初代勇者が倒せない!?お話
初代勇者が最強過ぎるので、帝国が本気で初代勇者を殺すために1000人のS級冒険者を集めてぶつけてみたお話です
「ねぇ、シルク?」
「どうした?」
「帝王は初代勇者初代勇者って畏れてるみたいだけど、そんなに強いのかしら?」
「幾つか逸話が残ってるね、例えば『一振りで海を割った』とか『世界を滅ぼす神を逆に滅ぼした』とか『10万年間生き続けてる』とか他にも沢山あるよ?」
「ふぅ~ん? それってガセじゃないの?」
「ガセってお前、そんなものに躍らされて俺たちS級は千も雁首揃えて初代勇者を殺しに行くってか? あの帝王がボケてねぇ限りそれはねぇよ」
「まあそうよね、でも……この中でそれができるのって結構いるわよね?」
「「「だよねぇ~(ですよね)(だよなぁ~)」」」
海を割るなら剣王でもできるし、神なら殺したことあるやつなんかこの中に幾らでもいる。それに長生きなら──
『私はかれこれ500万年は生きてるな』
身長10mはあろう巨人族のアスカーラ。神話時代から生きてるらしい。彼女からしてみれば初代勇者なんて子どもだわ。
『初代勇者ねぇ……』
アスカーラが憂い表情を浮かべる。
「初代勇者について何か知ってるのかしら?」
『まあ、昔供に杯を交わしあった仲だね』
「マジかよ……どんなヤツだったんだ?」
『そうだね、一言で言えば……』
「言えば……?」
ごくり、と喉を鳴らす。場には妙な緊張が漂っていた。
『アイツはバカだね』
「「「「「「「バカ?」」」」」」」
『そうさアイツはバカさ、いつも楽しいこと捜してはみんなを振り回してねぇ、その度に私がアイツに拳骨を落として黙らせてものさ……』
何かを思い出しくすりと笑うアスカーラ。彼女は今何を思い出しているのかしら? その表情はまるでバカな子を想う母親の様だった。
「それにしてもよぉ、初代勇者って何したやつなんだ?」
「知らないの? 子どもでも知ってるわよ?」
「俺は勉強キライなの!」
「あっそ、なら教えてあーげないっ」
「ッチ、別にいいし、ほかのヤツに教えて貰うし!」
「あら、拗ねてるのかしら?」
「う、うっせ!? いっつも俺のことからかいやがって!?」
「あらあら、顔真っ赤にしちゃって……可愛い子ですこと」
「っっっっっっっっっくっそ!!!!? 覚えてろーーーーーーーーーーーー!!!!!!!?」
「行っちゃった……暇ねぇ」
「いや、今から勇者退治に行くんだろ」
「あら、そうだったわね」
「どーすんのさー、ハザネ君どっか走ってっちゃったよぉ~? ねぇ、この後打ち合わせあるんだよぉ~、ハザネ君は果たして間に合うかなぁ~?」
「あ、僕呼んできます」
ビュンと転移すると
「見つけました。外で草いじくって落ち込んでました」
「離せっ! このっ!? 俺は今自分の人生と向き合って……」
「ハザネくぅ~ん、随分と早いお帰りだったねぇ~?」
「何してるの? 今から会議よ、あなたのせいで時間が無駄になるじゃない」
「誰のせいだ!? 誰の!」
「まあまあ、早速始めようか『第五百六十八回初代勇者会議』」
「……ねぇ?(ひそひそ)」
「……なんだよ、今話し掛けんなっ!(ひそひそ)」
「……何で回数多いのかしら? そもそも一回目よねこれ?(ひそひそ)」
「……っ知らねーよそんなの、どーせ見栄張って多くしただけだろ? (ひそひそ)」
「……あーそういうことね~、ありがとっ(ひそひそ)」
「……そんなことで一々話し掛けんなっ!(ひそひそ)」
「ちょっと君たち、会議の最中に私語は慎みたまえ」
「はいはーい」
「……なんで俺まで」
「ハザネ君返事は?」
「……はい」
そういって彼は凄いめんどくさそうな顔をした。
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あー、休日出勤だりー、早く帰りてー、つーか帰らせろ
「せんちょー、嫌そうなのが顔に出てますよー」
「なぁ、フレデリカ」
「せんちょーどうしたのー?」
「俺帰っていいか?」
「頭でも打ちましたかー?」
「いやだってほらっ!? 俺今日は本来休日な訳で! 何か知らんが帝王がいきなり『初代勇者を討伐してこい』ってさ! なんなの!? 俺に過労死しろとっ!?」
「一日働いたくらいで死ぬわけないですよー」
「わかってない!? フレデリカはわかってない!? お前は労働を甘く見てる!」
「そうですかねー?」
「俺がこの後初代勇者とやらを倒すじゃん? 「はい」そしてその後帝王に報告しに行くじゃん? 「はいはい」……そして帝王は俺にこう言うわけよ『やり直し』って! それでさ「はーそうなんですかー、せんちょーも大変ですねー」
「……ちょっとフレデリカ? 君さっきから適当に返事してるでしょ?」
「気のせいですー♪」
このアホは……これでちゃんと給料分の仕事してなかったらクビにしてやる所なのに……
ぷるんぷるん! 彼女の大きな胸が震えた!
……仕方がない、クビは流石に可哀想だし止めておくかっ! うん別に胸に目がいったとかっ! そういうのは全然! ないからっ!?
