寝る前に書く小説のお話
主人公 母にありとあらゆる習い事を、姉にありとあらゆる武術やサバイバル術等を叩き込まれ、超人と化した高校生。現在ニート街道まっしぐら。夏休みはぐーたら過ごしていた。
青凪君 正義感の強い女子高生。最近ストーカー被害に悩まされている。
神崎君 犯人はこいつだった。(ネタバレ待ったなし)因みにちゃんとした理由があるのだが、本文で語られるかどうかは……ない(断言)
私は何をしているのだろうか?って君たちに聞いてもしょうがないだろう。
クーラーの効いた部屋で私はベットでスマホを弄りながら現状況を嘆いていた
夏休みだというのに部屋の中でだらだら寝ているだけなんて……だらけすぎにも程があるだろう
だが、内心でどれだけ自分を叱咤しようと、こんなだらだらした姿では説得力というものがないな
はぁ仕方ない……
「散歩しよう」
◆◆◆◆◆◆
外に出てみるともうすっかり日は沈み、いつもは騒がしい住宅街も今は閑騒している。
さて、外へ出たはいいもののどうしようか?
ただ単に散歩するのもいいが、それでは面白味がない……そうだ、あれで行こうか。
私はポンッと思い付き、押し入れの中を漁った。
「あった」
私が押し入れ中から出したものは、ずばりローラースケートである。これを出したということはどういうことか、皆さんお分かりだろう?
◆◆◆◆◆◆
──私は今、誰も居ない深夜の住宅街をローラースケートで散歩していた。道をスイスイと走っていると自分がをまるで風になった気分になった。
……これは中々楽しいものだな。最近では珍しく私ははしゃいでいた。これも部屋で引き込もってばかりだった弊害なのだろう。
私は少し感慨深い気持ちになりながら深夜の住宅街を走り回っていた。
私は元々ずぼらな性格で、やる気を出せば出来ることを何時間も掛けてするような適当ぶりだ。姉曰く、「見た目も才能もハイスペックなのに、お前の性格が全てを台無しをしている」と専らの評価だ。
高校に入って一人暮らしを始めてからというもの、誰も私の生活に注意をしてくれなくなった。
だが、私は自分で言うのもなんだが、これでも他と比べればマシな部類に入ると思うのだ。
少なくとも1日3食は欠かさず食べるし。
バイトこそしていないが、出掛けることが無いため、趣味などに使うような余計出費はない。
しかも、一日中ベットから離れることはない徹底ぶり。ああ、なんて私は良い子なのだろうか。
母や姉からは「あの子、そろそろ自分で家事できるようにならないのかしら?」とか「自分の部屋の片付けの為に態々姉を家まで呼ぶなっ!」と大変評判である。
なのに最近仕送りが減ったのは何故なのだろうか?非常に不可解だ。
私が夏休みに入る前、私はあるプランを練っていた。
仕送りが減った今、出来る限り出費は抑えた方がいいだろう。
そうして考えに考えた結果、出たのは。
「部屋から一歩も出ない」というものだ。
詳しく言えば、自室に篭り、お手洗いや風呂などの最低限の事意外を部屋だけで済まし、水道代や電力の消費を最小限に抑えるなんとも素晴らしい夏のプランである。
このプランを友に話した時、何故か苦笑していた。このプランに何処か不備があったのだろうか?次に会ったときに聞くとしよう。
ローラースケートのタイヤを地面に滑らせながら、私は夏休みに入ってからの諸々の懺悔?をしていた。すると、ふと遠くの方から悲鳴が聞こえた気がした。
「助けてっ!」
どうやら私の気のせいではなかったようだ。
ふむ、こんな夜中に大声を上げるとは近所迷惑もいいところだね。
そう私は自分がローラースケートで絶賛騒音を立てていることを棚上げにし、内心文句を言った。
まあ、冗談はさておき十中八九厄介ごとだろうね。巻き込まれる前に逃げようか。
そう思って私は何の躊躇もなく悲鳴の主を見捨て、ローラースケートを帰宅の足に向けようとすると
「誰か助けてっ!!!」
後ろから必死にこちらの方向へ走ってくる少女……と見るからに不審者な男がジャックナイフを持って少女を追いかけていた。
はて、私の足音が気付かれたのかだろうか?
