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ピアノを弾きたい
弾けると思っていた曲が
覚えていると思っていた音が
この両手から
指先から
こぼれ落ちていく
忘れてしまったと思うには悲しくて
思い出せるまで何度も音を探して
頼りにしていた耳は
ヘッドホンの中で蒸れていく
あの頃のような衝動が
私の中にあればいいのに
弾けるようになりたいと思った曲も
最後まで弾ききれずに
色褪せていく楽譜達
本棚の端に追いやられて窮屈そうに
私が触れるのを待っている
でたらめな指運びで
テンポもリズムもひどく曖昧で
それでも
弾ければなんでもよかった
今でも楽しいよ
ただ少しだけ
虚しいんだ
ピアノを弾きたい
時間を置き去りにして
ピアノを弾きたい
下手くそでも
脱力する昼下がり
散らかした欲望の全てを一つずつ拾っていく
誰も見ていない聞いていない
だから、私は。




