13:サインなどするものか。
ベッドに寝転がり、婚前契約書を睨みつける。
内容的には、普通のものよりも私にわりと有利な事項が多い気がする。たぶん陛下たちと既に中身は話し合われているから、変更などのしようはない。
唯一気になるのは、浮気をした場合は、相手の申出により即座に婚約・婚姻の関係性を終了できる。という項目。
「これって、ある意味では浮気した側の救いにもなるわよね?」
ボソリと呟いて、ふと思う。何かのフラグなの?
パートナーが犯罪を犯した場合は、申し出により即座に関係の解消可というものはどんな婚前契約にも含まれる定型文なんだけど、これって解釈の幅が広すぎるのよね。
犯罪の重さが提示されていないから。
普通書き足されるんだけどね? これにはなにもないのよね。
「あーもー、意味わかんないっ」
もしかしたら、お互いの立場的に犯罪など犯すはずもないから、というものかもしれないけれど。
いや私、悪役令嬢ですし。間違いなく、死ぬよね?
余裕で首チョンパされるよね?
とりあえず、あれだ、私は誰とも結婚しないし、恋にも落ちないし、虐めもしない方向性で生きていきたい。
…………そう思っていた日が、私にもありました。
朝起きて、侍女に来客だと言われた。青い顔で。
デジャブ? 昨日もなんかそんな感じでサロンに呼び出されたよね?
まぁ、昨日はちゃんとお風呂に入ったけど。デイドレス着るまでちょっと待てやと相手に伝えてと言うと、真っ青な顔で告げられた。
「夜着でもいいから引きずってこい、と仰せです」
主人を前にして『仰せ』ということは、確実に上位の存在ということ。つまり………………ヤツか!
今日までにサインしろとか言ってたよね。いやそんなん無視しますけど!? 同意してないし、無理矢理サインさせられても、そんなもんは無効だと声を大にして言ってやんよ!
でもとりあえず、ドレス着させて。
夜着は……こう…………お胸がバーンしてるのよね。流石に人前には出れないからね。
「イザベルが大人しく待ってろと言っていると伝えてきてちょうだい」
「……は、はいっ」
侍女が何故か死地に向かうような顔で部屋を出て行った。なんか、ごめんね?





