35:はじめまして、お兄様?
両親から目を逸らされつつ紹介された、死んだはずの兄。
脳内に浮かび上がったのと同じ、切れ長の瞳、私そっくりな顔、茶髪ストレートロングヘア、そんな男性だった。
男性か女性かといえば男性だけど、とても中性的な顔をしている。ドレスを着て私と並んだら、姉妹と間違えられそうなほどに。
「ま?」
「ま? ……とは?」
お父様が小首を傾げて聞いてきたが、いい歳のおっさんが可愛い仕草とかしないでほしい。
「まじで? の、ま」
「まじで、イザベルの兄なんだよね」
くらりとした目眩とともに脳内に溢れるスチルたち。あ、これちょっと前に味わったやつだわ。記憶の濁流縮小バージョン。
マクシミリアン【隠しキャラ】
・イザベル・グランフェルトの実兄
・ヒロインがハーレムエンドに向かうと出現する
・女装癖があるが、恋愛対象は女性
・幼いころから女装癖があり、社交界では生きづらいだろうと、両親が知り合いの商人に預けていた。
・商人とともに世界中を巡り、同性愛が認められている国も見つけたが、三十歳になって自国の良さを理解した。
・戻って最初に参加した夜会で、自分そっくりの妹イザベルに虐められているヒロインを発見
・ありえないほどの興奮を覚える
・攻略対象たちと協力し、イザベルを断罪し斬首刑に追い込む
「……結局、首ちょんぱ」
「攻略対象か」
ボソリと呟いた言葉を聞き逃さなかったユリウス。しかも、ゲーム用語もちゃんと覚えている。優秀なのよね、ツンツンなだけで。実は結構紳士的ではあるし。
「へぇ、これが妹? 俺より不細工だな」
「……ごもっともです」
いやぁ、マクシミリアンのほうが化粧とか映える顔してるのよね。背はそこまで高くないし、見た感じの所作が綺麗だし。
今は男性の盛装をしているけど、イベントが進むにつれ、ドレス着てクリスティーナとイチャイチャしたりするのよね。そのくせ妙に男らしいところを見せるから、クリスティーナが禁断の恋みたいでドキドキするという、どこ向けの隠しキャラなの? って不思議に思ってたのを思い出した。
「え、認めちゃうの?」
「はい。見た目の優劣は特に気にしてませんので。どうでもいいです。はじめまして、お兄様。お姉様とお呼びしたほうがいいです?」
「…………なぜ、お姉様だと? 嫌味か?」
「いえ? お姉様と呼ばれたいって――――あ」
言っていたのは、ゲーム内でしたね。
なんでこうも自分の首を絞めるかなぁ、私。





