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私は誤解を解こうと慌てて理由を話す。
「違います! 誤解しないで下さい……私も竜騎士になりたかったのです」
「ほうほう」
「だから、そうではありません。私の思いも長いのです」
「長いと言うとどれほどに?」
「飛竜の産卵に立会い、卵から生まれたばかりの子供を抱き上げても、何一つ警戒されず許される程に。十年近い歳月をかけて、彼らと竜と信頼を築いてきたの。騎士との恋愛など、考える暇はありませんでした」
「それは素晴らしいことだ。つまり騎士ではなく竜と恋をしていたということか」
また語弊がある言い方をする……陛下の意地悪は底なしだ。
嫌いになってしまいそうだった。
「雌の飛竜ですが、あちらにその意志があれば今頃ここに飛んできていることでしょう」
「……確かにそれはそうだ。自分の大事な存在が誰かの妻になってしまったら――これは私が悪かったようだな。許してくれ、テレンス」
「……はい、陛下……」
レジーは。
故郷で出産に立ち会い、子供を抱かせてくれた赤い飛竜の雌の彼女が来る気ならば、もう既にやってきて、騒ぎになるはずだ。
それをしないのは、子育ての時期だということ、夫が側にいること、皇后陛下が許さないこと。
などといくつかの理由が挙げられるけれど。
そうでなくても、彼女には私の旅立ちが伝わっていて、理解してくれたからこそ、無理に追いかけてこようとはしない。
彼女は、それほどに賢い竜だから。
みんな、竜の心を知らなさすぎるのだ。
だから……互いに折り合いがつかず、人に害をなす。
今までの私と陛下のように。
互いの距離を測ろうとして微妙な小競り合い、確かめ合いを始めてしまう。
言葉というものがあるからこそ、この程度で終わっているのだ。
それが通じない竜と人ならば、それはもうとんでもない被害だって――と、そこまで考えて私は握っていた陛下の手をしげしげと見つめていた。
「どうした。何か面白い手相でもあるか? そなたは占いでもできるのか」
「……占いとまでは」
「までは?」
占えると言ってしまおうか?
その方が、なにかと便利だ。失敗してもあれは占いですから、と言い訳が立つ。
過度な期待をされずに済む。
「そうですね! 占いを行えます。でもこれではいけません」
「ほう。面白い。何がどういけないというのか、教えて貰いたいものだ」
帝国からやって来た側妃は、実は未来を見渡せる有能な占い師でした?
そんな肩書、いまは作ってみるのも悪くないかもしれない。
私は、必要なものがあります! と声を大にして陛下に進言した。




