63:闇が深い。
ツェザールいわく、別に隠していたわけじゃないが、両刀遣いだとかなんとか。ただ、この国ではわりと忌避感が強いので、聞かれない限りは言わないようにはしていたそう。
いや、今回も聞いてませんが?
「クリスティーナは駄目、イザベルも虐められない。それなら、そっくりな兄でもいいかなと」
「闇がっ、深いっ!」
思ったよりもエグいメンタルをしていたわねツェザール。この人が立太子して王太子になって、国王になったら…………え? 大丈夫なの? いやさすがにそこと深淵を繋げないわよね? 治世は別よね? ちょっと不安になるわ。
「可愛いものが好きなの……んですよ」
「ふぅん。普通に話せばいいだろう? なぜ無理をする」
「……この国では、異端の目で見られますもの。気持ち悪いでしょ?」
少し泣きそうな顔で、マクシミリアンが微笑んだ。
気持ちはわかる。貴族の世界は本当に狭い。敷かれたレールから外れると、もう駄目なのだ。
私たちの両親が寛容というか、特殊すぎるだけだと思う。とても幸運なことではあったけど、それだけじゃマクシミリアンには足りなかったんだろうなぁ。
「私は気持ち悪くないがな。可愛いじゃないか」
「っ――――」
…………いや。なぜそこで頬を染めるんだマクシミリアン。ちょろいか。ちょろいのか!?
あと、クリスティーナは落ち着きなさい。なぜ中腰なの。なぜちょっと立ち上がろうとしてるの。
「クリス、座って」
「え? あっ! うん」
エドヴィンがクリスティーナの背中をぽんぽんと叩くと、クリスティーナがハッとして恥ずかしそうに座った。
あれ? クリスティーナって野生動物と同じ感じでいいの? てか、ペット? …………まぁ、いつもか。うん、クリスティーナこそ可愛い。マクシミリアンの可愛さは、ちょっとわからない。
「とりあえず、のどが渇いた」
自由か、ユリウス。いやまぁ、事情が事情だけに、執事も侍女も置いてないからだけど。
「はいはい。ちょっと待っててよ」
飲み物や焼き菓子などの準備はされていたので、あとは好みに合わせてちょい味変するだけでいい。
ちゃちゃちゃっと準備してそれぞれに渡すと、だからなんで好きな飲み物を当てるのかと言われた。
春に飲みたいもの、夏に飲みたいもの、秋や冬に飲みたいものって色々変わるじゃない? あのゲーム、そこまで補完してたのよね。
今は秋だから……と作ったら、やっぱり正解だった。ちなみにラウルはまた牛乳にしておいた。他意はない。たぶん。





