9.魔法のピアスと忘れられたレシピ
お題
忘れられたレシピ
片耳のピアス
声が出ない少年
ChatGPTより
私の働くレストランには長年下働きをしている少年がいる。
野菜の皮むき、皿洗い、ごみ出し、掃除などを淡々とこなすのだ。
私がこのレストランに入ったのは3年前の25歳のとき。
あの頃からあまり背丈の変わらない彼は、私より少し小さいくらいの身長で、一体年齢はいくつなんだろう。
初めのころは十代半ばなのかと思ったが、それにしては成長していない。
その頃の少年はぐっと背が伸びるだろう。
彼が声を発するところも誰かと会話するところも見たことがない。
声をかけても小さく会釈をして去っていく。
耳が聞こえないのかと思った。
でも音や声掛けには反応するからそれも違うのだろう。
精神的なものなのか身体的なものなのか誰もそれはわからない。
素性もいろんな噂はあれどどれも噂の域を出ない。
オーナーの隠し子やスーシェフが拾ってきたはたまた裏口のごみ箱にいたなんて話もある。
とにかく彼は不思議な子だった。
ある日の仕事終わりごみ捨てをしようと裏口を出ると、ごみ箱の近くに赤い光るものを見つけた。
かがんでよく見てみると赤い雫型のピアスだった。
ずいぶんきれいなピアスだ。
1つしかなかったけど、思わず拾ってポケットにしまった。
次の日、ピアスをつけて出勤した。
おはようございます。とみんなに声をかけた声が、思いのほか通って少し恥ずかしかった。
「なんだぁ?いいことでもあったか~?」
冷やかしをあしらいながら更衣室に入る。
なんだか今日は声の通りがいい。
これは厨房で頑張れそうだ。
そう思いながらコックコートに着替え、厨房に出るとなんだが声はいつも通り。
なんなら聞こえないぞとまで言われてしまった。
仕事が終わってがっくりしながら帰り支度をする。
「おつかれさまでした。」
また声がよく通る。
「なんだやっぱりいいことあったんじゃねぇか?これからデートか??」
「違いますぅ!」
恥ずかしくてそそくさと帰った。
そんなことが毎日続いた。
ふと、あのピアスをつけるようになってから、声が出るようになったなと気づいた。
厨房にいる間はピアスは外している。
今日は一日つけないでいた。
すると、いつも通りの声の大きさになった。
一度気づいたら気になってしまう。
私は週明けの仕事終わり、彼が帰り支度をするのを待って声をかけた。
「ちょっと、話があるんだけど」
話しかけられたことに驚きつつ、怪訝そうな顔をする少年。
「このピアス、つけてみてくれない?きみ、穴空いてるよね?」
赤いピアスを見せると、少年の目はみるみる見開かれていく。
少し震える手で、ピアスを受け取るとおそるおそるつける。
「あ、あり…がと…」
「君!やっぱり声が!!このピアスは君の?名前はなんていうの?あ、ごめん…ゆっくりでいいよ」
怒涛の質問攻めを華麗にスルーした彼はルークと名乗った。
彼は鋭い目をして一言つぶやいた。
「まえの、おーなーのレシピ…しってます」
それは失われたレシピだった。
ちょっとお休みをいただいてました。
少しずつ書いていきます。