第一章27 『伝説のアビリティリング』
雨月の方へロカが手を広げる。
「そっちにいる傘を担ぐ男が雨月だ」
雨月は鉄扉の近くに突っ立つ。
(革命軍の特殊捜査部か……。オレはシャルル元王女暗殺の件で追われる身。それにここは捜査部隊。目的を果たすための条件としては悪くはないが……)
シドが雨月の身なりと頬の模様に視線を移す。
(カラカサ一族ねぇ……。まーた、総隊長は珍しいやつを……)
「まぁこの2人は見ての通り、いろいろと事情もちなんだけど、とにかく、まず強くなるためにここへきた。そして強くするためにここへ連れてきた。だからみんなも仲良くしてやってくれ」
ロカはやわらかく微笑みながら言葉を吐いた。
ナキと雨月を見る革命軍特殊捜査部隊のメンバー達。
ロカ「んじゃ、改めましてよろしく!ナキ、雨月」
シド「よろしく~」
ヴィック「よろしくな」
リリィ「よろしくじゃ!」
コルト「よろしくお願いします!」
その他メンバー「よろしくぅ!!」
ナキ「あぁ!よろしく頼む!」
雨月「よろしくお願いします」
ロアは雨月に小さく手を振った。
「雨月君よろしくね」
そして、ナキの方を見るなり小さく舌を出した。
「べーーっ」
「あいつオレに冷たすぎるだろ……」
拗ねるようにナキは再び地へと落ち込む。
「また嫌われてやんの!」
からかうナキの近くにいるメンバーの1人、アフロ男。
「てめぇ!馬鹿にしたなっ!」
やつ当たるように威嚇するナキは、そのアフロ男の首を両腕を使って後ろから絞め上げる。
「ウゥ…ウ!!」
アフロ男はギブアップと言わんばかりにナキの腕を叩く。
(もう馴染んでやがる……)
その様子を見るヴィックが苦笑いする。
ロカが口を開く。
「そ、れ、で!隊長クラスは気づいているとは思うけど、ナキは首にクラウンリングの1つCROWNRINGⅢを身につけているからね」
「はっ…クラウンリング……」
「うそ、だよな…」
ロカの一言は隊長クラスを除くメンバーたちは目や口を開いた状態で凍りついたように固まらせ……
同時に一瞬にして大部屋を静まりかえした。
(そりゃ、そうなるよな。オレも始め見たときはさずがに驚いたよ)
固唾を飲み、雨月はナキを改めて見る。
「まままま。まじ、かぁ…」
「リリィ。お前気づいてなかったのか……」
カウンターの上で固まるリリィは勢いよくブゥーーーっと口に含んだ酒をシドの顔へと吹きかけた。
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メンバー達は再びナキに注目する。
「だから、そのクラウンリングってなんなんだよ!」
全員がナキに向けて揃えて声を上げる。
「えぇぇぇぇ!」
ロカが口を開く。
「ナキの首にはめられたブラックリングのことだよ」
「これは、知らねぇ間に首にはめられていたんだよ!どうやってもとれねぇからずっとつけてるだけで……」
カウンター近くのヴィックが口を開く。
「クラウンリングは元々、元天帝国第1、第2、第3王宮の王たちが残したと言われる伝説の自然能力を宿した3つのアビリティリングなんだ」
驚きながら、いまだに震えの止まらない様子のメンバーたち。
ナキは平然とした様子で話す。
「なんかよくわからねぇけど……これって、そんなにすげぇものだったのか」
続けてアフロ男が勢いよく焦った様子で口を開いた。
「すげぇ、なんてどころじゃねぇよ!!ってか、お前今までよく生き延びてこられたな。天帝会が血眼になって探してるっていうのによ……」
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「ギブじゃ、ギブじゃ!わしがわるかった」
シドはリリィの頭部を鷲掴みし顔についた液体を布で拭く。
