北上北上
ーフェンリルー
俺達は、雲より上を北に向かって飛んでいた……んだが
「ふむ、このまま行けば、アレとバッタリ出会してしまうのぉ~」
おいじじぃ、呑気か?!
アレってのはアレだろ?遠目に見てる竜。
「そうじゃのぉ~、それ以外にあるのかの?」
いや、疑問に疑問で返すなよ。
聞いてるのは俺だ。
「ふむ、ところでフェンリルよ、ちょっと聞きたいんじゃが」
あぁ?何だよ?面倒事は嫌だからな?分かってるよな?
「なに、そんな難しい事でも面倒な事でも無いんじゃよ。お主、アレを倒して来てくれんかの?」
おいじじぃ、俺の話を聞いてたか?面倒事は嫌だっつってんだろ?何で最強生物に喧嘩売らにゃならねぇんだよ?
「いやいや、お主なら出来る、常日頃、マンティコアの小僧の相手をしてたお主なら、勝てるじゃろうて」
どう言う理屈だそりゃ?!ふざけんな!!いくらなんでも無理だろうが!!ってか、あの馬鹿と同レベルな扱いしてやんなよ!!一応『竜』なんだからな!!
「あらあらフェンリル、一応って言ってる方が失礼じゃないかしら?」
うるせぇ王女、いきなり話に入ってくんなよ!!
「ふむ、じゃがフェンリル、お主と王女のコンビなら確実に勝てるんじゃないかのぉ~?」
だから、混ぜるんじゃねぇっつってんだろがぁー!!
それだったら、じじぃとエルフのコンビの方が強いだろうが!!
「ほほう、まさかお主から、そんな言葉をもらえるとは思ってもみなかったぞ」
「そうねケルベロス、私も予想つかなかったわ。あの唯我独尊独立独歩猪突猛進のフェンリルが」
おい待てエルフ、てめぇ、一番酷ぇ事言ってんじゃねぇー!!ってか、てめぇ自身、クソ王女のエイミーより、実力は上だろうが!!俺は知ってんだぞ!!
「大変よケルベロス、あのフェンリルがこんな事言うなんて……病気?」
おいエルフ!!
「ふむ……これは一度医者に見せるべきかのぉ~」
おいぃ、じじぃ?!
「本当だわ、自信の塊で退く事知らずの世間知らずなフェンリルが、そんな常識的な事を言うなんて……」
待てやクソ王女!!てめぇがそれを言うんじゃねぇー!!
ってか!常識知らずで世間知らずなのはてめぇの方だろうがぁー!!
「あらフェンリル違うわ、私は世間に触れて来なかっただけですわ。王族だもの」
言い訳にすらなってねぇぇぇぇぇー!!
「……うるさい」
「うるさいのぉ~」
「うるさいですわフェンリル」
俺のせいじゃねぇよコンチクショー!!




