母母
ーマンティコア母、エステルリオー
はぁ……あの人族の者は、まだ戻って来ないのでしょうか?
そろそろ私は、坊やの所に行きたいのだけど?
「あの……エステルリオ様、すみませんがもう少しだけ我慢して下さい」
エルフの小娘……カイラとか言う娘だったかしら?
オドオドして話しかけて来るけど、もっとしゃんとしなさい。
「ひゃ、ひゃい?!」
「すまんな義妹、遅くなっ……た?」
やっと来たわね?!早くしなさい人族、こっちは忙しいの!!
「ダメですよエステルリオ様、こんなのでも交渉相手で王子なんですから」
「『こんなの』と言うな!!それよりも義妹、そこの見目麗しい人は誰か?」
「はい?何を言ってるんですか?最初からいましたよ?」
「最初?!」
失礼な人族の男だ、私の事など眼中に無かったとでも言うのか?噛み殺してやろうか?
「エステルリオ様、落ち着いて!!」
「いや、最初からと言っても、さっきまでそこに居たのはマンティコアの化け」
「あぁぁー貴方は黙ってて下さい!!後、エステルリオ様がそのマンティコア様てすから!!」
なるほど、私が人族に変化した事が分からなかったのか、この人族は。
「この女性が、あのマンティコア……だと?!」
周りに居る人族まで驚いてるけど、何?失礼ね、噛み殺すわよ?
「マンティコア様は、優しい方なんです。今回だって、私が『臨時外交官』として動くと分かったから、こうして一緒に来てくださったのです!!それに」
「あ~分かった、俺が悪かった、話の続きと行こう、な?」
カイラとか言う娘は何を言ってるの?私はただ、坊やの頼みだったから来ただけなのに。
坊やが『カイラ一人では心配だ』って言うから着いて来ただけよ?勘違いしないで。
「えぇ、分かってます、ありかとうございますエステルリオ様」
全然分かって無いわね貴女……まぁいいわ。
貴女には、坊やの元へと案内してもらった恩があるもの、それは返すわ、絶対に。




