55:ユリウスの迷走。
茶会の翌日にイザベルの家で婚前契約書にサインと、ついでにプロポーズをしておこうかと思っていた。が、イザベルの様子が可怪しすぎて議会から保留したほうがいいという、ありがたくもないお小言をもらった。
――――面倒だな。
さてどうすると悩んでいると、イザベルから謎の手紙。
▷▷▷王太子ユリウス【♡♡♡♡♡】
・ユリウス・オードランド
・水色な髪に金色の瞳で、この国の王太子殿下
・性格は激ツンでエグいが、ごく稀にデレる
・ユリウスルートでは、イザベルが婚約者
・新年を祝う夜会でユリウスとヒロインの仲が深くなる
・それを見たイザベルが激怒、執拗な虐めの開始
・虐められても立ち上がるヒロインに心打たれるユリウス
・なんやかんやで、イザベルの処刑を決断
・オトすなら……オトしたくない
・激ツン過ぎてこっちの心が折れる
・顔はいい
意味がわからん。イザベルには婚約のことは内密にしておいたはずだが。というか、なぜ私がイザベルを処刑? するはずがないだろう。
…………オトしたくない? 顔は、いい? ふうん?
翌日、手紙の件も含めイザベルの家に向かおうとしていたら、宰相補佐のアリスターがなぜかイザベルの家に婚約保留の報告に行くと言い出した。確かに侯爵たちにも伝えねばなるまいが、なぜアリスターが行く必要が?
――――もしや。
嫌な予感というものは、当たるのだろう。
アリスターも受け取っていた。
一つの可能性として、誰かがイザベルを陥れるためというものもあったが、文字が明らかにイザベルだった。
何を考えているのか、分からなさすぎる。取り敢えず話してみるしかないだろう。
結局、迎えにはアリスターが行くことになった。
イザベルらしくもない。カマ掛けに全て引っかかって、慌てふためいている。
目をキョロキョロさせながら、しどろもどろに答えては墓穴を掘り、眉間に皺を寄せる。
「ふっ……」
気付いたら、笑っていた。
この不思議なイザベルとのやり取りを、心から楽しんでいた。
今までのイザベルとは全く違うが、イザベル本人は今までの雰囲気を取り繕おうとしている。ということは、これがイザベルの素だった? だがしかし、そうなると手紙の意図は? なぜ今になって振る舞いを変える?
どこかで私の婚約者に決定したと聞いたのか?
侯爵たちか、ラウル? 無きにしもあらずだな。
こんなことで、私がイザベルを諦めるとでも思っているのだろうか? 馬鹿め。
――――逃さんぞ?





