、その後、夜が更けて、五人の探偵は修がなぜ殺害されたのか? 犯人は誰なのか? と色々考えながら、館で捜査するが、誰一人として推理する気配はなく夜が明けた。

帰る当日の朝、朝食を終えて、荷物を大広間に運び、幸助が挨拶をしている。

「とうとう帰る日ね」

幸助の挨拶が終わると、京美が事件が解決出来ずに残念だという声の中に悔しいという意味合いを込めて言った。

「そうね。結局、森山探偵の事件の犯人の証拠がないし、どうすることも出来ないわね」

まきも京美と同感しているようだ。

「みなさん、そろそろお荷物を持って・・・」

好美は帰る時間だと伝える。

「小川、何してるんだろうな? もう帰らないといけねーのに・・・」

裕太は篤史がまだ部屋から出てこない事を心配する。

「そうだよね」

利佳も開くはずのない大広間のドアを心配そうに覗き込みながら言う。

昨日、ワゴンの事を聞きにきた篤史の様子を見て、元気そうだと思っていただけに自分達が思っている以上に深刻なのでないかと心配になってきたのだ。

「君達も早く荷物を持って外に出るんだ。もうすぐでバスが来る時間だ」

幸助は留理達に催促する。

「私、篤史を呼んでくる」

利佳と同じように思っていた里奈は、気持ちが焦ったまま荷物を持って大広間を出ようとする。

「ちょっと待ってくれや。帰るのはまだ早いで」

大広間のドアが開きながら、篤史の声が聞こえてきた。

その瞬間、心配していた留理達の表情がパァァァッと明るくなった。

「小川!」

裕太は安心したという表情を見せる。

「オレの話を聞いて欲しいんや。森山探偵を殺害した犯人がわかったんや」

篤史は帰ろうとする全員に自分の話を聞いて欲しいと願い出る。

「推理しないんじゃないの?」

まきは今更何よという口調だ。

「みんなが推理しないからオレがするんや」

「よし! 小川君の話を聞こうじゃないか」

幸助は待ってましたと言わんばかりに言うと、全員を見送る体勢から篤史の話を聞く体勢になった。

「青山もわかってるんやろ?」

篤史は裕太に犯人がわかっているのかどうかを確認する。

「まぁな」

裕太は当たり前だという表情をする。

「それやったら話は早い。青山も手伝ってくれ」

「オゥ!!」

裕太は篤史のお願いに仕方ないなという表情をしながらも嬉しそうに応じる。

「まず森山探偵を自分の部屋に呼び出した犯人はある話をした」

篤史は事件をこう切り出した。

「話って・・・?」

利佳は犯人が何の話をしたのか見当がつかないでいる。

「それはあのことだ。伯父を殺害されたっていう話だ」

次に裕太が答える。

「・・・となると、犯人は・・・」

留理は犯人が誰なのかわかった表情をした。

それは他の全員も同じだった。

「そう。森山探偵を殺害した犯人は風間探偵、あなたや」

篤史は幸助を見つめて静かに告げた。

「ハハハ・・・冗談を言うのはよしてくれ」

犯人だと言われた幸助は何バカげた事を言っているのだというふうにして言った。

「冗談なんかじゃない。あなたは初日の午後十一時過ぎに森山探偵を呼び出して、なぜ伯父を殺害したのかを問い詰めた」

裕太は険しい表情で幸助に犯行を話す。

「ご主人の伯父を殺害したのは森山探偵なんですか?」

好美はまさかという口調で、高校生探偵の二人に聞いた。

「そういうことだ。問い詰めても森山探偵が罪を認めないため殺害する事にした」

裕太はそう言いながら幸助を見た。

「森山探偵を部屋に戻す時はどうやって戻したんだ? みんな、物音一つ聞いていないと言ってたんだ」

幸助はよほど自信があるのか、戸惑う素振りも見せずにいる。

「全員が寝静まった頃に森山探偵を部屋に戻した。風間探偵の部屋も三階だ。森山探偵は大柄な体型だが、引きずってでも戻せる。でも、実際に引きずって戻したんやない。食事を運ぶワゴンで運んだんや。そして、ベッドの上に放置した。ベッドの乱れからして別の場所で殺害された事は容易に想像がついたからな」

篤史は幸助をしっかりと見据えて言った。

「それは私も同じ推理をしていたわ」

京美も同じように推理をしていたと頷いている。

「ワゴンで運んだという証拠はあるのかい? ワゴンは好美さんが使っていたんだ。なぜ私だけを犯人扱いにするんだ?」

幸助は自分はワゴンに触れていないと呆れた表情で問う。

「ワゴンに森山探偵のDNAが付着していると思われる。確かに中井さんだけがワゴンを使用していた。普段、風間探偵は使う事はなかったみたいだしな。ワゴンの指紋やDNAに関しては警察が調べたらわかる事なんだけどな」

