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3. 彼女達の特技

キャラの簡易紹介回です

「さぁさぁ、受け止めろ! グレートヴィーゲル!」


 岩石の魔物『ミニロックス』と相対するのは金属で出来た人形『グレートヴィーゲル』。

 大きさは子供サイズでゴブリンと同じくらい。

 教室で見た人形と同じく全身が角張っているのは趣味なのかそれ以外の形に出来ないのか。


「グオオオオ!」


 ミニロックスは大きめの岩のような魔物で、ゴロゴロと転がって体当たりで攻撃してくる。

 それをグレートヴィーゲルは両手を使って真正面から受け止めた。


「ギギギギ」


 声のように聞こえるが、金属が軋みをあげる音。

 壊れるのではないかと少し不安に感じられるけれど、グレートヴィーゲルは難なくミニロックスを押し返した。


「よしよし、行け! グレートヴィーゲル!」


 金属の拳を振りかぶり、ミニロックスに叩きつける。

 動きがぎこちないが、大した動きが出来ないミニロックス相手ならば十分だ。


 三度、四度とダメージを与えるだけで、ガラガラと音を立てて崩れた。


「うんうん、良くやった」


 ドルチェがグレートヴィーゲルの元へと駆け寄り頭を撫でる。

 その姿はまるで本当の人間に接しているかのようだ。

 巨大な柔らかなものが目の前にあるが全く反応していないのでグレートヴィーゲルが人間では無いのは明らかだが。


「これがドルチェさんのスキルですか」

「そうそう、格好良いでしょ」

「凄い格好良いです!」

「!!」


 ドルチェのユニークスキルは『人形師』

 人型のモノを自由自在に操れる能力だ。

 元々ドルチェは金属製の自律人形、すなわちロボットに興味があり自作していたのだが、今はそれらをスキルで動かしている。


 本来の自律人形はからくりで動かすものであり、そちらならばフレンは以前に見たことがある。

 というのもそこそこ大きな街であれば、子供相手に小さなロボットを使用した劇をしている人が広場や公園にいるからだ。


「小さい頃に毎日のように人形劇を見に行ってたんですよ。格好良くて夢中になって見てました」

「ほうほう、ボクと一緒だね!」

「まさかドルチェさんが人形を操れるスキルを持ってるなんて。羨ましいです!」

「でしょでしょ。ボクもこのスキルがあるって分かった時、喜びすぎて気絶しちゃったんだよ」

「分かります。僕だってそうなりますもの」


 グレートヴィーゲルをワクワクキラキラした目で見るフレンの様子から、ドルチェは彼の言葉が心からのものであり同志であると確信した。


「ならなら、学校に戻ったらボクの自信作を見せてあげるよ」

「本当ですか! 楽しみです」


 フレンの喜ぶ姿を見たドルチェもまた笑顔になる。

 その笑顔には安堵の気持ちが含まれていることをフレンは気付いていなかった。


――――――――


「次は私でございますね」


 ウサギ型魔獣、ヘビ型魔獣、鳥型魔獣。

 ホウシェは小型の魔獣をどこからか取り出したナイフで次々と射抜いた。

 百発百中で見事に一撃で息の根を止めている。


「ホウシェさんも凄いですね。命中に関するユニークスキルでしょうか?」

「いえ、こちらは一般スキルの『小剣術』です」

「一般スキルでここまでの精度があるんですか!?」


 スキルと言えども、使い始めた当初は一般人に毛が生えた程度の恩恵しかない。

 使い込むうちにスキルの効果が徐々に上昇するのだ。


 当然、小剣術で飛ぶ鳥を落とす程の効果を発揮するにはスキルを相当使い込む必要がある。

 あるいはスキルとは関係なく元々得意だったかだ。


 どちらにしろホウシェがかなりの使い手であることには間違いないだろう。


「(でもなんでメイド服なんだろう。聞いても答えてくれ無さそうな気がするし)」


 強キャラ臭のするホウシェではあるが、何故かいつもメイド姿だ。

 今日の魔物狩りでもその姿は変わらない。

 気にはなるけれど、不思議とはぐらかされるイメージしか湧かなかったためその疑問を口にするのをぐっとこらえ、胸の内に秘めることにした。


 その代わりに別のことを聞いてみた。


「ユニークスキルは使わないのですか?」

「…………はい」


 表情があまり変わらないホウシェだが、この質問に少しばかり眉をひそめた。


「あ、ごめんなさい! 言いたくないことだったでしょうか」


 それゆえフレンは地雷を踏んでしまったかと反射的に謝ったがそうではなかった。


「いえ、そのようなことはございません。少し言いにくかっただけですので」

「言いにくいなら言わなくて結構ですよ」

