ガーディアンズ・エイト
『守護者』――それは、世界の平和を脅かす魔の手から護る者。
それぞれ火、水、雷、土、風、闇、光の八人の守護者がいる。
その絶対的強さを評し、人々は彼らを『八人の(・)守護者』と呼んだ。
夕暮れ。 まるで魔族の侵攻など気にしていない様子で居酒屋は酒を片手に飲めや歌えやと大いに盛り上がっていた。
そんな中、一つの円卓を囲む八人の男たちが密かに会話を広げていた。
「よくぞ集まってくれた」と口を開くは金色の髪を短く切り揃え、上唇に綺麗に剃り整えた髭を生やした中年の男。 彼は光の王国の国王である。
「堅苦しい挨拶は良いから要件をだけを言ってくれよ王様」
少し横着な態度で話を促すは火の守護者、バーン。 火の守護者だけに、髪も燃える炎の様に赤い。
王様は咳払いを一つして、話を進めた。
「今ここに、七人の守護者が集まった。 火の守護者。 水の守護者。 雷の守護者。 土の守護者。 風の守護者。 光の守護者。 そして、闇の守護者。 君たちに集まって貰ったのは、言わずとも解るな?」
刹那、沈黙が流れる。
この時、火の守護者は焦りを見せ始めた。
やべぇ……! やべぇよ! あれ? 俺たち守護者はいったい何で招集されたんだっけ!?
冷や汗が止まらない。
頼む! 誰か答えてくれ!
「魔王が人間界に侵攻を始めた。 差し詰め俺たちはその魔王を討伐する為に集められた。 と言う事で間違いありませんか?」
「パーフェクトだ、水の守護者、アクアくん」
青い髪をした水の守護者が答えた事で安堵する火の守護者。
「じゃあこれから魔王討伐に行くって事だね!」
人懐っこく口を開くは緑色の髪をした少し体の小さい男の子、風の守護者。
そんな彼に国王は首を静かに横に振った。
「どうしてですか?」
守護者の中でも一番の美少年と言えよう、白に近い金の髪をした光の守護者、ライトが問う。
「あと一人、探さなくてはいかない守護者がいる」
「そう言えば『八人の(・)守護者』だったね」
思い出したかの様に言う茶髪の土の守護者。 名はガイア。
「それで、最後の一人はどんな奴なのですか?」と聞くはライトより、濃い金の髪をした雷の守護者、サンダー。
「最後の守護者は……、今集まってもらっている君たちの中でも最強と言っても過言ではない」
ガラッと守護者たちの空気が変わる。
「最後の守護者。 それは、全ての女性のピンチに颯爽と駆け付ける絶対的守護者! その名も! 女性の(・)守護者だ!」
「…………」
空気が死んだ瞬間であった。
「下らん、行くぞ」席から立ち上がり、酒場から去ろうとする闇の守護者、ダーク。
「あ、待ってくださいよ! ダーク」彼の後を付いて行くライト。
「貴方はもっと真面目な御方だと思っていたのですが、少し買い被り過ぎた様です」半ば国王に失望して席から立ち上がるアクア。
「下ネタはよくねぇな! うん! 下ネタはよくない!」状況をイマイチ熟知せずに席から立ち上がる火の守護者、バーン。
「これだからおっさんは嫌いなんだよ」国王と言う存在に暴言を吐いて席から立ち上がるサンダー。
「なぁんだ。 八人の(・)守護者じゃなくて七人の(・)守護者だったんだ!」合点して席から立ち上がるウィンド。
「魔界でも美味しい食べ物あるかな?」もはや関係のないと言った様子のガイア。
「待て! お前ら!」
「待たん、行く」足を止めないダーク。
「落ち着け!」
「落ち着いています」冷静に言葉を返すアクア。
「最後まで聞けば」
「聞かずとも解る」国王の言葉を一刀両断するサンダー。
「良いからお前ら最後まで聴けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇええっ!!!!」
街中に光の国王の悲痛な叫びが渡ったそうな。
「で、そのヒロ……、なんちゃらは使えるのか?」
先程の態度とは一転、失礼極まりない言動で王様に問うサンダー。
その傍若無人な態度に、あれ? 私国王だよ? 偉い、偉ーい王様だよ? と言う気持ちを抑えながらも咳払いを一つして口を開く。
「先程も言った様に、女性の守護者は君たちよりも強い。 それは、確かな事実だ」
「仮にそのヒロ……、なんちゃらが使える人間だとしていったいどうやって探し出すのですか?」
コイツら俺の話を信じてないな? 等とは口が裂けても言えぬまま、国王は口端を上げながら説明した。
「女性の守護者は一〇〇パーセントの確立で女性の危機に颯爽と現れる。 それを利用すれば簡単に見つかる」
