第一章9 『新たな刺客』
第3王宮地下2階、薄暗いトンネル。
壁に均一に張り巡らされた灯。
――タッタッタッタ……。
ナキ、シャルル、雨月の3人は走り、トンネルの最奥まで駆け抜ける。
トンネルの奥に現れる土壁。
「行き止まりじゃねぇか!」
土壁に両手をつけるナキ。
「そう簡単にはいかないか」
雨月が呟く。
シャルルが土壁づたいに片手の平をあてながら歩く。
「あった」
土壁から少し飛び出た土角。
シャルルは、土角を掴み下へと引っ張った。
――ガッシャン。
――ゴゴゴッゴゴゴゴッゴ。
両サイドにひらける土壁の扉。
その奥から現れる巨大な螺旋階段。
雰囲気はロイヤルブルー。
暗くもどこか「品」に包まれた螺旋階段。
「この螺旋階段を登れば、出口へと繋がる1階フロアへ行けるわ」
「おぉ。やるな!シャルル!」
「私を誰だと思っているのよ。第3王宮第3王女シャルル様よ!(ドヤッ)」
腰に手をあて。顎に指をそっとおき。
上目遣いで決めポーズを取るシャルル。
「すげぇな~」
螺旋階段の上を見上げるナキと雨月。
「もうっ!」
顔を赤らめるシャルル。
「えっ?」
ナキがシャルルを見る!
「何もない!」
「雨月、あいつ何で怒ってんだ?」
知らないと言わんばかりに、雨月は首を傾げた。
「さぁ、天帝会に気づかれる前に急ごう」
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――タッタッタッタ……。
ナキを先頭に螺旋階段を駆け上がる3人。
「もうすぐで、1階フロアよ」
「あぁ!」
――ガッシャン。
ナキは目の前に現れる1階フロアへと繋がる扉を開いた。
扉の奥に広がるフロアの中央は広場。
そして、2階へと続く大階段が聳え立つ。
中心に敷かれる赤い絨毯。
まさに王宮内の様式と言えよう。
しかし、どこか役所のような作りを感じさせる空間でもある。
壁を沿うように端々には「第3王宮・王都民課」や「生活安全課」など用件ごとの受付場所が存在している。
すぐさま、状況を確認するために身を隠す3人。
――ザワザワザワッ。
まず3人の目に入ったのは、ぎこちなく足行きを止める数十人の王都民であった。
受付の前で立ち止まる足。
外へと繋がる扉の前で立ち止まる足。
部屋の中央で立ち止まる親子。
椅子に座るご老人。
第3王宮に用があったであろう王都民の不安な面々。
「どういうことだよ!ここから早く出せよ!仕事なんだよ俺わ!」
扉の前に立つ槍を手に持つ天帝兵に訴えかける一人の中年男性。
天帝兵は黙ったまま前を向き視線をずらさない。
「ママ~!早く帰ろうよ~」
母親の袖口を引っ張る幼き少女。
「外へと繋がる扉や窓が全て封鎖されている……。もう、天帝会に気づかれたんだわ」
悟ったようにシャルルが言う。
焦るように3人の頬へと垂れる雫。
「この短時間で……」
雨月は静かに呟く。
「くっそっ。シャルル!他に出口はないのかよ」
「一つだけ、あるにはあるわ。第3王宮の最上階からなら。でも……」
シャルルは、ゆっくりと首を横に振った。
「でも?」
「希望が薄いってことだろ。この第3王宮には、まだまだ天帝会の兵たちがいる。ここは天帝国王都だしジーク看守長レベルのやつがいつ現れてもおかしくはない。それに最上階にいくまでに大量の兵を集められたら、俺たちじゃ到底太刀打ちできない」
「んっじゃ、どうすんだよ!!」
「少しは、お前も考えろ!」
焦りから気が立つように、声を上げる2人。
「2人とも!しーーっ」
人差し指を自身の口に当てるシャルル。
「うぅーん……」
ナキは、しゃがみ込み、頭に両手をおく。
「やっぱり今はそれしかなさそうね。私達は進むしかない。何より早くしないと……」
「そうですね。できるだけ身を隠して行動しましょう」
「わかった」
頷くナキ。
――キュィーン。ガッチャン。
1階フロアから2階へと繋がる階段を上ったすぐ先にある扉が急に開く。
ドォーーーーーーーーーーーーーン。
1階フロア内に降り注ぐ、重力で押し潰されるような空気。
身の毛が立ち、瞳孔を開く3人。
「いやっ……」
シャルルは瞬時に屈み、体を小さくする。
2歩、3歩と引き下がるナキと雨月の足。
「なんなんだよ。これ」
額に流れる汗。
「これは……あからさまにむき出た……殺気だ」
雨月が小声で言った。