「フレンさんはお優しいのですね。別に大したことではございませんので是非ご覧ください」


 そう言って、ホウシェは何故か左手を腰にあててくの字にし、右手で斜め上空を指差した。

 空は曇り模様で辺りは少し薄暗い。


「れっつぱーりぃ!」

「え?」


 その瞬間、上空から光が差し込みフレンを明るく照らし出した。

 それはまるでステージ上の人にスポットライトがあたるかのように。


「…………」

「…………え、あの」


 それ以外の変化は全く無かった。


「もしかして回復魔法ですか」

「いいえ」

「バフがかかるとか」

「いいえ」

「光属性の攻撃魔法でしょうか」

「いいえ」


 思いつく効果を挙げてみたけれど、どれも違うと断言される。


「う~ん、分かりません。どういった効果なのでしょうか」

「ご覧の通りですよ」

「え?」

「ですから、目的の場所に光をあてられるスキルです。『スターライト』という大層な名前がついてますが」

「そ、そうなんですか」


 なんと、ただ明るくなる以外の効果が無いスキルだった。

 フレンはどう応えて良いか分からず困ってしまう。

 そして気付く。

 この微妙な雰囲気になることが分かっていたから、言い淀んでいたのだと。


「そ、その、使い込めば凄い効果が発揮しそうな名前ですね!」

「フレンさんはやはりお優しい方ですね。フォローありがとうございます。私もそう思い、なるべく使うようにしているのですがまだ効果に変わりはございません」

「そうなんですか……」


 必死のフォローも全く意味が無いと分かり気まずさが加速する。


「その、発動にはそのポーズが必要なのですか?」

「いえ、これは私の趣味です」

「え?」

「私の趣味です」

「そ、そうですか」


 フレンは決めた。

 もうこの話題は止めようと。


 ホウシュのことが分かったようで分からなくなったような不思議な気分だった。


――――――――


「最後は私だな」

「マセリーゼさんのことは良く知ってます。だって第六位ですもん。十位以内の人を知らない生徒はいないんじゃないでしょうか」

「ほう、そうなのか。どう言われているのか気になるな。教えてくれないか」

「もちろんです!」


 学園トップテンの人達はその他の生徒達とは明らかに強さの格が違う。


 この学園は強くなりたい人が集まる場所だ。

 そして強さに惹かれる人が集まる場所でもある。


 誰もがトップテンに入ろうと彼らを研究し、彼らの力に憧れて彼らを知ろうとする。


 その結果、彼らに関する多くの情報が学園の常識として広まっているのである。


「マセリーゼさんは風魔法と細剣術のエキスパートです。風魔法は高威力広範囲のものは使わずカマイタチや突風のような初歩魔法の使い方が抜群に上手く、風を操り高速移動を実現するというオリジナルの使い方は他の誰にも真似できていません。その風魔法と細剣術を合わせて速さと手数で相手を圧倒する戦闘スタイルが最大の特徴でついた二つ名は『疾風のマリー』。最近は雷魔法もコンボに組み入れて相手の足止めなどに活用し、戦術の幅がより広がったと言われてます。概要は・・・こんな感じです」

「概要ということはもっと詳細な情報も知られているということかな?」

「そうですね、戦闘時の癖とかどの魔法の利用頻度が多いとか僕が知っているだけでも他にもまだまだたくさんあります」


 だが分析されても第六位の座をキープ出来ている。

 つまりはその分析を活かして彼女を超える程の強さを得るには相当の鍛錬が必要ということなのだろう。


「一つだけ聞いても良いですか?」

「ああ、構わない。一つと言わずいくらでも聞いてくれたまえ。ああ、私生活に関することは勘弁な」


 堅苦しいイメージがあったけれど、こんな冗談を言うようなタイプだったのかとフレンは少し驚いた。

 トップテンの実力者という事実から勝手に怖い人だと思い込んでしまっただけかもしれないと反省した。


「もしかしてマセリーゼさんは『風雷魔法』を使えるようにするつもりではないでしょうか?」

「…………何故そう思った?」


 マセリーゼは心底驚いたといった感じだ。

 これまで一度も聞かれたことの無い質問だったのかもしれない。

 何故ならマセリーゼと言えば風魔法であり、この先もそれをベースにするのだろうと誰もが思い込んでいたからだ。


「マセリーゼさんの戦闘スタイルが、僕が憧れていた人に少し似ていたので」

「なに? ちょっと待て、その憧れている人って誰なのか聞いても良いか?」

「はい、『疾風迅雷』の二つの名で呼ばれるシェルトナという方です」


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