53:王城に呼び出され。
お茶会の打ち合わせを終わらせて、エドヴィンを見送っていると、ユリウスと仲直りするように言われた。
分かってはいるのよねぇ。お互いに意地を張っているってのは。
「努力するわ」
「はははっ。期待せずに報告待ってます」
酷いわね。エドヴィンは最近私の扱いに慣れてきたとか、失礼なことを言っている。
ユリウスがいじけて帰っていった謎の日から二日後に、手紙が届いた。めちゃくちゃ簡潔に、日時の指定と王城の執務室に来いというだけのやつ。
何様よ!? 王太子殿下様だけどさ。
「はぁ、今日行かなきゃよね? めんどぉ」
「イザベル様、自業自得です」
「……ララも辛辣になってきたわね?」
ララいわく、私の今の性格を把握してこのくらい言わないと響かないと気付いたのだとか。物凄く間違ってないから何も言えないのよね。
王城なので、ある程度フォーマルなデイドレスを選んだ。昔は、好きなものぺぺっと着てた記憶があるなぁ。私も大人になったものだ。
「グランフェルト侯爵令嬢のお越しです」
「入れ」
ユリウスの執務室へ入ると、なんだか物凄く重たい空気。定型の挨拶はしたほうがいいのかな? まぁいいかな?
なんだかそういうのも分からないくらいに、ユリウスから出てる空気が変だった。
――――ねぇ、ユリウス。何を考えているの?
「座れ」
「うん」
「……ハァ」
ユリウスの執務机の前にある一人掛けのソファに座ると、ため息をつかれてしまった。
話って何? と聞くと、ユリウスが執務机に両肘をついて、掌で顔を覆った。まるで、何かを覚悟しようとしているような、そんな雰囲気で。
「婚約破棄、するか?」
掌で顔を隠したままのユリウスの言葉は、少しくぐもっていて聞き取りづらい。でも、聞こえてしまった。『婚約破棄』の言葉がいやに部屋に響いた気がした。
お腹の奥底からふつふつと怒りが湧き上がってくる。
それは、ユリウスがいつも勝手に決めるからなのか、裏切られた気分になっているからなのか…………嫌われたかもしれないという思いからなのか。
「イザベル?」
「……何?」
思ったよりも低い声が出た。それに気付いたユリウスが私を見て、ビクリと肩を跳ねさせていた。
なんでユリウスが怖がってるの?
なんでユリウスが不安そうな顔をするの?
――――イライラする。
「話は婚約破棄だったわよね? 勝手にどうぞ」
ゆっくりと立ち上がって、ユリウスに向かってカーテシーをした。
妃教育を受けてて良かったわね。いままでで一番綺麗なカーテシーだったもの。
別れの挨拶に、お誂え向きね。





