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CRY CROWN(クライ クラウン)  作者: 三上集(みかみしゅう)
第1章『~第3王宮脱獄編~』
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第一章15 『再戦』

「遅くなったな」


 カラ傘を広げ立つ雨月。

 仰向けになるナキを庇うようにマニスの攻撃を防ぐ。


「おせぇよ」


 ナキはそう答えると少し笑みをこぼした。


 マニスは2歩3歩と後ろに跳躍し、距離を置く。


「2人になったところでもうダメだ。紅髪は『気力』切れだし、もう体も思うように動かないはずだ。さぁ、お前には何ができる。暗殺者よ」


 雨月は肩を組み、ナキを持ち上げる。


「やっぱり、この一連の出来事も最終的に全てオレになすりつけるつもりだったんだな。だからオレだけは殺されなかった……」


「ご名答。お前が実際にシャルル暗殺の罪を犯していようが、犯してなかろうが私たちにとって真実は関係ない。お前が罪であること自体に意味がある」


「この意味がわかるよな?お前を罪にすることにこそ意味があると私は言いているんだ」


「要は、民衆。天帝国。を納得させるための落としどころってわけだろ。なるほど……天帝会のやりそうなことだ」


「そう、全ては愛ゆえに仕方がないこと。カラカサ一族の生き残りよ、喜べ!誇りを持て!世界の愛を支える糧となれることに!」


「喜ばないね。だって、もうすぐオレはそのお前の言う愛とやらを、いや、オレたちがその腐った愛を全てぶっ壊すからな」


「ふっ。戯言を」


「ナキ、まだ戦えるか」


「うっ……戦いてぇ。あいつをぜってぇぶっ飛ばさねぇと。でも、なぜかいつもみたいに体が回復しねぇし、思うように体も動かねぇんだ。多分あと少し時間さえあれば……」


 ナキは雨月の声にひっそりと答えた。


「わかった、それだけ聞ければ充分だ」

「……聞いてくれ、実はマニスに勝てる策がある。オレに協力しないか」


「あぁ。それしか、あいつに勝てねぇんだろ」


「そうだな。今思いつく方法ではな……」


 雨月は口を小さく開き、ナキに作戦を伝えた。

 

 ナキは目を見開く。


「あ、あぁ。わかった。いけそうな気がするぜ」


 辛うじて一人で立つナキは少し笑みをこぼす。


 その横に立つ雨月。


 そして、2人の前に向かいに立つマニス。


「なんだ、私に勝つ秘策でもあるのか。しかし……」


――ハァアアアア!!


「無駄な足掻きよ」


 マニスの叫びとともに体から溢れだすオーラ。


 すると、マニスの体の傷はみるみると治癒されてゆく。


「くっそぉ!!あいつも回復できるのか!振り出しじゃねーか!」


 ナキはボロボロの体で残念そうに嘆いた。


「さぁ、再戦といこうか」


 首をコキッ。コキッ。と動かし、マニスは準備運動を始める。


「あいつが回復しようが関係ない。準備はいけるか?」


「あぁ」


「よし、いこう」


 とその合図で、雨月は転がる銃を瞬時に2つ持ち上げ、銃口をマニスに向けた。


――パンッ!

――パンッ!


 すぐさま、雨月はマニスに数弾を撃ち込む。


――パンッ!

――パンッ!


 右方向へと軽々と銃弾を避け続けるマニス。


「攻撃があまいわ」


 マニスは中央の階段前までくると、それを見計らったかのようにナキが前方から走ってやってくる。


 マニスは階段の前で足を止め、即座に横目でナキに反応する。


(先程の銃撃は陽動か……)


「次は、ちゃんと眠らせてやるからな。紅髪!」


 ナキは辛うじて動く紫色に腫れあがる左腕を構え、マニスに真正面から突っ込む。


「ハァアアア!!!」


 マニスは正面から突っ込むナキを返り討ちにしようと拳を構えた。


 向かい合うナキとマニス。


――カシャ!

――カシャ!


 ナキの両耳隣から出る2つの銃口。


 雨月がナキの背後に現れる。


「いけぇええ!」


 雨月が声をあげ、2丁の銃の引き金を引く。

 

「おそいわぁ!2人もろとも飛ばしてやろう」


 そう言ったマニスは雨月が握る銃口に視線を移すが、避ける気も見せず、迷いなく拳をそのままナキの腹へと振りかざす。


――フンッ。


 ナキの腹部へと振りかざされるマニスの拳。


――バンッ!!!


