15:目の前の男。
ユリウスに頭の心配をされた。
私的には、なんの前触れもなく婚約しようとしているユリウスの頭のほうが心配だけども。
「ちょっと、情報を整理したい」
「どうぞ?」
「そもそも婚約話を持ちかけてきたのは、そっちからだったよな?」
――――へ?
「両家の繁栄に繋がると。何よりもイザベルは私のことが好きだったと言っていたよな?」
「はい? いつですか? 妄想ですか?」
一ミリも私の記憶にないのですけど? ユリウスの頭こそ本当に大丈夫?
「茶会の数日前に会いに来ただろうが!」
いや待って。本当に記憶がないんだけど! 確かに今の私はお茶会の途中で覚醒したけども。以前の記憶もちゃんとある。当日は混乱していたけど、今はわりとちゃんと融合しているような感じだし。
細かいところが薄らぼんやりなのはたぶん元来からの性質。
ただ、婚約話は薄らぼんやりな情報にはなり得ないでしょうよ。
それに、両親の話とも食い違っているのだけど?
「あの、本当に?」
「私が嘘を言って何になる。メリットがないだろう」
「…………私が好きで、嘘をついてでも手に入れたいとか?」
「ありえない」
――――激ツン!
いや、ツンというよりは、ナチュラル反応だろうけど。なんだろうか……それはそれでなんかイラッとした。
「では、なかったことにしましょう」
それで万事解決じゃないの。なのになんでこの人、こんなに婚約婚約言っているのかしら?
「もともと幼い頃よりともにいたし、まぁ地位もある。うるさいがなしではない。教育すればどうにかなるだろう、程度だったがな。コレで興味が出た」
ユリウスの胸元からスッと出された、見覚えのある封筒。
「だあっ! 返して!」
「返してとは可怪しな話だな? これは私宛に届けられ、私が受け取った。私のものなのだが?」
手を伸ばしたけれど、封筒には届かず。またもや懐に押し込まれた。
そして、こんな状況になっているのは、何かの強制力もあれど、追い討ちは自分でかけたのだということもわかった。
素直に話してしまおうか?
でも、今素直に話しても信じてもらえなさそうだし、火に油を注ぐというべきか、焼け石に水というべきか……。糠に釘? 暖簾に腕押し? そこら辺のどれかになるだけなんだろうね。
そもそも、なぜ記憶にない婚約の打診をしていたのかが気になる。
確率が高いのは、ヒロインがどれかのルートを選択した? それで、世界の強制力が働いたんだろう。
断罪から逃げる道は?
味方を増やす?
誰から?
目の前のユリウスは信用できる男ではある。ただ……顔がいいツンツンツンツンデレ。
仲を深めるにはツンツン攻撃を受ける必要がある。
――――私に耐えられるのか!?