「ちょっと、何なのですか!?」
「ほら、噂をすれば……」
守護者たちが声の方へと振り向くとそこには三人の男が一人の女性を囲んでいた。
助けなきゃ! と光の守護者が駆け付けようとするが国王がそれを制止した。
「なぁ? 良いだろ? 俺らと一杯茶でも飲もうぜ?」
「お断りします」
「気が強い娘はお兄ちゃん大好きだよ!」スキンヘッドの男が言う。
「ま、力尽くでも良いのだがなぁ」
気味の悪い笑みを浮かべる三人の男たち。
嗚呼、もう駄目だ。
女性が諦めたその時であった。
「待て!」
奥から男性の声が耳に入る。
酒場にいる人間がその声の方へと振り向くとそこには土で汚れ黄ばんだ白いマントを羽織った黒髪の男性が腕を組んで扉に背中を預けて立っていた。
「誰だ!? テメェは!?」
一人の男が叫ぶと男性は不敵な笑みを浮かべながらそれに応える。
「俺は通りすがりの守護者さ」
本当に現れたよ……。
驚愕し、呆れ、且つ感心する守護者たち。
国王はどうだと言わんばかりの思わず拳を振るいたくなる様な自慢気な表情を浮かべている。
「通りすがりの守護者だぁ?」
「現実甞めてるな、コイツ」呆れるスキンヘッドの男。
「殺っちまおうぜ!」下品な笑いを上げる茶髪の男。
そんな社会の底辺三人に押し寄せられても動じない自称守護者。
「お前らじゃ俺には勝てねぇよ?」
その瞬間、「ほざけ!」とリーダーらしき男が拳を振るうが自称守護者は最初から読んでいたかの様に男の手首を掴み、そのまま捻って投げ飛ばした。
投げ飛ばされた男は床に頭から勢いよく落ちて気絶した。
「リーダー!?」
叫ぶ茶髪の男。
自称守護者は一つ地団駄をして自分に注意を向けた。
「どうする? まだやるか?」
茶髪の男は突っかかろうとしたが足がピタリと止まってしまった。
何だ、コイツ? 何だよ、この威圧感は!?
男は冷や汗が止まらなかった。
スキンヘッドの男は茶髪の肩に手を置き、静かに首を横に振った。
男は舌打ちを鳴らし、自称守護者に「覚えておけよ」と一つ睨み、二人で倒れたリーダーを担いでその場から立ち去った。
凄ぇじゃねぇか兄ちゃん! スッキリしたぜ! と歓声が沸き上がる。
「あのっ……」
女性が声を掛けるが自称守護者はそれを手で制した。 そして、さも自分が美少年かの様な笑みで口を開く。
「今度出会えたらその時はお茶でも飲みに行きましょう」
それに対し女性は微妙な表情を浮かべ「は、はぁ……」とこれまた微妙な返事を返した。
あれ? ここ普通は俺に惚れる場面じゃね? ねぇ? ねぇ!? と叫びたくなる衝動を抑えながら、不適な笑みを浮かべたまま酒場から去って行った。
城下町の街道をブツブツと文句を呟きながら歩く自称守護者。
「ようっ!」
後方から声を掛けられ、そちらに目をやると一人の王様と七人の守護者が並んで立っていた。
自称守護者は目をよく擦り、よく凝らして見るが、知らない人だと判断し、再び歩を前へと進める。
「待て待て待て待て!」
赤髪の守護者が必死に呼び止めようとする。
「母から知らない人に声を掛けられた時は無視する様にと教えられているので」
「子供か!」
「子供だ!」
「威張るな!」
「エッヘン!」
あ、コイツかなりウザい奴だ……、と感じた守護者一向。
「君が女性の守護者だね?」
国王が聞くと、自称守護者が纏っていた軽い空気がガラリと重いものへと変わった。
「だとしたら何だと言うんだ?」
「君が八人の守護者の内の一人なら感じ取った筈だろう。 今、魔族がこの人間界に侵攻しようとしているのを」
「だから何だ? 俺に力を貸してくれと?」
「その通りだ」
「断る」
何だと!? と火の守護者が飛び出そうしたが国王がそれを手で制し、女性の守護者に問いかける。
「何故だい?」
「そんなの簡単な事だ。 俺はその名の通り女性の守護者だ。 世界中の女性の危機に颯爽と現れてはそれを護る。 それが俺だ。 そんな俺が何故お前らみたいなむさ苦しい男共と一緒に戦わなきゃいかんのだ!?」
空気が死んだ瞬間であった。
駄目だコイツ。 早く何とかしないと。
「だが! 君一人で魔の軍勢から世界中の女性が護れるのか!?」
「護る!」
気迫の籠った声で宣言した女性の守護者。
その力強い迫力はまるで童話で一国の姫を魔の手から護る主人公を思わせる。
国王一行は彼の覇気に圧倒された。
「じゃあ今ここで俺たち全員と戦ってもらおう」
案を出す闇の守護者。
