第一章20 『雷帝ロカ』
ナキとレオンの拳の先が触れる。
――バチ、バチ、バチ。
摩擦する電気音を立てながら、拳と拳の間に何処からともなく現れる謎の光。
――と、その瞬間。
一瞬にして辺り一帯が真っ白になり――
空から地上にかけ皆の視界を一気に奪う。
――バァアーーーーーン!
大橋に響き渡る心臓を殴られたように震えるドデカい音。
主王宮直属大橋に落ちる一本の雷。
レオンは瞬時にその雷光に気づき後退する。
そして、ナキは落雷の衝撃で地に転がるように体制を崩した。
「いてててて。次はなんだよ!」
頭を抱え、うつ伏せ状態になるナキ。
「いいものを見せてもらったよ」
「お前は…」
隣にいるピカピカと白光る物体を眩しげ見上げるナキ。
「はじめまして」
ビリビリッと雷を全身から放電しながら立っている人間がナキに話しかけた。
バトーは3本の指で黒く細いサングラスの位置をカチャリと再調整し、口を開く。
「雷帝か…」
「久しぶり、バトーのおっちゃん」
徐々に雷帝と呼ばれる者の身体から退いていく雷。
バトー官長と向かい合う雷帝と呼ばれる男。ツンツンとした摘みたてオレンジのような色の髪を風になびかせる。白い布で覆われた服装には、メタルイエローの模様が所々に施されている。肩・胸・ベルト・ブーツとブラックとメタルイエローが彩り輝く甲冑。両腕は白い布が巻き付けられ、片方の肩からは大きく白いモフモフの毛皮が垂れている。太陽のようにカラっとさわやかな笑顔とおでこにある縫い傷。そして、その余裕のある雰囲気は、堂々たる風格を周囲に感じさせた。
大橋の脇で驚いた様子で、冷や汗を額から流すマット。
「うそ……だよな。革命軍特殊捜査部総隊長の雷帝ロカっていったら…世界でも指折りの強者って聞くぞ。本当に、本当にあの雷帝なのか!?」
同時に目を見開く雨月とジーク。
「雷帝ロカだって?何がどうなっている……」
雨月に続けて、ジークが小声で言葉を漏らす。
「あぁ~。まーためんどくせぇやつが現れやがったなぁ~。もうこれ以上バトーの命令で働くのはごめんだぜぇ。……でもまぁ、雷帝ロカとは一度本気でやりあってみたいけどなぁ~。あいつの記憶も気になるし……」
ジークはそう言いながら疲労したような面を見せた後、すぐに好奇心溢れ出る様子で笑みを浮かべた。
後退したレオンも動揺を隠せない様子で、雷帝ロカと向かい立つ。
(今の攻撃、殺気を感じなかった……。この状況を阻止したのか)
ロカを見るレオン。
「すまない……」
小さくレオンが吐く言葉がロカの耳へと入る。
レオンを見て微笑むロカ。
ロカは掌をレオンに向け手を2度振った。
「あっいいのいいの、ついでだから」
(まさか、獅子帝レオンがこの紅髪君に目をあげるとはね~)
バトーは冷静な表情でロカへ問いかける。
「何しに来た?戦争でもおっぱじめようってか?」
「遊びにきたんだよ。捜査部隊なもんなんで」
ヘラヘラとしながら答えるロカ。
「ふざけるな。小童。要件はなんだ?」
(全く、昔から捉えどころのない男だ……)
「まぁまぁ。そう怒るなよ、おっちゃん。とりあえず、この紅髪君とカラカサ君はオレがもらっていくからね!」
「それが目的か。あほ抜かせ、みすみす逃がすわけないだろ。雷帝、お前もなぁ」
「そりゃ、そうだよね。ヘヘっ」
ロカは、おのずと笑みをこぼし続ける。
「まっ、でも今日は天帝会に用はないから戦わずに逃げさせてもらうわ」
「戯言を……」
バトーがその言葉を吐くや、ロカは先程からピクリとも動かずに突っ立っている大鎌を2本担ぐ仮面の者を見つめた。
「あっそれと、さっきからそこの仮面のやつさオレに殺気放ってるけど止めてくれないかな」
ロカは笑顔ではあるが少し怒ったようにト音を下げて言葉を吐いた。
「……」
大鎌を担ぐ仮面の者は全く反応せずに、表情のない不気味な仮面のままただ突っ立ている。
ロカの足元にいるナキは大鎌を担ぐ仮面の者を見るや何気に口を開いた。
「殺気?あいつからは他の天帝会のやつらに会った時見たいな嫌な感じはしないぞ……。てか、あの仮面のやついつここにきたんだ」
雨月は仮面の者を見つめる。
(あれ……消えた?)
驚いた様子の雨月に気づいたジークが話しかける。
「お前、今仮面のやつが見えなくなっただろぉ?あいつはバトー官長がおでました時からずっとあそこにいたぜぇ~」
(何かいるのは感じていたが実体は捕らえられなかった)
「何者なんだ……」
「怖い奴さぁ~。オレもあんま知らねぇけどなぁ~」
と、ジークは薄っすらと不気味な笑みを浮かべた。




