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何故勝者は死に、敗者の俺が生き残らねばならない


 舞台設定《闘技場のチャンピオン》




ザザザ……




 西の国。そこは物流は盛んで人の通りも多い、控えめに言っても発展した国だ。その国の中央にその国のシンボルとも言える建物はあった。“闘技場”力を求める者が死闘を繰り広げる死地だ。殺されろ、死ぬ覚悟の無き、弱き者にこの闘技場の門を潜る資格はない。と言われる程にここの闘技場の闘いは激しさを差している。常人には解らぬ感性がこの闘技場には存在する。首をぶち斬られようと、喉を喰い千切られようと、闘い続ける。その様に人々は熱に当てられ、熱狂するのである。




 争いの激しい闘技場にて頂点に立つもの。それは“チャンピオン”と呼ばれ、またその命も短命であった。下位の闘技者にはチャンピオンという存在は体のいいターゲットだ。またチャンピオンになった者はチャンピオンを狙う者に狙われる運命なのである。座すれば、いつか身体は壊れ、死に行く者の末路である。これ程までに闘技場の“チャンピオン”というのは虚しく、そして全闘技者が目指す頂なのである。




『さあさあ今日も始まりました!! 遂に今日は決定戦!! 何時の間にこんなに時間が経ってしまったんだぁ!!? 集まった数ある猛者を叩き上げ、リング外へ送り込んでいったこの男、その名もぉぉぉぉぉぉ──』








『リヴェヘぇぇぇ~~~~ン!!!!!』




『『『わああああああああああ!!!!!!』』』










『対するは! 敵を悉く致命傷に陥らせた見た目に反した危険な男ぉ!! 闘技場チャンピオン!!! チューニング・ブラッドぉぉぉぉぉぉ~~~~!!!』




『『『わああああああああああ!!!!!!』』』






 闘技場のチャンピオンは早死にしやすい。何故ならずっと勝ち続けることなんて不可能だからだ。心も身体も疲労し、やがて死に至る。それが飽きずに闘技場をやっていくコツなのだろう。




 俺はそんなの関係ねぇ……そんな前例ぶち壊してやるよっ!!!!




『死合のゴングが鳴ったぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!?』






 そしてリングの上に立っていたのは……




『こ、こ、こ、こんな事があって良いのかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!? まさかのどんでん返しっ!? 誰が予想したかこの勝利ぃぃぃぃ!!!! チャンピオンを撃ち破り勝利したのはぁぁぁぁぁ……』




『リヴェヘぇぇぇ~~~~ン!!!!!』




『『『わあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』』』




 それから現在、9999勝。俺がチャンピオンになってから勝利し続けた回数だ。力だけの叩き上げじゃねぇ、挑戦者である野郎共と闘いながら技も研いでいった。前代未聞のこの記録に闘技場で俺は伝説となった。今では世界中から猛者が集まり俺の更新記録を阻止しようと躍起になっている。闘技場の常連共もいつか俺の首を狩り取るべく牙を研ぐのを忘れてねぇ。これぞ闘い、これぞチャンピオンの立ち振舞い。俺は力を欲していた。謂わば俺は井の中の蛙、外に出れば見知らぬ強者や化け物が潜んでいるに違いない。何時しか俺はチャンピオンを引退することを決意していた。




 そしてその時は呆気なく訪れた。




 力が欲しい。


俺は絶対不敗のチャンピオンとして闘技場にその名を連ねている。他の闘技者もその看板を狙い闘いを挑んでくる。力こそ全てだ。何もかも力で制御できる。




『さあさあ始まりました! 今日この男を地に墜とす事の出来るイカれたヤツは存在するのかぁぁぁぁぁぁ!!!? 絶対無敗のチャンピオオオオオオン!!!! 』






『リヴェヘぇぇぇ~~~~ン!!!!!』




『『『わあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』』』




 力が、欲しいか




『対するはぁぁぁぁ~~~~? これまでの試合を全てで謎の魔導具の力の数々を魅せつけたぁぁぁぁ、此度のダークホースぅぅぅぅぅ……』




『ミジェロぉぉぉぉぉぉぉおおおお!!!!!!』








『『『わああああああああああ!!!!!!』』』




 力の限りを尽くして闘いに望んだ。望んだ結果




「ガハッ……!?」




「君はスゴいよ、まさか《生惑う愚者のイスタンピード》まで持ち出させるなんて」




 全身を鎖で繋がれた男の姿を見れば勝敗なんて一目瞭然。だが、男は諦めない。




「ほっとけ」




 ガキンッ、と鎖を千切り破る。




「でも君もう終わってるよ」




「は? てめぇ──」




 チャンピオンの身体がドサリと倒れた。




『な……な、な……こんなこと有るわけないっ!俺の目が狂ってるのかぁぁぁぁ!!? 今、今まさにっ!! チャンピオンの不敗記録が撃ち破られたぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!? 勝者ミジェロぉぉぉぉぉぉぉおおおお!!!!!!』