私は必死に不審者君から逃げる少女君と、それを追いかける不審者君を交互に眺め、暫く考えた結果──逃げよう
逃走を決意した。
スイスイーと走り去っていく私に対して少女君は次の瞬間。不審者君を振り抜く勢いで私に追い付いてきた。恐ろしい走りだ。将来は是非オリンピック選手を目指したまえ。
「ちょっ!?あんた何で黙って去ろうとしてんのよっ! 助けなさいよっ!」
この少女君は、中々めでたい思考回路をお持ちのようだ。
「何故私が危険を侵してまで君を助けなければならない?」
「はぁっ!? 普通女の子が不審者に襲われてたら助けるのが当たり前でしょっ!?」
普通、当たり前……ね
「それなら聞くが、もし私があそこで不審者に立ち向かったとしてそれでどうにかなると思うかい?」
「そ、それは……」
「片方は助かるかもしれない、がしかし、その後追い掛けられ二人とも無駄に死ぬだけかもしれない」
「うぅ……」
「そもそもに助けを呼ぶならここらの住民に助けを求めれば良かったじゃないか」
「だ、だって誰も出てくれなかったから……」
緊張が切れたのか、腰をストンと落としぽろぽろと泣き出す少女君。そういえば私がローラースケートで滑っていた時もそうだが、ローラースケートの滑る音は結構な騒音のはずなのだが、誰も気にした様子はなかったね。
「そういえば君の名前は?」
「……青凪」
「短い間だがよろしく青凪君」
私は自力で立てない彼女に手を差し出した
「そ、それって……?」
「ああ……」
私は爽やかな笑顔で言う
「囮役お願いするよ」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!?」
と驚きの声を上げた青凪君だが、しまったと慌てて口を塞ぐ。が、それはもう遅い。
壁からそれは覗いていた。その狂気を孕んだ目は「見つけたぞ」と物語っていた。
「……ニタァ」
「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!?」
煩い、鼓膜が破れそうだ。
「じゃあ、早速で悪いが囮よろしく頼むよ」
「いやいやいやいやいやいやいや!!!!!? まって! 行かないで! 何でもするから!?」
私の足にしがみつき絶対に離さないという感じだ、ふむ困った。
「安心したまえ、必ず助けるよ」
「その言葉信用できないんだけどっ!?」
ダメだったようだ。しかし時間が惜しい。
「では、また会おうじゃないか」
私は必死に引き留める彼女の拘束を解きある場所へ向かった。
◆◆◆◆◆◆
「あ……待って…………」
青凪君は見捨てられ絶望的な顔をしている。そこにジャックナイフを持った不審者君が少しずつ彼女に近づいていく。
「あ、あぁ……」
不審者君は静かに、この状況で言うなれば不気味にどんどん彼女との距離を詰めていく。
「ぃ……いやっ……来ないでっ!」
まるで、彼女が泣いて怖がる姿を愉しむように。
彼女の目の前に行くとジャックナイフを彼女に振り落と……させるとでも思ったかい?
「あ……」
ふう、危機一髪だったよ
青凪君は中々いい芝居で時間稼ぎをしてくれた、お蔭で間に合った
私は青凪君の身体を切り裂くはずだったジャックナイフをそれで防いでいた。
それ青凪君は思わず声を上げた。
「うそぉ!?」
そうスコップだ。
君たちのツッコミたそうな気持ちはよくわかるが、スコップは実に万能な武器だぞ?……それはまあ置いといて。それよりこの不審者君を撃退することが先決だ。
不審者君は逃げたはずの私が戻ってきたどころか攻撃を防いだことにびっくりして目を見開いていた。
「あ、あんたどこに行ってたのよっ!?」
「どこって、コンビニに決まっているではないか」
コンビニは実に便利だ、最近のコンビニでは武器まで売っているのだな。
「その認識絶対に間違ってるわよっ!?」
私たちが茶番劇を演じていたころ、不審者君は落ち着きを取り戻したのか鬼気とした視線と共にこちらにジャックナイフを向けた。
完全に殺る気になってるね。
不審者君はジャックナイフを横に滑らせた。
「どどどどうすんのよっ!!?」
「まあ、落ち着きたまえ」
私は難なくジャックナイフを受け止める。
「君がどういうつもりでこの娘を襲ってるかは知らないけど」
腕に少し力を込め勢いよく踏み出す。私は珍しく怒っていた。
「人の散歩を邪魔する者は何人たりとも許さないっ!」