(紅髪が異質なリングを所持しているとはわかったが、なんでこんなガキがSSSレートのリングを所持してやがる……)
シドの隣に立つロア。
「ほんと信じられないですよね、シド隊長。こんな男があの伝説のアビリティリングを所持しているなんて……」
「まぁ、見ればわかると思うけど冗談じゃないさ!全て本当だ!」
ロカは裏表のない笑顔で皆に言った。
ヴィックはロカに続きシドとリリィへ話しかける。
「オレも今日、ロカ総隊長とロアと一緒にシャルル王女暗殺の真偽を探るため王国に潜入していたわけだが、たまたまあの2人に出くわしてよ。それでまぁ、ナキと雨月のことを総隊長が気に入っちまって……おまけにクラウンリングまでもついてきたってわけなんだ」
「なるほどな…相変わらず総隊長らしいな」
シドは苦笑いしながら笑みを浮かべる。
リリィは胸をときめかせるようにナキを見て目を光らせる。
「あとで絶対に見せてもらうんじゃーーー!」
「まぁ、ということでナキは『クラウンマスター』にはなるんだけど、あまりみんな気にしないでくれ」
「クラウンマスター?」
雨月は頭上にクエスチョンマークを浮かべるナキに視線を移す。
「簡単に言うと、普通のアビリティリングを使うものは『リングマスター』や『リング使い』って呼ばれているんだけど、特別なアビリティリングであるクラウンリングを所有し支配できる器の持ち主のことを『クラウンマスター』って呼ぶのさ」
「へぇ~。雨月は何でもよく知ってんな!」
「こんな知識は常識だ。ナキが知らなすぎるだけだ」
アフロ男がナキに向かって口を開く。
「ってか、ほんとに何も知らねーんだな!お前は……」
「ってか、総隊長!そんなこと言われても気になって安心できないっすよ!」
メンバー達は未だに動揺が隠せない様子を見せる。
「ってか、そのリングにどれだけの価値とどれだけの力があると思ってんすか。それにそんなものを所持していたら、いくつ命あっても足りないっすよ。ここ革命軍特殊捜査部もいつ天帝会やリングを狙う者たちに攻め入られるか……」
シドがアフロ男に視線を移す。
「おい、てめぇ黒団子。総隊長にそんなこと言っても無駄だろ?それにもし天帝会やクソ野郎どもが攻めてきたらぶっ飛ばせばいいだけだの話だろうが。怖けりゃここで一生すっこんでいろ、爆弾頭」
シドはそう言うとせせら笑い口角を上げた。
「ってか、黒団子と爆弾頭どっちっすか!ってか、どっちでもないっすよ!」
「あぁ?……てか、てか、てか、うるせーな。ダークボール教徒。てめぇの頭のダークボールをすべて切り落として。テカッテカのツルンツルンにしてやろうか?あぁ?」
「ってか、ダークボール教徒……って。そりゃ、シドさんは強いからいいっすけど……」
アフロ男は泣きべそをかいた。
ロカは申し訳ななそうに後頭部を抑える。
「まぁ、みんなの思うことも一理あるね。みんな、オレの身勝手でごめんな」
アフロ男はロカを見てため息を吐く。
「そうやって、お人好しで謙虚だからオレたちも反論できないじゃないっすか。ケッ。いつもずるいっすよ総隊長わ」
(ってか、そういうところが男として好きなんすけどね)
アフロ男が手に持つ酒をやっきに飲み干した。
ナキは首の黒いリングを掴む。
「こんなものに何の価値があるんだよ!使い方わからないし。首輪野郎とか、ドエム野郎とか、色々言われるし、犬の首輪みたいだし……」
ズシーンと頭を下げ落ち込む様子のナキ。
「自分で言って自分で落ち込んだぁあ!今までに何があったぁ!」
ナキにツッコミを入れるメンバーの3人衆。
(そういやオレもそんなことを言ったような…)
雨月が苦笑う。
「まぁそんなことだから、頼むわ!」
ロカが周りのみんなを見渡しながら口を開いた。
「……それで、えっと次は…あっそうだ。オレたちの紹介もしないとね」