事前に好美から話を聞いていた裕太は、好美の指紋しかついていないワゴンに幸助の指紋や修のDNAなどがついていれば、それはおかしいと言う。

「自分の部屋に戻ったあなたは、凶器を机の引き出しに入れておいた。多分、今も机の引き出しに・・・。凶器にも森山探偵のDNAがついていると思われる」

部屋に凶器があると見ていた裕太は、警察が調べたらわかるんだというふうに言う。

「そんな私を犯人にしたいようだな。森山探偵のDNAならどこにでも付着していてもおかしくないだろう。ちゃんと証拠はあるのか? 証拠がなければ・・・」

「証拠ならあるで。オレ達がこの館に来た初日と今着ているあなたのジャケットの繊維が、森山探偵の手についているんや。あなたのこの青いジャケットの繊維が!!」

篤史は力強く幸助に証拠を突きつけた。

「・・・そうか・・・」

幸助は小さく呟くと頷いた。

「ご主人様が森山探偵を・・・?」

好美は嘘だと思いたい気持ちが声になって出ていた。

「そうだ。森山探偵は伯父を殺害した張本人。奴は伯父を殺害しておいてのうのうと生きていやがった」

幸助の目は復讐に燃えた尋常ではない目をしている。

「森山探偵が伯父さんを殺害した犯人だってわかったのは半年前だっけ?」

まきは伯父の犯人がわかったと知った時期を思い出して聞いた。

「そうだ。ある居酒屋でたまに会っていたんだ。半年前に会った時、かなり泥酔した森山探偵が伯父の事件の事をペラペラと話し出したんだ。その話を聞いた私の心は復讐の炎がメラメラと燃え始めたんだ!」

幸助は興奮しているせいか、両手を拳にして怒りを露にして言った。

「オレはあなたの話を聞いて犯人が誰だかわかっていたぜ」

裕太は修が幸助の伯父を殺害した犯人だと知っていたと伝えた。

「え・・・?」

それを聞いた幸助は裕太のほうを見る。

「森山探偵の態度でな。あなたが食事中に部屋に戻ったのは、森山探偵を殺害する準備のためだったんだろ?」

「そうだ。そういうところだな」

幸助は修を殺害するつもりでいたと認めた。

「でも、森山探偵はのうのうと生きてはいいひんで」

篤史は幸助にある事実を告げる事にした。

「森山探偵は一度、刑務所に入っているんですもの」

京美もその事実を知っていて、幸助に伝えた。

「伯父さんの殺人で自首したのよ」

どうやらまきも知っていて、篤史と京美の言葉にその事実を伝えないといけないと思ったようだ。

「え? どういうことだ?」

幸助はわけがわからずうろたえてしまい、どういうことなのか探偵達にわけを聞いた。

「あなたが知らないだけや。森山探偵はちゃんと罪を償っていたんやで。十五年も刑務所に入ってな!!」

篤史は内心呆れながらも修が刑務所に入っていた事実を伝えた。

「お前達、どうしてそれを・・・?」

幸助はなぜ自分だけが知らないのか戸惑った様子で聞いた。

「森山探偵が持ってきた日記帳に書いてあったんだ。ただそれだけだ」

裕太も呆れたようにため息混じりで答えた。

「みんな、私が森山探偵を殺害したっていうのはわかっていたのか?」

幸助は探偵達に聞く。

「わかっていたわよ」

京美は髪をかきあげながら答える。

「なんでわかったんだ?」

「電話が故障してるって言ってたでしょ? 普通なら故障した時点で修理に出すはずなのに、それをしていないって事は最初から森山探偵を殺害するつもりだったんだなって思ってたわよ」

警察に通報されたら困るという意味でまきは答える。

「そ、そんな・・・。私はなんてことを・・・」

自分の犯行だとバレていた上に、修が刑務所に入っていた事を知り、驚愕としてその場に座り込んでしまった。

自分だけ何も知らなかったという事実を知った幸助は、なぜちゃんと調べなかったのか。修の話だけで復讐心を沸き立たせたのか。後悔とこんなことをしなければ・・・という思いだけが幸助の心を蝕んでいた。

その後、篤史が呼んだ警察によって幸助が逮捕された。

警察に連れていかれた幸助を見た篤史は、IQ210と呼ばれている探偵の末路が刑務所になるのだろうと思うといたたまれない気持ちになっていた。

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