プロローグ 『脳裏に焼きつく悪夢』
燃えゆく木々、騒めく葉風。
命を失った灰が、熱風とともに空気中をずしりと漂う。
地に両手をつき、一点を見つめる紅髪の幼き少年。
少年の目の前には、頭部と切り離れた青年の肉体が転がっていた。
大きく見開いたその少年の瞳は、潤う暇も与えず乾ききっている。
「シ、シヴァ……」
そう震えた口からひとりでに零れ落ちた、か細い声…。
その声をかき消すように地をこすり擦る何者かの足音が一歩一歩と少年の目の前へと近づく。
背に白いコートを羽織る大柄の男が少年の目の前に立ち止まり、口を開く。
がしかし、少年はその言葉を聞き入る素振りも見せずに固まったままだった。
「シ、シ……」
と次の瞬間、不意に風を切る音が少年の耳元で鳴り響き、骨を砕くような鈍く重い音が宙へと広がった。
大柄の男に蹴り上げられた少年は、ドサッっと木にうちつけられ地へと倒れこむ。
「ナキ、ナキ、ナキ、ナキ、ナキ、ナキィ。ナキィ……ナキィ!!!」
と、どこからと聞こえる泣き叫ぶ幼き少女の声は「ナキ」と、そう言葉を重ねる度にボリュームを次第に大きくした。
ズタボロの少年は消え入りそうな片の目を声のする方へとかろうじて開く。
少年へと差し伸びる幼き少女の手。
その手に反応するように、少年の唇や手指はピクリピクリと動くも、声も出ず、指先までも正常に動かない……。
そして…
白いコートを羽織る大柄の男の肩に担がれた幼き少女の声は次第に遠くなり、少年の視界は電源が切れるようにプツリと消えた。




