表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/10

1.古井戸のゆらめき

お題(キーワード三つ)

•赤い糸

•忘れられた井戸

•溶ける氷菓子


ChatGPTより

蝉の声が聞こえだした。

この季節は、センチメンタルになる。

30年も前のことなのに――。


古い邸宅の庭には、石を積んだ金魚鉢があった。

正確には金魚鉢というには大きいが、池というにはあまりにも小さい。


子供の背では中を十分には覗けないくらい、石は高く積まれていた。

でも、縁側でくつろいでいると中の水が軒下の垂木に反射する。


キラキラと不思議な模様を描く。

寝転びながらぼんやり眺めるといつまでだって見ていられた。

それに気が付くのは決まって蝉が鳴きだすころだった。


その日も少しひんやりする板張りの床に頭を預けて、揺らめく天井を眺めていた。


ぶわりと風が吹き抜け、穏やかだった揺らめきが激しく移り変わりぎらぎらと反射した。

「もし…。」

金魚鉢の方から涼しげな声がする。寝ころんだまま目線をやると、現れたのは浴衣姿の女性だった。


黒い髪とまつ毛は長く、濡れたように艶やかで、頬と唇は朱がさしている。浴衣の胸元は緩まり、裾が開いて見える脚は白く、そしてはだしだった。


起き上がり、答えようと口を開く。

「どちらさまでしょうか?」

のどがひり付いて、出た声は自分のものとは思えないほどかすれていた。


どこか儚い印象だが、かち合った目の鋭さに心臓が早鐘を打つ。

「いえ…お父様にこれをお渡しになって。坊やにはこれを。」

一瞬目を伏せて、上げた瞳は穏やかだった。


差し出されたのは、左手に握られた口の開いた封筒と右手の氷菓子。


受け取ろうと手を出して、まじまじと女性の左手の中を見ると、黒い糸を赤い糸で束ねたもの。


髪の毛だった。


ぎょっと女性の顔を見ると、右頬の髪が短くなっているようだった。


「それと、坊やにはこれをあげよう」


右手がぐっしょりと濡れており、出てきたのは乳白色の塊、アイスクリンだ。


「え……。」


心にいくつもの疑問、右手に黒い髪の毛、左手にあいすくりんを握らされたまま立ち竦む。


ゆらり…と女性が金魚鉢の方に進んでいく。


細身で長身な彼女なら、石積みの中を覗けるだろう。

黒い髪に反射する水面のゆらめきが女性の存在をあやふやにしていく。



やけに暑く感じて手の中の冷たいそれらに目を落とす。

やっぱり返そうと顔を上げるとそこにはもう女性はいなかった。


アイスクリンが溶けてべたつく手は、洗っても洗ってもきれいにならなかった。

お読みいただきありがとうございます。


初手からホラーテイストになってしまいました。

これじゃ、○子ですね…。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