37:イザベルのとある計画。
自宅に戻り、素早くドレスを脱いだ。閉じそうな目蓋を必死に押し上げ、化粧だけは! と落としてからベッドにダイブ。
今日は本当に色々とあった。色々ありすぎて、頭も身体も疲れ果てていた。お風呂は明日の朝に入ることにした。
一般的にはほぼお昼だけど、朝イチで侍女に頭皮マッサージされつつ入るお風呂は、最高だった。前世でなら考えられないけど、この怠惰さと優雅さは貴族令嬢かつ夜会明けの翌日だからこその特権。
「はぁぁぁん。あ、ちょっと首筋も揉んで」
「はい」
「あぁぁ、染み渡るぅ。貴女マッサージ上手いわね」
「ヒッ、ありがとうございます」
いや、普通に褒めたのになんで『ヒッ』って言われるかな? 最近仲良くなれてきてると思ったんだけどなぁ。
攻略対象をどうにかしなきゃなのもだけど、使用人たちとの関係もどうにかしなきゃよね?
あれはゲームでゴールすれば終わるものだけれど、ここは人々が生きている本物の世界だもの。
「ねぇ、貴女の名前は?」
「ラ……ララです」
ララと言った侍女をチラリと見る。二十代半ばでブルネットの髪をぴっしりとまとめた真面目そうな雰囲気。
「ララね。いつも、ありがとうね」
「え……」
「あ! 別に何かの最後通告とかそういうのじゃないからね? ただ、今まで貴女たちと交流して来なかったなって思ってね」
素っ裸で話すことじゃないかとも思ったけど、まぁなんかふわふわしてて口も緩くなっていた。
今まで随分と酷く当たってきたと思うのよね。だってイザベルだもの。ユリウスが調査してギリギリセーフ寄りだと判断したたらしいけど、前世の私からしたらガッツリアウトなのよね。
「後で、私に関わっている使用人たちを全員呼んでちょうだい」
「何をされるのですか?」
「意見交換会をしたいのよね。もちろん無礼講で言いたい放題で。そうね、その際に何を言っても解雇しないことを約束するわ。あ、参加報酬も必要よね。時間を奪うんだし」
たぶん、前世は普通に会社に勤めてたんだと思う。スーツ着たり会議に参加したりしてたような記憶が、ふわっとあるから。会社の部署内会議とかのイメージで開催してみようと思う。
「……その」
「ん? なあに?」
「今すでに信用がないので……難しいかと」
――――グハッ。
「ですよねぇぇぇぇ。ララ、協力してくれない? 諸々改善していきたいのよ。一番最初にボロクソ言っていいから! お願いっ!」
「っ…………ふふっ。最近、イザベル様の雰囲気が変わったと、使用人たちの中でも噂になっています。ちょうどいい機会かもしれませんね」
報酬、弾んでくださいね? とララが楽しそうに笑っていた。ララって結構したたかなのね。





