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ばあちゃんの侍

作者: 龍山 秀治
掲載日:2026/01/01

昼間だったらこんにちは!

明けましておめでとうございます。

2026年もよろしくおねがいします!

 僕のばあちゃんは、よく夕陽を見ながら縁側で昔話をしてくれた。

じいちゃんの話やばあちゃんの生まれ故郷の話。

その中でも、僕が一番好きだったのは侍の話だ。

「お侍さんっていうのはね、ただ強いだけじゃだめなんだよ。守るべき人がいて、はじめて侍になるんだ」

ばあちゃんはそう言って、僕の頭を優しく撫でた。

その手は小さくて、しわだらけで、でも、とてもあたたかかった。

実は僕はばあちゃんっ子だ。

僕はその日から、大切なばあちゃんを守る「ばあちゃんの侍」になると決めた。

その日の夜、無邪気な僕の心は歴史の本を見ながらダンボールで兜を作り、マジックで模様を描いた。

鎧も作った。

刀は、台所にあった包丁を思い出しながら、細長く切ったダンボールで作った。

刀を手で持てるように長めの円柱に丸めて柄を再現した。

ばあちゃんはそれを見て、少し驚いた顔をし、まもなく笑って言った。

「似合ってるよ。立派な侍だ」

何故かばあちゃんの目からは涙が漏れていた。

その涙は灯に照らされてか真っ白に見えた。


翌日、僕はそれを着た姿のまま学校へ行くことにした。

「行ってきます」

そう僕はいうと、ばあちゃんは

「行ってらっしゃい」

母も父も忙しく、いつもそう言ってくれるのは、ばあちゃんだけだった。

道中、幼馴染と合流し、自分の姿を自慢する。

「めっちゃかっけぇ。」

そう言われた僕は自分に自信が出てきた。

急いで学校へ行った。

学校でもみんなは笑って、すごいすごいと言ってくれた。

何人かは真似をして、ダンボールで棒を作り、振り回し、チャンバラごっこを始めた。

僕はその時間が一番楽しかった。

でも、すぐにつまらなくなった。

僕はいつもすぐに飽きる。

そして僕はその時、リアリティが足りないと思った。

ダンボールの刀は、当たっても痛くない。

斬った感じもしない。

すぐに刀がヘニャヘニャになる。

その夜、僕はとあること絵を思いつき、家の引き出しを探し周り、カッターの替え刃を見つけた。

それを危ないものだということは知っていた。

だから、使うつもりはなかった。

ただ、もっと本物みたいにしたかっただけだ。

リアリティが欲しかっただけだったんだ。


次の日、学校へ行く前、母と父が見ていない隙にダンボール刀の先に、カッターの刃を付け、学校へ行くことにした。

でも、少し怖くなった僕は、刀だけはランドセルに入れた。

その日、僕がいつものように玄関で

「行ってきます」

と言っても、誰も反応しなかった。

少し疑問に思ったが、時間がないので急いで学校へ行くことにした。

使わなければいいんだ。

振り回さなければいいんだ。

そう言い聞かせて登校していた。

いつも見ていた前の景色ではなく、下を向き、歩道のみを見て歩いていた。

不思議とこの日の学校までいつもより10倍遠く感じた。

そして学校へ着き、学校の階段を登っていた。

すると、学校の踊り場で幼馴染が二人のいじめっ子に囲まれていた。

押されて、笑われて、何も言えずに俯いていた。

その瞬間、ばあちゃんの声が頭に浮かんだ。

「守る人がいて、はじめて侍になるんだ」

気がついたら、僕はランドセルから刀を取り出し、強く握り、走っていた。

そして腕が動き、刀が風を切る音をたて、振り下ろされた。


その刀は一人の相手の首元に当たった。

叫び声が上がり、いじめっ子は血を押さえながら職員室の方へ逃げていった。

もう一人にも首元付近に攻撃を加えた。

二人は瞬く間に逃げていった。

僕の手はとても震えていた。

でも、不思議と頭の中は真っ白で、胸の奥が燃えたぎるように熱かった。

過呼吸になり息がうまく吸えなくなって、たくさん涙が出た。

それなのに、口元だけが意思に反し、勝手に上がっていた。

僕はこれは自分じゃないと思った。


ダンボールの刀の部分はちぎれ落ち、柄だけを手で強く握りしめて、動けずに立っていた。

しばらくして、呼吸が落ち着いた。

僕は幼馴染の方を振り向き、手を差し出した。

「大丈夫?」

でも、彼は僕を見て、少しずつ後ずさった。

こちらをまるで知らない怪物を見るかのように警戒しているかのように真っ直ぐ僕の目を見つめていた。

少しして、泣き叫びながら、僕のそばから逃げていった。

まるで凶暴な怪物から逃げるみたいに。


そして呼吸は完全に落ち着き、僕の意思なのか、意思に反してなのか

「……これが、ばあちゃんの言ってた侍か」

と、誰にも聞こえない声で、そう呟いた。


幼馴染のいた場所には、新聞が細長く丸められた棒が一つ、静かに落ちていた。

新年最初のお話でした。

次回は何を書こうかな〜

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