ギリギリと均衡を保っていた金属のぶつかり合いは一瞬にして私に傾いた。
次の瞬間、私のスコップは不審者君のジャックナイフをぶっ飛ばした。
そして、武器を喪い呆然としている不審者君に最後に一言告げる。
「好きなら遣り方ってものがあるだろう?」
君の遣り方は少々過激すぎる。その言葉に目を見開いた不審者君の腹にスコップを叩き込む、勿論尖ってない方で殴ったから安心したまえ、内蔵は無事だ。
「がはっ!?」
無理矢理肺の空気を出された不審者君はドスッと倒れた。
「ふむ、遣り過ぎたか?」
死んだように眠る不審者君を横目に私は襲われる前とは一転し、呆然とした表情をした青凪君を見つめ。
「それじゃ、今度からこんな時間に外出するときは不審者に注意することだね」
と、呆然としている青凪君を余所に帰路に着こうとすると
「ま、待ちなさい!」
呼び止められてしまった……。はぁ、何故散歩に出ただけだというのにこのような面倒なことに巻き込まれるのだろうか?私はつくづく運がないようだ。
「さっきは助けてくれて……ありがと」
ふむ、
「感謝は受け取ろう。だが、私を無理矢理巻き込んだ件は責任はしっかり取ってもらおうか?」
「そ、そういえばあいつ生きてるの?」
青凪君は誤魔化すように、不審者君を指差した。
「ああ、手加減はしたからね」
あれで手加減って……という言葉が聴こえたが気のせいだろう。
ああ……面倒だが一応聞いておこう
「青凪君、この不審者と面識は?」
「少なくとも私にナイフ持って追いかけてくるような知り合いは居ないわっ!」
心外なっ!という風な顔をする青凪君だ。確かにそうだ。私の知り合いでも精々居るのはパンツを被ってはぁはぁ言っている変質者くらいだ。──しかし
「これならどうだ?」
私はおもむろに不審者君のフードを脱がした。
「こ、神崎君!?」
ふむ、やはり知り合いだったようだね
◆◆◆◆◆◆
「クソッ!!! 何なんだよお前! もう少しで! もう少しで計画通りに行くはずだったのに!!!」
ふむ、随分と興奮しているね。
「それは君の計画が稚拙だったからだろう? それを私のせいにするのはお門違いもいい所じゃないかな?」
君はバカなのかい?と言うと不審者君もとい神崎君は顔を真っ赤にした。
「くそっ! この縄ほどけっ! お前に用はないんだよっ! とにかく青凪と話しさせろ!」
私はあの後再びコンビニへ行き、丁度良さそうな縄を買った。
勿論、神崎君を縛るためだ。
彼は随分と直情的だね。それに捕まっているというのに強情な態度を崩さない。だが勿論彼の要望には答えられない。
「駄目に決まっているじゃないか」
「はぁ!? 何でだよっ!」
◆◆◆◆◆◆
神崎 湊人。彼はアメリカで生まれたアメリカ人と日本人のハーフ。彼は小学校の頃からいじめられっ子だった。それは高校生になっても変わらなかった。
ある日、いつも通り苛めっ子グループに陰湿な嫌がらせを受けていた所、彼女|が現れた。そう青凪君である。教師陣も彼が嫌がらせを受けているのを知ってはいたものの、それを解決に乗り込もうとする者は居なかった。
というのも、苛めっ子グループの中に有名企業の社長の御曹司が居たことが問題だった。その有名企業の社長は、学校に寄付金という名の賄賂を学校に渡していたらしい。そのため教師陣は強く言い出せない者と自身の保身に走り、彼が辛い思いをしているのを見て見ぬふりをしていた者に別れていた。どっちにしろ彼を助けようとしていた者は皆無だった。
だが、事態は急変する。
青凪君が彼に嫌がらせをするグループ達を叩きのめしたからだ。
青凪君は彼に嫌がらせをした証拠をかき集め、校長の前に突き出したのである。その時の言葉は
「あなた方教師が生徒を守らなくて誰が生徒を守るんですかっ!!!!!」
随分と男前だ。私が神崎君の立場ならうっかり惚れてしまいそうだ。
その後青凪君の行動に触発されてか、一部教師や生徒達が奔走した。
そして、その学校の教師達は粛正され、苛めの主犯格であった御曹司君は退学。
彼は何故他人のためにそこまでできるのか?と彼女に聞くと、彼女はこう答えた。「困っている人を助けるのは当たり前じゃない」と。その時の彼の眼には彼女は女神のように見えていた。
夏休みに書いたやつがそのまま投稿されることなく肥やしになっていた為、真逆の季節に御披露目されることとなったのにゃ!