我が戦いは此処より始まる-1
唐突に、床の上で目が覚める。
(あれ…?ここは…?)
周囲は、何かの城だろうか。
日常生活を送っていればお目にかかれないような装飾。少なくとも、ここが病院や、自室ではないというのは間違いなさそうだ。
(オレ、確かトラックに轢かれて…それで…)
「私が連れてきた」
「!」
隣から突然に声がかかる。隣にいたのは白いワイシャツに黒いスラックス姿の妙齢の女性であった。
「あんた、いつの間に…?」
「ああ、済まないねおどかすような真似をして、私は……そうだな、君は神を信じるかい?」
「……宗教勧誘はお断りですよ」
「……あー…言い方が悪かったね、でも、私自身としては、唐突に『私は神です』何て言えないからね」
「神……トラック…見慣れない部屋…つまり……」
考えたくはないがおそらくは、いや、確実に
「オレ、死んだんですよね?」
「物分かりがいいのは非常に助かる、君の肉体はすでに死んでしまっている、ミンチよりひどいぞ、見るかい?」
「いえ、結構」
「そうか…話を戻すとしよう、私は君の魂だけを連れてくることができた」
「これは…あれですよね…次の転生先を決めるとかそういうのですよね?」
「うん、そうだね、それでは、君にこれを引いてもらおうかな」
そう言って、神が指を鳴らすとカード状の光が集まり、一つのデッキとなった。
「これは?」
「君の次の転生先だ、一枚引いて、君の行く末を決めるといい」
「……」
静かに、少年は目を閉じる。
集中、そして、カードを引く。
「ドロー!」
その瞬間、カードが残像と光の軌跡を創り上げる。
「…ふむ、見せてくれたまえ」
少年は、カードを神様に手渡す。
「なるほど、では、これを渡そう」
神様は、少年にカードデッキを手渡す。
「これって…サモンウィザーズのデッキ!?」
「ああ、そいつには私の力を込めてある、どう使うかは君次第だ」
「分かりました…大事に使わせてもらいます」
神様が二度手を叩くと、鈍い音を立て、巨大な壁と思っていた扉がゆっくりと開いていく。
扉の隙間からは光が漏れ出し、扉が完全に開ききりあたりはまぶしい光に包まれた。
「最後に、君の名前を聞かせてもらえるかな?」
「涼馬…加々見涼馬です」
「リョーマ、か……リョーマ、この先に、君の新しい人生が待っている」
「…はい!」
「若者よ!歩きたまえ!未来へ向かって!」
その言葉に少年—―――加々見涼馬は小さく、しかし、力強くうなずく、そして、光を放つ扉の方へと歩いていく。
その姿が、だんだんと光の中へと溶けていき。姿が完全に見えなくなった。
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おぎゃあ、おぎゃあ、おぎゃあ
「あらあら、元気な子ね」
おぎゃあ、おぎゃあ、おぎゃあ
「ああ、そうだな…!」
おぎゃあ、おぎゃあ、おぎゃあ
「ねえ、この子の名前は決まったの?」
おぎゃあ、おぎゃあ、おぎゃあ
「そうだなあ…でも、僕にはネーミングセンスがないからなぁ…メルダさんは、どんな名前がいい?」
おぎゃあ、おぎゃあ、おぎゃあ
「そうですね……リョーマ、というのはいかがでしょう」
「リョーマ……それには、どういう意味があるんだい?」
「リョーマ、というのは東国の英雄の名前で、かつての紛争を止めた英雄でもあるのです、人柄は破天荒ではありましたが、爽やかで涼風を運ぶ駿馬のようだったと」
「リョーマ……そうかぁ…元気に育てよ、リョーマ…!」