筥迫
今回は筥迫の話。筥迫、と書いて、はこせこ、と読みます。
江戸時代の比較的身分の高い女性が身に付けていた和装小物です。懐紙や櫛、鏡などを入れて、着物の合わせのところに差し込んで使っていました。現在でも七五三や結婚式で使われます。手づくりする方も多いみたいですね。
わたしが持っているのは亡き祖母の嫁入り道具で、挟んであった古新聞によるに、昭和十七年ぐらいのものだと思われます。
形は箱型、婦人用二つ折り財布を一回りちっちゃくしたくらいのサイズ。見た目も二つ折り財布見たいなフォルムで、平たい帯でぐるっと閉じてから、開かないように紐で締めます。その紐の先には可愛い小さなきんちゃく袋がついています。それと、びら簪という、飾りつきのネックレスチェーンのようなものがじゃらじゃら付いた簪が付属しています。これを着物のあいだからじゃらっと見せるのがおしゃれなんだとかなんとか。簪は筥迫本体のほうにさすので、頭にさしたらだめです。
さすが江戸時代から受け継がれている代物。チャックとかスナップボタンとかマジックテープなんて一切なし!(笑)
三つ折りになっている表を開けてみると、朱色の生地の中央に鏡が。生地の裏からに鏡を貼りつけて、鏡として出したい部分だけ生地を切り取ってあるんですけど、切り取り方がいかにも手作業! 全然まっすぐじゃない。あとはマチなしポケットひとつ。裏側には懐紙を入れる用のすこし幅のあるポケットひとつ。あまりものが入らないな……というのも江戸時代は実用性があった筥迫ですが、明治以降は花嫁衣装のアクセサリー的ポジション。中が朱色だったりやたら外側の柄が派手なのも、そのためみたいです。なるほど、わたしが持っているこれも、嫁入り道具に相応しく、赤地に鳥が飛んで花が咲いてきらびやかです。
実は今までこの筥迫、どうやって帯で締めるのかとか、びら簪はどこにさすのとか、わたしまったくわかっていませんでした。最初に祖母の遺品として見つけたとき「お、なんだこれ」と思って帯もきんちゃくも簪ケースもばらばらにしちゃったのです(笑)しかもこのエッセイを書くためにもう一度細部を調べていたら、きんちゃく袋の紐が切れてしまった。古いから弱くなっていたもかも。けっしてわたしが強引にきんちゃくを開けようとしたからではないです。
びら簪は紙にくるまずそのまま保管されていたため、外気にふれて錆びだらけ(泣)あわれびら簪。
きんちゃくの紐は付け替えればいいのでそのうち補修しようと思います。
ちなみに骨董市でも筥迫見かけます。わたしは一つ購入。年代は不明ですがこちらは懐紙入りで状態が祖母のよりいいです。びら簪もちゃんと紙にくるんでありました(笑)