『『『わあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』』』




 新たなチャンピオンの誕生だ。




『新たなチャンピオンの誕生だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!』




『『『わあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』』』




 力無き者に世間は目もくれない。




◆◆◆




 かつて風で聞いた。あの男が死んだ……と。先の戦争で“獣王”に挑み呆気なくやられた、と。俺はあの男を打倒するため力を貯めていた。なのにぽっくり逝きやがる。なにがチャンピオン。何が世界最強。こんなあっさり死んでんじゃねーよ。クソ……ッ




 力があっても意味がない。力を超えても死ぬだけだ。下らない幻想だった……。














『GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』




「くたばれ獣風情が」




 ドゴーーーーーーーーーーーーーーーーーン。と普通の人間では起きない地響きが起きながら身体を伏す獣王。その体長は山を優に超えた化け物の如き、いや化け物すら喰い殺す存在だ。土煙が目に染みる。




 この獣王に勝ったということは俺はあの男より強くなったと言えるだろう。だが




「……そんな勝利要らねぇよ」




 巨大な亡骸の上で煙草を噴かしながら一人ごちた。どこまでも虚しい、どこまでも何も無いそんなことだった。














 魔獣を喰らい、力を手にする。




 魔の大陸。瘴気に侵された大地に堂々と闊歩する埒外の化け物達。其々が全て常識外の固有能力を持ち、それを俺が喰らう。力だけが増していく。力だけが増していく。




 既に俺も埒外の存在だ。人の枠で捉えることの出来ない、そんな存在。




『HGAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!!!!!!!』




 音速で襲ってきた四つ足に鋭い、額には更に鋭い刃を研ぐ黒馬。その首を蹴りへし折る。




 可笑しな方向へへし折れた首を掴みながら、俺はその魔獣を貪り食う。




 ブシャら、バリバリ……




 体内に力を感じる。これが魔獣を喰らった結果だ。常人なら間違いなく死に、常人でなくとも苦し足掻きながらやはり死ぬだけ。何故俺が死なないのか、それは知らん。魔獣の身体能力と固有能力を手に入れた俺は、先ほど手に入れた固有能力を持ち出す。




 スラァン。




 鈍く光る刀身、先ほど貪り食った黒馬の額に生えていた刃と同じものだ。それが俺の腕から生えている。性能はあの馬と比べるべくもなく強力なものと化している。




 力を持って全てを殺す。










 今でも何時までも魔獣を喰らい続ける。
















































 あれからどれだけじかんがたった?




 いしきがはっきりしない。




 おれはだれ、なにものだったのか……




 なぜこんなことをつづけている……?




 いみもない、もうこんなこと──








『あれ~? キミこんなところで何をしているのかな~♪』






──おわりにしよう。








 瘴気の篭った超音波で魔力場を乱し、魔法を使えなくし、死生の魔眼で生存権と心臓を握り、喰闇彗星──






『──効かないよ、だってそれわたしの一部だもの』




 その攻撃は悉くを無きものに、いや吸収されたようにみえた。




『解放してあげるね』




 俺の中から身体を蝕む魔獣の力が煙の様に抜け出て行くのを感じる。やめろ、おれのちからだ……っ!




『何もなかった、キミは何も成し遂げてこなかった。──それでいいよね?』




 魔■になる前の元の身体に戻った俺はその瞬間意識を失った。




 俺は──プツリ


















『結局こうなるんだ、わたしってバカだな~……』




 黒い髪の少女はそう自嘲した。






◆◆◆




 パチッ、俺は目が覚めた。


ウジャウジャと茂った草木に囲まれ、円状に切り抜かれた様な空間。そこに木で組まれた家の様なものが存在した。




 頭に柔らかい感覚が存在する。気になってモゾモゾ動かすと、




『くすぐったいんだけど~?』




 不満そうな声が頭上から聴こえた。




 パチッ、と目を開けると




『やっと起きた~? おはよ~』




 記憶を探る。そうか、あの時の……


全ての攻撃を悉くを防がれ、あまつさえ吸収した魔獣の能力を全て取りあげられた光景を思い出す。




『あの時取っとかないとキミ遅からず死んでたんだよ?』




 そりゃどうも、大きなお世話だったな。




『へぇ? そんなこと言っちゃうんだ~?』




 その目は礼儀知らずを見る侮蔑の目ではなく、どちらかと言えば獲物を見付けた狩人の様な、どこか面白げな目だった。俺は身の危険を感じた。逃げねば……っ、頭が動かせない……っ!?




『誰がキミの生存権を握っているのか理解してないみたいだね~?』




 く……っ、放せ……っ!?




『髪の毛いじくっちゃおーっと♪』




 やめろ……っ、ツインテールだけは止めてくれてっ!

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