22:誰か助けて!
ゆるりと始まった音楽に合わせてステップを踏む。
両陛下のダンスは流石というべきか、慣れているうえにお手本のように滑らかな動きをしていた。
それに比べて私たちはというと……。
ユリウスとここまで接近することがなかったので、今さらながら変に緊張しているのもあるけど、別件のせいでの緊張が八割くらいはある。
「動きが硬い」
「うるさいわね。ちょっと緊張しているだけよ」
「……おま……イザベルがか? ふぅん?」
ユリウスって、お前と呼ぶのを止める優しさはあるのよね。
あと、なぜ緊張しているのかと聞かれても答えられない。
ボールルームの壁際に、攻略対象たちとヒロインがいるからだよ! ヒロインの隣には幼馴染エドヴィン【♡】がいるんだよ! めちゃくちゃ見られてる気がするんだよね。しかもエドヴィン、右手に封筒持ってるし。おい待て、ヒロインも持ってるし……え? なにこれ? もしかして、今日が公開処刑日なの!?
冷や汗脇汗だくだくでどうにかファーストダンスを終えた。
ボールルームから逃げ出して冷えた飲み物を取りに行こうとしていたけれど、手首をがっしりと掴まれた。
「へ?」
「この封筒のことで話がある」
私の手首を掴んだのは浅黒い肌の食客ツェザール【♡♡♡♡】だった。懐から封筒をチラリと見せてきたが、知らないフリをしたい。つか、これって死亡宣告何分前なの?
「なんのことでしょう? 人違いでは?」
「一瞬でなんのことだと聞くのは、何か知っているときだと思うがな? 普通は封筒をよく見せてなど、興味を示すだろう。特に貴女の立場ならな?」
「っ……手違いで送ってしまった毒にも薬にもならないものです。処分しておきますので、返していただけますか?」
「くはははは。面白い」
私は面白くないが、ツェザールは至極楽しそうに私の手首を掴んだまま、ホールの中央へと向かおうとしてた。
こんなときに助けずしてなにが婚約者だ! という都合の良い考えのもとユリウスを目で探したら、既にダンスをしていた。まさかのヒロインと。
ちょっと待て、ボールルームがなぜそんな地雷原になっているんだ。嫌だあそこいきたくない。
「婚約者が気になる?」
「ちがっ! ヒロインが…………あっ」
「へぇ。あの子が」
――――しまったぁぁぁ!
妖艶な紫色の瞳を流すようにしてこちらをニヤリと見るツェザール。見た目は色っぽい青年だけど、この人ヤンデレだし、めちゃくちゃドSなのよね。エグい。無理。逃げたい。誰か助けて!





