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4話 最弱スキル

「ギャアーッハッハッハ!!!! ある意味トリにピッタリだぜぇ、葛西君」


「そんな言い方良くないよ」


「美羽に守られてばっかで情けなくねえのかよぉ、おーい、負け犬がよ~」


 何を言われても俺が返す言葉はない。言われっ放しであることよりも自分の才能がファンタジーの世界でもここまで無いのかという現実に絶望していたのだ。


「静粛に」


 鷺山の罵倒を遮って王が言う。すると、先程までおちょくってきていた鷺山達も流石に王の命令には従うのか静かになり、一瞬だけホッとする。しかしすぐに自分の手元にある刃の無い剣を見て、その安堵もすべて消え去るわけだが。しかもこの剣、普通の形ではなく、柄と鍔が交差するあたりにこぶし大くらいの穴が開いている。それに加えて周りの質素な見た目。武器というよりかはおもちゃみたいだ。


「これでアルムは行き届いたわけだが、アルムを持った者にはその武器に応じて『スキル』と呼ばれる能力が付与されるはずだ。見てみてくれ。もしかすればゴミのようなアルムであっても有用なスキルがあるのかもしれない。一応、この後の部隊分けに必要だから全員教えてくれ」


 俺の方を見ながらゴミみたいなアルムという国王。少しムカつきはするが、スキルとやらに希望を見いだせるかもしれないという事を教えてくれているのでそのいら立ちを抑える。とはいえ、どうやって見るんだ? 今のところ持っているこの刃の無い剣には何も書かれていない。


「どうやって見ればよいのでしょうか?」


「アルムに向かって念じてみてください。そうすれば頭の中に浮かび上がってくるはずです」


 明らかに国王の翡翠に対する態度が変わっているのだが。先程まで翡翠に対してもため口だったのにいつの間にか敬語へと変わっている。


「ありがとうございます」


 国王の言ったように俺も自分のアルムに向かって念じてみる。


「えーと、スキルはユニークスキル『勇者』があってその下に『身体強化Ⅳ』と『魔法強化Ⅳ』あとは『全属性魔法』ですかね」


「おお! 流石は翡翠殿! まさかアルムのレベルが上がっていないというのにスキルが四つもあるのですか! それにユニークスキルまで持っていらっしゃるとは。翡翠殿が今代の勇者さまで間違いないですな」


 翡翠がスキル欄を読み上げ、国王がそれに興奮した様子でそう告げる。スキルの面でも翡翠は優れているようだ。


「白鳥殿もユニークスキルがあるのですか!?」


「はい。『聖女』というのがありますね。あとは『光魔法』と『聖魔法』も」


「火、水、土、風以外の四大元素以外の魔法ですか。それはユニーク魔法という奴ですな。流石は一千万越えですぞ」


「おいおっさんおっさん。俺も『剣聖』とかいうユニークスキルあんぞ。どうだ、すげえだろ!」


「ほほっ、どうやら今回は豊作らしいですな」


 白鳥さんに続き、鷺山までもがユニークスキルとやらを持っているらしい。俺のスキル欄にもユニークスキルはあるにはあるが……。


 スキル欄:ユニークスキル『鑑定』、ユニークスキル『宝玉生成』


 なんですかこれ。生産職特化じゃないですか。それに鑑定はわかるけど宝玉生成ってなんだよ。意味わからん。アルムとかいう唯一の武器は刃がなくて頼みの綱の攻撃スキルもない。どうやって魔王軍と戦えって言うんだ。こんなのがバレたらまた馬鹿にされるに違いない。頼むから話しかけないでほしい。そんな思いが鷺山に通じることもなく、いや通じたが故か鷺山が俺の肩を組んでくる。


「それでゴミ武器さんよ~。スキルはどうだったんだ? 流石にそんなゴミ武器だから相当良いスキルなんだろうな?」


「一応ユニークスキルが二つある。『鑑定』と『宝玉生成』だ」


「か、鑑定と宝玉生成ィッ!? そ、それでどうやって戦うって言うんですかぁ!?」


 ユニークスキルというところはすっ飛ばされて、大げさに鑑定と宝玉生成のところだけ嘲るようにそう言われる。分かっていたさ、こんな反応になるってことを。皆は剣聖とか勇者とか分かりやすくぶっ壊れ性能のスキルだっていうのに俺だけどうやって戦うのかわからんスキルばっかだしな。


 おいおい、俺の運は一体どうなっちまったんだ。あまりにも俺がかわいそうじゃないか。


「宝玉生成? 聞いたことのないスキルですね」


「聞いたことのないスキルではあるが、文字通りのスキルであるとするなら使えない。無制限で使えるとするならば商人として役立つだろうが」


 国王とリズワール王女のそんな会話が聞こえる。無制限に使えるのなら確かに強そうなのだが、スキルの横には素材が必要ですと書かれている。つまり、ただ物体から玉を作り出すだけの無駄スキルだということが分かる。


「ではこれより能力の強さで第一部隊から第五部隊の5つの部隊に分ける。第一部隊が最も能力が強い者、そこから二、三、四、五と数字の順番で強いものを割り振っていき、訓練の内容も変えていく。それでは」


 国王のその言葉によって俺達は言われた通りの部隊に分けられる。俺は言わずもがな最低ランクのDである。


「葛西君、別々になっちゃったね」


「そりゃそうだろ。クラスでもトップクラスに強い白鳥さんと最下位の俺じゃ一緒の部隊になるわけがない」


 俺がそう言うと白鳥さんは少し寂しそうな顔をする。第一部隊には翡翠、白鳥さんそして鷺山と後三人の神力の数値が500万を超えた者達だ。


「まあお互い頑張ろう。どうせこの先もこの世界で暮らしていかなきゃいけないんだし」


「うん!」


 そうして俺達は部隊ごとに集まって解散するのであった。

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