「これで俺たちが負ければお前と共に魔王を討伐するのを諦める。 お前が負ければ、解っているな?」
重い沈黙が流れる。
緩やかな風が一つ吹くと同時に自称守護者は答えを言った。
「良いだろう。 お前らに力の差をはっきりと教えてやんぜ!」
「すみませんでした」
「弱っ!?!?」一斉に叫ぶ守護者一向。
この通り、決着はすぐに着いた。
七人の守護者が一斉に女性の守護者に取り囲み、魔法で攻撃すると言う形で。
先程の女性を助けた強さと打って変わり、そこらの体格の良い中高生にさえ負けてしまうのではと思わせる程の弱さだった。
「王様、本当にこのヒロ……、なんちゃらは使えるの?」
自称守護者を指差す風の守護者。
女性の守護者だ! と叫ぶ声が聞こえてくるが、無視して王様は答えを返す。
「勿論。 ただ……」
口籠る国王に「何ですか?」と言葉を促す水の守護者。
「彼には欠点があって」
「どんな欠点だ?」半ばもう諦めた雰囲気で聴くサンダー。
「彼は女性が危機に迫られないと力を発揮しないんだ」
「面倒臭い!!」一斉に叫ぶ守護者一向。
国王は咳払いを一つして女性の守護者に声を掛ける。
「女性の守護者。 君は彼らに負けた。 共に戦ってもらうよ?」
「えぇ~っ!? ヤァダァ~ッ! 嫌だったら、ヤァダァ~ッ!」駄々をこねる自称守護者。
この時、彼の態度が面倒臭過ぎて、いっそ自分たちだけで魔王を討伐しに向かおうかと本気で悩んだ守護者一向。
「君が居なくては駄目なんだ!」
檄を飛ばす国王。 始めて見せる彼の真剣な様に守護者たちは思わず息を呑んだ。
「魔王を倒す為には八人の守護者の力が必要なんだ。 誰か一人でも欠けては駄目なのだ! この世界の平和を護る為にも……、頼む! 君の力を貸してくれ!」
国王は頭を下げた。 それにより守護者たちの視線がどうするんだと女性の守護者に向けられる。
彼は俯き頭を悩ませ、舌打ちすると共に答えを出した。
「解ったよ。 力を貸せば良いんだろ? 協力してやんよ」
「本当かい?」
聞き返す国王に、女性の守護者は首を縦に振った。
守護者たちも思わず笑みを浮かべる。
これで魔王討伐に向かう事が出来ると思ったその時だった。
「だが俺はレアだぜ? 報酬は高いぞ?」
国王を含め、守護者たちは一斉に彼に魔法を放った。
こうして、はい八人の守護者が揃ったのであった。
それから守護者一行は酒場に戻り、お互いの親睦も兼ねて自己紹介を始めた。
「で、お前の名前は何て言うんだ?」
赤髪の守護者が女性の守護者に聞く。
「アルスだ」
「ちょっと待てぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇええっ!」
叫ぶ火の守護者に女性の守護者は首を傾げる。
「何だ?」
「何だ? じゃねぇよ! 何!? その以下にも自分主人公ですよみたいな名前! まるで俺たちがお前のサポートキャラみたいじゃねぇか!」
「ん? 事実だろ?」思わず殴りたくなる様などす黒い笑みを浮かべる女性の守護者。
「何、そのドヤ顔!? 甞めてるよね!? これ完璧俺たちのことを甞めているよね!? さっき俺たちにボコボコにされていた奴がする顔じゃねぇよ!」
「漫才はそこまでにして、そろそろ魔界へ向かおう」
席から立ち上がる国王。
「そうですね」と水の守護者をはじめ、他の守護者たちも席から立ち上がり国王の後を追う。
「ま、これからサポート頼むよ? 火の守護者くん」
これまた嫌な笑みを浮かべて火の守護者に煽りを入れて国王たちの後を追うアルス。
「あ、待ちやがれ! まだ話は終わってねぇぞ!」
こうして守護者一向は魔王を倒す為、魔界へと旅立った。
「なあ、魔王ってどんな奴なんだろうな?」
枯れた木が所々に生えており、地面は砂利や岩で足場が悪く、紫色した霧が掛かった魔界の道を守護者一向が歩く中、不意にその中の一人、女性の守護者アルスが口を開いた。
「きっとどっかの誰かさんみたいに女を誑かしているんだよ!」
笑顔で答えた風の守護者。
「おう! そいつぁ悪い奴だな! どっかの誰かさんがいったい誰の事を指しているのか気になるけどな!」
「俺はデブだと予想している」
不意に自分の中の魔王のイメージを言ったガイアに「何でだ?」とバーンが問うと、
「魔王って魔界で一番偉くて強いんだろ? 魔界の王様。 金は一生遊んで暮らしていける程は持っているだろう。 美味い飯を食いまくってきっとデブってるに違いない!」
