39:ボロクソ会議①
打ち合わせ通り、ララが一番に発言してくれた。
「イザベル様に十年ほどお仕えしているララでございます。イザベル様は『言われなくても察してやって』がとても多いと感じます」
なるほど。でもそれって割と貴族に多い注文な気がするけど?
「目覚める五分前にカーテンを開けて。というのは察せません」
――――確かに!
「室温はその日の気分に合わせて。これも察せません。近い温度には出来ますが、限度がございます」
「ふぁい……」
「湯浴みもです。お湯を手足に掛けて温度に納得されても、背中に掛ければ冷たいと言われます。当たり前です。手と身体は温度が違いますから。手足で少し熱いと感じるくらいで、とお願いしても『火傷させる気なの!?』とお叱りを受けてしまいます。身体に掛ける温度をこっそりと上げることもしましたが、勝手に温度を変えるなとお叱りを受けてしまいます」
どえらく理不尽なことやっちゃってるわね、旧イザベル。さすがにそれはないわ。
「カーテンは気にしなくていいわ。開けたければ自分で開けられるし。お風呂もね。流石に温度の確認はするけど、叱ったり強く当たるようなことは二度としないわ。今までごめんね。それから今日もマッサージありがとうね、ララ」
「っ…………そのお言葉と報酬で、今までの苦労が少しだけ報われました」
ララはやっぱりしたたか! 好きだわこの性格。それに今後もズバズバ言ってくれそう。ユリウスと結婚が確定したら、専属侍女として王城に連れていきたいわね。
「っ、私もよろしいでしょうか?」
「ええ、もちろんよ。貴方は?」
「料理長のジャンです。イザベル様の好き嫌いが日により過ぎて、調理のしようがありません」
――――おん?
「日による?」
「お覚えはないのですか? プチトマトが好きだから明日も食べたい、という伝言でサラダに入れましたら、不味いと全て残されてしまいましたよね? そしてその日からプチトマトは使うなと。それなのに三日後にはプチトマトを使った料理はないのか、レパートリーが少ないと」
「ふぐぉぅ、なんかごめんね? まだあるでしょ?」
「はい。ステーキの焼き加減も日によりけりなので、お伺いすると『いちいち聞かないでちょうだい。レアでいいわよ』と言われ、お出しすると、生肉を出すなとお叱りを受けました」
理不尽! 驚くほどに理不尽。そして、不条理!
なんとなく身に覚えがあるのが辛い。
料理長が把握しているイザベルの好き嫌いについて細かく聞くと、えぐいほどあった。記憶力凄いな。
「ジャン、毎日美味しい食事をありがとう。最近ね、味覚が変わってね、好き嫌いとかないの。甘い辛い酸っぱいとか全部……あ、ごめんエグ苦いコーヒーとかはちょっと難しいかもしれないけど。とにかく、好き嫌いについては、一切気にせずに出して大丈夫」
まぁ、味覚が変わったというよりも、性格というか中身が、なんだけどね。
それにしても、言われて思い出すこの共感性羞恥みたいなの、辛いわ。





