50:単騎で乗り込んできた。
◇◇◇◇◇
サロンの窓から、エドヴィンの家の馬車が出ていくのを確認。
「大丈夫かしらねぇ?」
「クリスティーナ様にお手紙を出してみられては?」
ララにそう言われたけど、手紙はしばらく出したくないのが本音。もうやらかしたくないのよね。
まぁ、そのうちクリスティーナが報告に突進して来そうだし、出歯亀おばさんの出番はここまでよね。
「部屋に戻るわ」
「はい」
そんな出来事の翌日、我が家のサロンでエドヴィンと向かい合って座っていた。
「エドヴィン単騎なの?」
「単騎って……」
聞き方が悪かったみたい。
「クリスティーナは一緒じゃないの?」
「今日は、それらも含めてお願いに参りました」
「何よ、畏まって。友だちでしょ? 気軽に話していいわよ」
エドヴィンがきょとんとして「いつの間に友だちに?」とか言いやがった。お前はクリスティーナか! とか軽くキレたらエドヴィンが大慌てして謝罪してきたから、まぁ許してあげようじゃないの。
「で、お願いって?」
「今度、皆様で集まるときに、アリスター様と交渉する機会を設けてくださいませんか?」
「あら、クリスティーナのために家の復興をするのね。アリスターじゃなくてユリウスになさい」
最善策を伝えたのに、何故か眉間に皺を寄せられた。酷くない?
「…………話が早すぎるし、内情を知りすぎてるし、いきなり王太子殿下を勧めます?」
「せっかくなら、一番権力のあるヤツになさいよ。前世で馬鹿とハサミは使いようって…………違うか。これじゃない。なんだっけ? まぁいいわ」
なんか格言的なのがあった気がするけど思い出せないわ。
ユリウスを馬鹿なりハサミなりに例えようとしたことは黙っておいてねと言うと、エドヴィンがドン引きしていた。まぁ、横に置いていい案件よね?
それよりも! と、今度の集まりでどう切り出そうか考えることにした。
「ユリウスのことだから、ストレートに脅した方が早いと思うのよね」
「王太子殿下をストレートに脅させないでください」
「何よ、わがままねぇ」
エドヴィンがパカーンと口を開けて、衝撃を受けたような顔をしていた。わかるよ、それお前が言うのかの顔でしょ? 私も言った後に思ったもの。
「私の処刑の件、クリスティーナのためにサインしないって言ってたじゃない? 今も?」
「いえ、それは考えを改めました」
それなら、やっぱり脅せばいいじゃないの。
サインする代わりに、なんかいい仕事か事業か斡旋しろって。お前の婚約者にはその程度の価値があるだろって。確率は五割かもだけど。
「……裏で殺されそうですけど」
「それをやるのはツェザールよ。ユリウスはわりと真面目だもの」
「ツェザール様って、いったい…………」
知らないほうが身のためよ、と誤魔化しておいた。





