57:一歩前進。
ちょっと待ってほしい。
なんか、色々な思惑が絡んでいるんだとばかり思っていたけど、ただ単に愛や恋での婚約だったってことよね?
ユリウスの反応からして、確定なのはわかってるんだけど。脳が追いつかない。
「イザベル」
「ちょっと無理! 待って! いま、なんか、無理っ」
パニックで何も考えられない。こんなこと今まで……ここ最近、わりと何回かあったけども。攻略情報が送付されたときと同レベルで焦っているのよ。
だから、ちょっと待ってほしい。
「何が無理なんだ。いいから、どうするか決めろ」
「っ――――そのせっかちなのやめてって!」
「なぁ、顔が赤いのは、照れているからなのか?」
なぜ今日に限って饒舌なのよ!? しかも首とか傾げて聞いてこないでほしい。いつも単語でペッて命令調で言うくせにっ。
「そうよっ! 照れてんのっ!」
「っ、ふ、はははっ。ん、それならいい。勘違いだったんだな? 疑って、責めてすまなかった」
――――デレた!
ユリウスがふわりと柔らかな笑顔になった。そして、歯を見せて笑い声を上げた。あのユリウスがだ。ムッスリ顔のツンツンツンツンツンのユリウスが、破顔した。
「一歩前進だな」
「なにが?」
「私たちの関係がだ。やっと、お互いの想いに確信が持てたろう?」
「…………うん」
ユリウスは、私のことが好き。
私は……………………私も、好き。たぶん。
「呼び出してすまなかったな。家まで送りたいが、執務が押してる。誰か護衛に回そう」
「別にいらないわよ」
「王太子の婚約者ということを忘れるな。イザベルは私の弱点たり得るんだ」
無言でユリウスを見つめていたら、首を傾げられた。
「どうした?」
「あ、いや……箍が外れたユリウスって、なんかキモい」
「あ"?」
ユリウスがガタリと立ち上がったので、慌ててユリウスの執務室から逃げ出した。
出たところでラウルを発見したので、ラウルを護衛に借りるねとユリウスに言うと、ちょっと苦い顔をされた。
「ラウルじゃ間違いが起きようがないもの」
「それはそれで不憫だがな」
「いいじゃないの。所詮はラウルよ」
牛乳で背なんて伸びない――かは知らないけど、絶対的な効果はたぶんない――でしょうに、必死に飲んでるアホの子よ?
「……言いたい放題だな」
「あら。それがラウルでしょ? それにラウルは、ユリウスを絶対に裏切らないでしょ?」
「あぁ。何があってもユリウス殿下を優先する。それが俺の騎士道だ」
――――ね。
だから、どれだけ最低と言われようと、私はラウルを護衛に選ぶわ。





