27:選択肢を選ぶ物語。
「で? 弁明は?」
ツェザールのジトッとした視線が妙に絡みつく。
「っ、すっごい嫌な気持ちにさせると思うのよ……」
「いま既にしているがな?」
「ユリウス……っ、そうよね。ごめんなさい」
言い返そうと思ったけれど、あんな訳の分からないものを送り付けられて、嫌な気持ちにならないほうが可怪しいわよね。
「イザベルが謝った!?」
隣に座っていたラウルが、ビクリと体を跳ねさせた。どういう反応なのよ、それは。
「先月のお茶会で、クリスティーナとユリウスが楽しそうに会話していたのを見て、前世の記憶を全部思い出したの――――」
乙女ゲームなどない世界だから、少しだけ分かりやすいように改変して伝えた。
選択肢を選ぶ物語というのが前世にはあり、その選択によって物語の結末が変わるというもの。ヒロインが読み手で、数人いるヒーローの中から一人を選んで、更にその選んだヒーローと恋に落ちる結婚というゴールを目指す。
その物語とこの世界がリンクしているのだと伝えた。
「つまり、ヒロインは……」
全員がチラリとクリスティーナに視線を向ける。クリスティーナはワクワクとした顔で私を見ていた。たぶんこの娘、まだ私が創作した物語を話しているんだと思っていそう。
「私たちは物語の中の登場人物で、この世界も人々も作り物だと?」
アリスターの低い声には怒りが含まれていた。左隣のユリウスからも妙に怒りのような波動を感じる。室内がシンとなってしまった。
「似て非なるものかもしれない。でも、あまりにも似通っていて、思い出してしまった記憶を無視出来なかったの。どんな結末でも、私は……首ち…………斬首、されちゃうから」
この空気の中で危うく『首ちょんぱ』って言いそうだった。前世の口癖が今世まで続いているとは。人の業は侮れないわね。
「そういえば、書かれていました。俺……じゃない、私の手紙に『首ちょんぱ』と。ですが、グランフェルト様はクリスを虐めてなどいませんよね? 会話したこともないようですし」
「ええ! お会いできて光栄ですわ!」
どうしよう、クリスティーナだけ違う世界線にいる気がする。放置していいの? 可愛いけど、いまじゃないのよね。ほんとごめんね。今度埋め合わせするから!
「あれは少し未来の話なの」
「未来……ですか。現状、困窮はしているものの、グランフェルト侯爵家に支援をお願いする程の力は我が家にはありませんし、婚約は王太子殿下とされましたよね?」
そうなのよね。たぶん、エドヴィンルートじゃなくなってるっぽいのよね。本人を目の前にして言いづらいんだけど、どうしたらいいの!?





