6:ど直球で。
急に来た。しかも、ど直球で。
アリスターの顔を見るけど、無表情。メガネで表情が判断しづらい、というのもあるかもだけど。
「ああああのててててがみねっ」
「わかりやすく動揺してますね?」
「ベベベ別に!?」
クールで冷静なこの私が動揺するわけないでしょうと言うと、クールと冷静は同じ意味だと冷静に言われた。アリスターのこういうとこ苦手なのよね。
「私も貴女のことはあまり好みではありませんが、ああもキッパリと書かれると理由が聞きたくてですね」
「…………すみません」
いやもう、それしか言うことないよね? そもそもよ、何を書いたかとか、細かいとこまで覚えてないのよね。色々と焦っていたから。
「ヒロインとは誰のことなのですか? そもそもコレに書かれていることは、妄想なのか真実なのか……いえ、真実とすると明らかに可怪しいですし、妄想なのですよね?」
「あっ……それ…………返して……」
「いやです」
ズバッと断られた。
「で、頭か精神の病気を患っているのですかね?」
真顔でめちゃくちゃ失礼なことを言われた。
ほんと苦手なのよね、この人。冷めた視線がなんとも怖いのもあるけど、なんでもかんでもズバッと言うから攻撃力が高くて嫌なのよ。
「えーっと、夢で見た内容をちょろっと書き出していたら、手違いで発送されてしまいましたの」
頬に手を当て、フゥーっとため息を吐く。
「ほら、頭の中を占拠しているものって、書いたり話したりして、吐き出すと忘れられるでしょう?」
上目遣いで悩ましげな表情発動。
よし、これでどうだ。さぁ、返せ!
「その程度で普通は忘れないでしょう? 頭、大丈夫ですか?」
ぐぁぁぁぁぁ、ヒロインにはあんなに優しいし甘い顔すんのにさぁ、なんでこんなに『変な生き物が目の前にいる』感で見られるのよ……。まぁゲームの話だけど。
「…………とりあえず、返してくださらない?」
「嫌です。そもそも手紙に書いたのはなぜなんですか?」
「へ?」
いや、日記とかノート的なのでも良かったんだけどさ、イザベルって書かないのよね。なんにも。唯一あったのがレターセットだった。手紙は夜会やお茶会に参加したあと、必ず出さなきゃいけないから持ってたのよね。
と、いうのを軽く誤魔化しつつまろやかに伝えてみた。
「なるほど」
――――お?
「なので、返してくださいません?」
「嫌です」
ズバッと断られた。
そこから五分ほど無言で見つめ合い、王城に到着した。
やっとこの地獄から解放されると思うとスキップできそうな気がしたけれど、馬場に仁王立ちしている王太子ユリウス【♡♡♡♡♡】を発見して、アリスターの胸倉を掴んで家に帰りたいと言いそうになった。