と何とも変わった偏見を答えた。
それ思っているのきっとお前だけだぞ……。 それよりも凄く変わった見方をするのだなと苦笑いを浮かべる守護者たち。
「貴様ら!」
魔王の事を語っていると不意に前方から甲高い声が耳に入った。
守護者一行はそちらに目をやるとそこには背中まで伸ばした黒い髪を生やした女性が腕を組んで立っていた。
透き通るような白い肌、放漫な身体つき、そしてその整った顔立ちは絶世の美女と言っても過言ではない。
女性に目がないアルスはテレポートしたかの様に彼女に近付く。
「やぁ、お嬢さん。 こんな所で何をしていっ!?」
腹部に衝撃が走り、言葉が止まる。
ゆっくりと視線をお腹に向けるとこれまた綺麗に拳が入っていた。
アルスはオウ……、オウ……と何とも言えない悲痛な声を上げながら腹部を抑えてその場に倒れ込む。
「貴様、何者だ!?」
叫ぶ闇の守護者に対し、まるで汚物を見るかの様に冷たい目で見下しながら女性は答えた。
「私は魔王陛下の側近。 アリーシャだ。 貴様らが八人の(・)守護者だな?」
「だとしたら何だ?」
バチバチと身体中に電気を走らせるサンダー。
アリーシャは拳を強く握りしめ、親の敵を見るような憎悪の籠った目をして言った。
「さっきからペチャクチャと魔王陛下の事を好き勝手に言った事……、後悔させてやる!」
一気に守護者たちの懐に入り込み、剣を出現させ斬りに掛かるアリーシャ。
守護者たちは一斉に散らばって、彼女に魔法を放った。
「サンダーアロー!」
アリーシャは自分に迫ってきた雷の矢を握っている剣で切り裂き後方に近付いてきた水の守護者に蹴りを入れるが彼は紙一重でそれを避け距離を取った。
「何をしているアルス! 早くお前も俺たちと共に戦え!」
叫ぶ火の守護者に対して女性の守護者は横に寝転がって尻を掻き始めた。
「俺は女とは戦えねぇ」
「こんな時にそんなことを言っている場合か!」
怒声を上げるサンダー。
「世界が掛かっているのですよ!?」
流石に温厚な光の守護者もこれは見過ごせないのか女性の守護者に檄を飛ばす。
「うるせぇっ! どんな理由であれ、俺は女とは戦わねぇ!」
「クソッ! もういい! 行くぞ、お前ら!」
水の守護者の言葉に呼応する守護者たち。
連携を組んで魔王の側近を追い詰めて行く。
「フンッ!」
雷の守護者がアリーシャの握る剣を弾き飛ばす。
「しまった!?」
「止めだ!」
剣を振り上げるサンダー。
もう駄目だ。 ここまでか。 申し訳ございません、魔王陛下。
瞼を閉じたその時だった。
「ヤメロォォォォォォォォォォォォォォォォォォォオオッ!」
即座に雷の守護者の腹部に入り込み、ボディーブローを決めるアルス。
諸にくらった金髪の守護者は後方に吹っ飛んだ。
女性の守護者の訳の解らぬ行為に驚愕する守護者たち。
「アルスくん!? 何を!?」
問うてくる光の王に「うるせぇっ!」と声を張り上げるアルス。
「いいか? どんな理由であれ、女を殺す事は例え神様仏様が許してもこの俺が許さねぇ!」
「女どうこう言う前にそいつは敵だ!」
正論を言う火の守護者。
「敵でも女を殺すことは許さねぇ!」
あ、駄目だコイツ。 とんだポンコツだ。
呆れて物も言えなくなる守護者たち。
「貴様! さっきから黙って話を聞いていれば何だ!? 女である私を馬鹿にしているのか!?」
「俺は一度も女を馬鹿にしたことが無い!」
迫力のある高い声音で断言した女性の守護者。
その覇気に思わず圧倒されるアリーシャ。
コイツ、馬鹿なのか? と疑ってしまう。
「何をしている?」
殺意の籠った低い声が上空から身体に伝わってきた。
守護者たちは一斉に視線をそちらに向けるとそこには髑髏や宝石などで装飾された黒のコートを着た男がこちらを見下ろしていた。
「陛下!」
アリーシャは魔王と思われる男の近くへと歩み寄る。
しかし、男は彼女を突き飛ばした。
「陛下?」
彼の冷たい態度に思わず目を疑う魔王の側近。
「貴様はもう用済みだ。 ゴミが!」
彼女に向かって黒い閃光を放つ。
衝突する直前にアリーシャを救出する女性の守護者。
「テメェ! 今まで仕えてきた奴になんてことをするんだ!?」
アルスのその言葉に魔王はフンッ! と鼻を鳴らして口を開いた。
「守護者たちすら倒せん、性処理器具にすらならん汚い雌豚などいらんわ!」
彼の下品で非道な言葉に衝撃を覚えるアリーシャ。
自分は今まで魔王を信じて仕えてきたのに、何故!?
