60:地位の順番。
取り敢えず、今日の本題は私――イザベルを断罪しないという書類にサインをすること。
人数分の書類に全員がサインをする、というちょっと面倒なもの。
「あ! ねぇねぇアリスター、マクシミリアンが増えたけど、大丈夫?」
「念のために二部多めに用意していますので」
アリスターの眼鏡キラーンなドヤ顔にちょっとイラッとするけれど、そこそこありがたいので、素直にお礼を言っておいた。気持ち悪がったアリスターとラウルは覚えておけよ? と、心のメモ帳にしっかりと書き込んでおいた。
「サインする順番って、どうするの?」
「地位が高いほうからです」
そっか、あいうえお順的なのは、この世界ではあんまり普通じゃないのか。こういうとこ、ちょっと前世に引っ張られてるなと思う。
「じゃ、ユリウスからね」
「ん」
ユリウスがサラサラと八部にサインし、次はツェザールが。なぜか私に回ってきたのでアリスターに渡したら、怪訝な顔をされた。
「なぜ」
「え? 役職ついてる人が先じゃないの?」
「貴女、王太子妃ですよね?」
「現状予定でじゃない」
私には、『グランフェルト侯爵の娘』という肩書きしかないと思うのだけど。一応はユリウスの婚約者だけども。
「ところで、なぜツェザール殿が先なので?」
「「あ……」」
ユリウスとツェザールがしまったという顔。皆さ、私やクリスティーナのこと色々と言うけどさ、大差ないドジ踏んでたり、勘違い暴走したりしてるよね?
取り繕うのが上手なだけじゃないのかなと、最近思っている。
「まぁ、この数日、全員の経歴や信用度は調査済みだ。これも縁だろう――――」
ツェザールがハァとため息をついて、ゆっくりと立ち上がった。
「私は、ツェザール・ラウテンバッハと名乗っていたが、親戚筋の家名だ。実際は、エルネストという」
「エルネスト……王国」
ぽそりと呟いたエドヴィンが、なんだか可哀想なほどに目を泳がせている。
いやわかるよ、なんか場違い感あるよね。めちゃくちゃ失礼だけど、エドヴィンの家って、かなり下の方だからね。王族とこんな風に会することなんて、普通に生活していたらありえないはずだった。
誰のせいかと言われれば、私のせいなんだけどさ?
………………それは横に置いていいよね?
「エルネスト王国、第三王子だ」
「王子殿下でしたか……」
アリスターがちょっと驚いていたけど、アリスターは知らなかったんだ? あ、そうか。王族に連なる者だけとか言ってたっけね。