「せんちょー目がえろーい、やだー」
「っ!?」
「船員のみんなに言いつけちゃおーっとー」
すてててーっと船内へ走り去っていくフレデリカ、きっとこの後俺は自分の秘書に欲情した変態として白い目で視られるのだろうか……
『宇宙戦艦ヤマートゥ』を所有する彼を畏怖を込めて人々はこう呼ぶ
『殲滅王』と
なお後日船員達が
「おっ、変態船長じゃん! なになに、自分の秘書に欲情したんだってー? いやー、仕事でストレス溜まるのは分かるけど、一線越えるのは止めといた方がいいよー?」
「おっす! 変態船長! 遂に男の本能が覚醒したんっすね! 流石っすねっ! 憧れるっす!」
「あー、変長ちゃんじゃーん。どうしよー私も襲われるー?」
「いや、えーっとですね……私は断じて変態船長がそんなことをする人とは思って無いのですが、一瞬の気の迷いと言いますか、過ちというのは誰でもあることですので……いえ、断じて信じて無いわけでは……うっ……ごめんなさい!? やっぱりあんまり信じてませんでしたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!」
部下に蔑んだ目で視られ、友人もちっとも信じて貰えない……ねぇどうして俺はドMに産まれて来なかったの? どうしよう……すげぇへこむ
ハハッ……何でこんなことに……もうお家帰りたい、はぁ……
心身ともにボロボロになった俺、もうストライキしてもいいですか? このストレス、帝都にいる帝王にぶつけてもいいよね? だってアイツぶっちゃけ害悪だし、死んでも後釜据えれば問題ないよね……?
「せんちょー、悪い顔してるー?」
全然悪いことしてない様な、無邪気な顔でいるフレデリカ。オレモウコイツキライ。
「はぁ……仕事しよ」
◆◆◆◆◆◆
目が覚めた。障壁に侵入経路があるな。ああ、もう、家が滅茶苦茶じゃないか。
「随分と騒がしい目覚ましだな」
「ごめんね、みんな我慢が苦手みたいで」
気配を感じる。ざっと1000人位か。その全員が強い殺気を発っている。どいつもこいつも猛者ばかりだ。そして目の前にいる剣士──この女には見覚えがある。
「久しぶりだな剣聖」
「うん、ざっと500年ぶり|だね」
「おねしょ癖は治ったのか?」
「ちょっと、その話はもうやめてくれないかなっ!? まったく……キミは変わらないね」
「「……」」
「「お互い様か!(だね)」」
久し振りに会ったが、こいつは500年前と変わらないな。いや、あの頃より少し大きくなったか? 胸に目をやるが……いややっぱチビのまんまだな!
「キミ失礼なこと考えてない?」
「うんや、全然」
「って、話が逸れたね。本題に移ろう。ボクが今回君に会いに来たのは昔馴染みに会うためじゃない。キミを──「俺を殺すため。だろ?」
「……やっぱり知っていたんだ」
「当たり前だ、あれだけ派手にやってたら誰でも思うだろ」
「ボクずっと前から聞きたかったんだけど、何のためにこんなことをしたんだい?」
「そりゃ単純明快だ。おもしろいから」
「……そっか。なら仕方ないね」
「ククッ……」
「……? なに笑ってるのさ?」
「いや、やっぱお前変わってねぇって思ってよ」
「バカにしてるのかい?」
「ククッ、誉めてんだよ。それより──外のお友達は来なくていいのか?」
「絶対バカにしてるっ! ……ああ、彼らはね、彼らには僕が勝つか負けるまで待機してもらうよう頼んでるから。……あと、彼らとはただの協力関係であって友人でも何でもないから」
「そうか」
「そうだよ」
「じゃあやるか」
「ああ、真剣にね」
「モノリスさんモノリスさん」
『アルジドウシタ?』
「今日の昼食予知してくださいっ!」
『……ソンナコトカ』
「はいっ! お腹ペコペコですっ!」
『アスノチュウショクハパンダ』
「パンダ?」
『チガウパンダ』
「パンダ!」
『ダカラパンダ!』
「だからパンダなんですよね?」
『パンダダッテ……モウイイ』
「なーに二人でコントやってんだよー」
「あっ、キャリーさん! お仕事終わったの?」
「今回のは面倒でさー、なに? 貴族の家取り潰すだけなのに一ヶ月間も潜入捜査したあげく、へっぽこな部下のせいで潜入したのがバレて全部台無し! あーもう! 後始末大変だったんだからっ!」
「大変だったんですね。あ、そうだっ!」
『ン? ドウシタアリス、エプロンナドヨウイシテ?』
「お、アリスのお料理タイムか? もしかしてご馳走してくれる感じ?」
「はいっ! キャリーお疲れのようですから美味しいもの食べて元気出して下さい!」
「アリスぅ……何て良い子なんだお前はぁ~~!!!」
「あ、あのっ、撫でられると恥ずかしい……ですっ」
「おーよしよしよしよし!!! アリスお前は良い子だなぁ~♪」
『……ワレハオナカヘッタノダガ』
高度な演算能力を持ち、未来を予測可能とする喋る石板モノリス。彼の石板には人の魂が宿っている。そして彼の主人アリスは星屑の力を宿し、未来予知ができる星屑人と呼ばれる種族。
「お前たちも他の奴らも、今剣聖が交渉しにいってるってのに呑気なもんだよなぁ……相手は歴代最初で最強の勇者サマだってのによー」
「わたしの未来もモノリスさんの演算も彼のことを殺せるとそう予知しています。わたしはモノリスさんをしんじていますから」
「モノリスさんモノリスさん」
『なんだ?』
「このままじゃ先にいったあの剣士の人死んじゃいます」
『ッナンダト!?』
「今日のお昼はパンだっていってたじゃないですか」
『ソウイウイミデハナクテダナ……』
「交渉決裂か、ならやることは決まりだなっ!」
『主砲一斉照射!』
続きは……ないよ!(毎度の如く)
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