2:人生詰んだ瞬間。
怪訝な顔をしまくる王太子殿下から逃走を図り自宅に戻った。
あの頭上のやつは何なんだ。聞きたいが、たぶんあれは誰にも見えてないはず。だって、あれ前世のゲームの攻略対象の難易度だもん……。
「お嬢様、お顔が真っ青ですが、どうされました?」
「なんでもないわ! 部屋にこもるから、誰も入らないでね!」
大急ぎで部屋に向かい走っていたら、後から「またワガママ言ってるわ」とか「暫く放置しないと、癇癪起こすわね」と聞こえてきた。
ハッキリと前世を思い出したことで、今までの自分の振る舞いが恐ろしいほどに『イタい』ことを知る。
これはヤバい。あれやこれやあんなことやそんなこと、なんだかんだで首チョンパされる可能性は、ある気がする。
幸いなことに、ヒロインの物語はあのお茶会からスタートだった。ということはよ? ヒロインと攻略対象たちに嫌われなければ万事オッケーじゃない?
奮い立て、私! 記憶の中の記憶よ、甦れ! ややこしいが、甦れ!
各キャラの攻略法を思い出せぇぇぇ!
そうして書き上げたのは、六枚の攻略情報。
とりあえずそれぞれを封筒に入れた。どれが誰のかわかるように名前も書いて。
だって、封筒に入れてたら、誰も勝手には見ないでしょ? 私、天才じゃない!? と思ってたのよ。このときまでは。
夕食をダイニングで食べて、お父様とお母様とちょっと今後についてふわっとお話して、部屋に戻ったら、レターデスクの上に置いていた封筒がごっそりとなくなっていた。
「え? ねぇ、ここに置いていた封筒は?」
「発送いたしましたが……」
「あっ――――」
いつも、机の上に置いている封蝋済みの手紙は発送するよういいつけていた。完っっっっ全に忘れていた。
そもそも、封蝋はしていなかったはずだけど、綺麗に重ねて置かれていて、名前も書かれていたので、封蝋は使用人が押して出しておけ、と怒られるパターンだと判断したそう。
確かに、以前の私なら言いかねない。つか、言うね。言ってたね。だから、今回も絶対に言うね。
「もももも申し訳ございません」
顔面蒼白になっている侍女に気にしなくていいよと言いつつ、頭を抱え踞る。
――――やっばい!
やばいやばいやばいやばい、なにがやばいって、本気で生命の危機というか、社会的な危機というか、やばい。まじで、やばい。
中身を見られたら人生さえも終わりそうだけど、時間的に全部配達済みっぽい。
まじで、やばい。人生詰んだ。