32:エドヴィンの想い…………。
ユリウスが私を好きな可能性ねぇ。両親もそんなことを言っていたけど、ちょっと信じられないわね。まぁ、婚約しちゃったし、公表もされちゃったし、一緒に生活してればそのうちなんか分かるでしょ。
「……話を続けてもいいか?」
「はいっ」
クリスティーナが元気よく返事したけど、うん、まぁ頑張れ。
「私は婚前契約書に、イザベルを処刑しないという文言を組み込んだ。皆にもそれに近いことを頼みた――――」
「はい! もちろんですわ!」
「まだ話途中だ。黙れ」
ヒロインに対して、まさかの『黙れ』発言に衝撃を受けたけど、クリスティーナには何も響いていなかった。めちゃくちゃ笑顔で、ふんふんと鼻息荒く頷いて素直に黙っていた。両手で拳を作り、胸の前でブンブンと振っているので、視覚的には全く黙っていないのだけれども。
「もちろん、これは各々の自由だ。ただ、イザベルがここまで必死になるのも何か気になる。協力を頼みたい」
「えっ、おわ? へ? あ、お願いします」
ユリウスが頭を下げた。一国の王子であり、王太子という立場のユリウスが。それは、いくら非公式の場だとはいえ、あり得ないこと。
私も慌てて頭を下げた。
「私個人としてなら、約束しよう」
クリスティーナは横に置くとして、一番最初に承諾してくれたのは、予想外にもツェザールだった。
彼の本当の立場は、隣国の第三王子。だからこそ、下げる頭の重要さを理解してくれたのかもしれない。
「私も了承いたします。もとより、国王陛下そしてユリウス殿下の臣下ですから」
「俺もだ」
ツェザールに続きアリスターとラウルも了承してくれた。
「私は……イザベル様がクリスティーナに絶対に危害を加えないと確信はできません」
両膝に握りしめた手を乗せ、カタカタと震えながらエドヴィンがそう言った。すごい勇気だと思う。この場で、この状況で、エドヴィンは自分が守りたいものをちゃんと言えるんだから。
「エドヴィン、いいよ。ありがとうね。私はエドヴィンのその気持を大切にするよ」
「グランフェルト様……」
「イザベルでいいわよ」
ちょっと半泣きになっているエドヴィンを見ながらクスクスと笑っていると、エドヴィンの隣でクリスティーナが頬を膨らませてちょっといじけている風だった。
「クリスティーナ、どうしたの?」
「エドヴィンはなんで反対するのかわかりませんっ! エドヴィンなんて、大嫌いです」
――――報われないっ!





