52:そっちって、どっち。
ぷりぷりと怒りながら、サロンに向かった。
「あー、もぉ! ムカつく!」
「なんというか……クリスと俺みたいな状況だと思うんですけど」
「私たちのことを勘違いしてる、って言いたいんでしょ?」
「あ、気付かれていたんですね」
エドヴィンがホッとしたようにため息をついた。
当たり前じゃないの! しょうもない勘違いしちゃってさ? 何なのよ! って、怒ってるのよ。
「すでに婚前契約書も交わしているし、婚約発表もしてるのよ? 裏切りようがないでしょうが!」
「あっ……そっちですか…………」
「そっちって、どっちよ!?」
「えっ、あー、うーん?」
エドヴィンが歯切れの悪い返事ばかりして、何が言いたいのか分からないままだった。
だいたい、決めるって何を決めるのよ? エドヴィンと生きること? エドヴィンを攻略するってこと? いやよこんなワンコ系男子とか。
「あの、聞こえてますけど」
「うるさいわねっ!」
「理不尽……」
そもそも、ヒロインはクリスティーナなのよ? 私は死なないように、そわっとふわっと躱して生きたいのよ。人生を全うしたいのよ。
ただ、クリスティーナのバッドエンドでの回避は絶対に嫌なのよね。だって、物凄くいい子なんだもの。ヒロインと呼ばれるだけあるのよね、あの子。
そんな子の不幸せを願うなんて、私には出来ない。
「イザベル様って、見た目と違って物凄く優しいですよね」
エドヴィンがくすくす笑って口を滑らせているけど、シバかれたいのかしら?
拳をにぎにぎしていたら、慌てて居住まいを正された。
「それで、今日の話というのは?」
「再来週に例のお茶会を開こうと思って、招待状を用意したのよ」
地位だけある私と、貴族たちとの繋がりがあまりないクリスティーナとエドヴィン。
それなら両親のコネを使って、交友関係を広げていけばいいじゃないの。
「一応、地位だけはあるのよ。ついでにマクシミリアンも呼ぼうかと思っているんだけど、どうかしら?」
隠しキャラとして諸刃の剣感はあるのよね。
エドヴィンには、マクシミリアンのことを一応教えているけど、流石にクリスティーナの相手になる可能性がある異性……ギリギリ異性と、同席するのは嫌じゃないかの確認もしておきたかった。
「マクシミリアン殿は、王都に戻られてから様々なお茶会や夜会に参加されています。たぶん、彼の交友関係はかなり広くなっていると思われます。この機会に、お会い出来るのなら逆に助かります」
たぶん今までだったら、エドヴィンは二の足を踏んでいたと思う。守るものができると、人って強くなれるのね。
羨ましいわ。