 マニスに向かって放たれる銃声。


――その瞬間。


 マニスの拳はナキと雨月の体をすり抜け……

 マニスの胴体をナキと雨月の体もすり抜けた。


「よしっ」


 雨月は横目で血溜まりが1つとなく気絶した人のみが倒れるフロアへと視線を移し、噛みしめたように呟いた。


 そして、すぐさま2人の目の前には階段に座るもう一人のマニスが姿を現す。


 と同時に、フロア一帯に一瞬だけ聞こえたであろうマニスの歌声と音色が一気に止まった。


 ナキと雨月の体の傷も何ともなかったように戻る。


「はぁあああああ」


 ナキと雨月はそのまま階段に座るマニスに向かって足を止めない。


 ナキと目の合うマニス。


「なにっ、カラクリに気づいたか」


 そして、ナキは目の前の階段のマニスを見るなり、瞬時に無傷の右腕を振り上げ、マニスの頬へと振りかざした。


 が、マニスは階段に座りながら体を後ろに反らし、危機一髪でナキの攻撃を避ける。


「避けた?!」


 マニスはそのままナキの右腕を両手で掴むとナキの腕を一気にひねる。


――ゴキッ。


「いってぇ!!」


 ナキは声を上げ、階段のわきに転がり倒れる。


「これで、あいつの右腕はもうダメだ」


 マニスは体制を立て直そうと階段の上で立ち上がる。


 が、続けてナキの背後いた雨月がその隙を見計らい、カラ傘をマニスの腹部へと突き入れた。

 

 しかし、マニスはカラ傘を両手で受け止める。


「なんて、反応速度だ」


 マニスはカラ傘を掴んだ状態で、目の前にいる雨月の腹部に前蹴りを入れる。


(くそっ)


――グハッ。


 ガードをしきれず打撃を受けた雨月の体は、階段下へと向かって宙へと浮いた。


(やはり、強い……)


――と、その瞬間。


 ナキはすぐに体制を立て直し、マニスへ向かって左拳を振るう。


 掌でその攻撃を受け止めるマニス。


 しかし、ナキは続けて右拳をマニスの顎へと下から上に向かって大きく振るった。


「お前、なぜ右腕がぁ動……!」


 マニスの顎に入る一発の拳。


――グハッ。


 マニスは顎に入る打撃の衝撃で後部へと体を反るように浮かせる。


 しかし、後ろに倒れる瞬間、マニスは段差で踏ん張りきり、かろうじて体制を立て直した。


 ナキは攻撃する手を止めず、2撃目、3撃目と打撃を与えつづける。


 が、すぐに掌で受け止めるマニス。


「やっぱ強えな……」


 そして、マニスは動きを封じるためにナキの両手を握り……

 その直後、ナキへ勢いよく前蹴りを入れた。


「グハッ!!」


 雨月と同じく、ナキも階段下へと向かって、倒れるように宙へと体を浮かせる。


――とその瞬間。


 一筋の光りがナキの背中を貫通する。


――ズシャア。


 軽々と肉を割くような鈍い音。


 その光はナキの腹を貫通し、マニスへと向かった。


 一瞬のことだった。


――ドォーーーーーーーーーーーーーン。


 階段に立つ煙。


 煙に包まれながら階段下へと消えるナキ。


――ぐはっ。


 煙が落ち着き、現れるマニス。


 マニスの口から吹き出る血。


 マニスの腹部に刺さる1本の刀。


 マニスは階段にもたれかかるように倒れこんでいた。


「全く無茶苦茶なやつらだ」


 そう言って階段に落ちているカラ傘にマニスはゆっくりと視線を移す。


「カラ傘の仕込み刀か。」


 さやのように持ち手がなくなった状態のカラ傘が床に落ちている。


 黙って立つナキがマニスの目の前に現れる。


 マニスはナキの体へも視線を移し……


「ふっ、さっきの右腕の回復に、その治りかけの腹部。そして、お前のその首のブラックリング。……なるほど。そういうことか。そりゃぁ、幻覚中じゃ能力が発動しないわけだ」


 マニスはそう言った後、サッと腰の後ろから金色の銃を2つとり出し……


 ナキの顔に銃口を向け、ゆっくりとナキの両脇へと銃口を向けた。


 ナキの目を見るマニス。


「お前が大人しく捕まったら、全員の命は保証しよう。さぁ選べ、大人しく捕まるか。オレにとどめをさし、引き換えに後ろの気絶した元王女と傘野郎の2人が殺されるか」


 ナキは黙り怒った様子でマニスの瞳をじっと見つめ……。


 拳を強く握った。


「ふっ、それがお前の答えか」


――そして、次の瞬間。


――ドォオオオン!!


 ナキの拳がマニスの顔面へと思いっきり振りかざされる。


 顔面へ入る衝撃で、白目をむくマニス。

 

 宙へと舞う鼻血。


――グハッ。


 床へと落ちる金色の2丁の銃。




************************************************


 数秒が立ちマニスの地に落ちた手がピクリと、かろうじて動き出す。


「おへっ。おほっ。……紅髪」


「まだ、息があるのか……」


 マニスの声が聞こえ、ナキは階段を降りる途中で足を止める。


 そして、ナキは首だけを横に向けるとマニスに耳を傾けた。


「なぜ、2人の命を優先しなかった」


「……」


 ナキは一息おいて言葉を吐く。


「……愛ゆえにだ」


 それだけ言い、ナキは階段を降りていった。


「ふっ、オレの愛の完敗だってか」


 マニスは少し笑みを浮かべ――。

 両手両足を広げると、大の字で階段にもたれかかるように倒れこんだ。


――バタッ……。


(Oh,my,mother)

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