彼女はその場に崩れ落ちる。
「性処理器具にすらならない汚い雌豚……、だと……? それは……、アリーシャの事かぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああっ!?!?」
女性の守護者が叫ぶと同時に物凄い突風が吹き荒れる。
「何だ!?」と悲鳴に近い声を上げて女性の守護者を見る魔王。
アルスの髪は金色に輝いていた。
瞳も何処となく蒼い。
「何だ……? 何なのだ!? その姿は!?」
驚愕する魔王に女性の守護者は威厳に満ちた声音でゆっくりと答えた。
「これは、純粋な心を持った守護者だけがなれる守護者を超えた守護者。 『超守護者』だ……!」
「何そのどっかの金髪宇宙人みたいな設定!? 俺たちそんな機能無いよ!?」
ツッコミを入れる火の守護者に対して「それは貴様らが不純だからだ」と答える超守護者、アルス。
それに対して火の守護者は「女のケツを追ってるテメェに言われたかねぇ!」と反論した。
「ふざけるな!」
女性の守護者に飛び掛かり、拳を振るう魔王。
しかし、アルスはそれを軽々と片手で受け止め、魔王の頬を唸りを上げながら殴った。
ブルァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアアッ!?!? とグルグルと回転しながら吹っ飛ぶ魔王。
女性の守護者はさらにそれを追撃する。
掴み、殴り、蹴ってとただひたすらにラッシュする。
「駄目だ、アルスくん!」
国王の言葉にピタリと止まる。
何だ? と光の王を睨みつけた。
何で私そんな顔で睨まれなくちゃいけないの? と思わず泣きたくなるのを抑えて国王は言った。
「魔王を倒すに守護者八人で力を合わせた究極魔法を使わなくてはいけないんだ!」
その言葉にアルスは不適な笑みを浮かべて答えた。
「それには及ばねぇぜ、王様」
「へ?」
「俺は七つの属性全てを使用する事が出来る!」
「まさか!?」
女性の守護者は両手を前に出し、魔力を集め始めた。
「終わりだ、魔王。 二度と姿を成すんじゃない! セブンス・エレメント・パワー・フォース!」
彼の両手から膨大な虹の色をした閃光が魔王に向けて放たれた。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああっ!?!?」
盛大に爆散し、轟音が響き渡る。
一人で殺っちまったよ……。
唖然とする守護者たち。
八人の(・)守護者など知らないと言ったアルスは元の黒髪に戻り、絶望しているアリーシャに近付いた。
「私は……、私はこれからどうすれば良いのだ?」
女性の守護者は優しく微笑んだ。
「俺と共世界を回らないか?」
アリーシャは彼を見上げる。
「しかし、私は魔族だ。 それに、お前たちを殺そうとしたのだぞ?」
「そんなの関係ねぇよ。 世界は広い。 お前を受け入れてくれる人間もきっといるさ」
彼女の手を差し伸べて言葉を続けた。
「俺はもうお前を受け入れているのだがな」
目を大きく開くアリーシャ。
彼がとても神々しい何かに見えた。
「良いのか?」
何をとは聞かずアルスは首を縦に振った。
嬉しさの余りに涙するアリーシャ。
そんな二人のやり取りを見ている守護者たちは、え? ナニコレ? 何で俺たち置いてけぼりにされてんの? と何とも言えない気お持ちに襲われたのだった。
「さぁ、行くぞ! アリーシャ! まだ見ぬ世界へ!」
「勝手に終わらせるんじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇええっ!」
こうして、世界は平和になったとか。




