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31話 二人の魔王

 初代魔王を倒した瞬間、浮遊感を覚え、気が付けば元の部屋へと戻っている。


『ふむ、早かったな』


「うおっ!? 死んでなかったのか!?」


『言ったであろう? 我はもとよりただの分身体だ。死ぬという概念はないままただこの魔王の試練で挑戦者を待つのみだ』


「いやいやこんなハードなダンジョンに誰が挑むんだよ」


『一応六代目のカイザー・ウラヌスまでは1000階層から来てくれたんだがな』


 初代魔王からそう言われて一瞬ドキッとする。そうか。もともと本当に魔王だったんだあいつ。


「じゃあ完全クリアは俺達が初めてなわけじゃなかったんだ」


『うん? いや初めてだぞ? 奴等の到達階数を四捨五入した数字がボス戦の場となっているのだからな』


 うん? どういうことだ? クリアしなくてもこのダンジョンから出る道があったという事なのか?


『何か勘違いをしておるようだな。このダンジョンで死んだとしても一生魔王の試練に挑戦できなくはなるが、完全に死ぬわけではないぞ?』


「へ? つまり途中で死んでても地上に戻れるってことなのか?」


『うむ、そういう事だ』


 初代魔王から衝撃の一言を聞かされて俺は愕然とする。おいおい、なら俺がここまで頑張ってきた意味って……。まあ、アリスに出会えたし何といっても最弱だった俺がここまで強くなれたのもこのダンジョンのお陰だから意味がないわけではないのか。


「じゃあ、地上だとこのダンジョンの最深到達階数で魔王を決めていたのか」


『それどころか最近では10階層からクリアできれば魔王の資格を得ることができるらしい』


 なんとも悲しいことを聞いたな。まあ鬼畜難易度の試練を作ったのが歴代最強の魔王だって考えると力加減が分からなかったのかもしれない。


『そうだ、ライト君。君は確か鑑定が出来るのだろう? ちゃんと称号が付与できているかが心配だから見てみてほしい。なにぶん、称号を渡すのが初めてなものでな』


「あ、ああ。分かった。鑑定」



 ===================

 名前:葛西ライト

 種族名:異世界人

 称号:深淵の魔王

 レベル:10000

 スキル一覧

 ユニークスキル:『鑑定lv.EX』『宝玉生成』

 常時発動スキル:『暗視』『身体強化EX』『状態異常無効』『魔法強化EX』『魔法防御EX』『物理防御EX』

 魔法スキル:『全属性魔法lv.10』『闇魔法lv.10』『毒魔法lv.10』『爆発魔法lv.10』『雷魔法lv.10』

 特殊スキル:『パーフェクトヒール』『貫通』『収納』『変装』『投擲』『剛力』『かまいたち』『擬態』『感知』『氷獄』『獄炎』『反射』『探知』

 ===================



 うん? いやいや称号のほかにいくつかおかしい点があるな。まずはレベルだ。9999になってからしばらく敵を倒しても全く上がらなかったのに10000にまで到達している。そしてなにより、常時発動スキルたちのランクがすべてEXになっている。


『やはりうまく渡せていなかったか? 名前もちゃんとこだわったのだが』


「い、いや、称号はちゃんとあるにはあるんだが。その、ステータスが上がりすぎててな」


『レベルの事か? 真なる魔王は通常レベル9999が最大のところを10000まで上げることができるのだ』


「そうだったのか」


 そんなに特別な条件でしか上がらないのならこの1レベルの間にかなり大きな隔たりがある気がする。


『それと我からもう一つプレゼントを用意していたのだが、それはアリス君が来てからにしよう』


「てことは……」


 俺のすぐ横が突然光りだす。そしてまばゆい光の後にアリスの姿が現れる。ダンジョンの外に出ることなくここへ現れたという事はつまり合格したという事。


『おめでとう、アリス君。君も今日から真なる魔王だ』



 ===================

 名前:アリスフォード

 種族名:魔族

 称号:無双の魔王

 レベル:10000

 スキル一覧

 ユニークスキル:『暗黒魔法』『鬼神』『融合』

 常時発動スキル:『暗視』『身体強化Ⅴ』『魔法強化Ⅴ』『魔法無効』『物理防御Ⅴ』『状態異常無効』

 魔法スキル:『全属性魔法lv.EX』『闇魔法lv.EX』『毒魔法lv.EX』『爆発魔法lv.EX』『雷魔法lv.EX』

 特殊スキル:『パーフェクトヒール』『貫通』『収納』『変装』『投擲』『超剛力』『かまいたち』『超音波』『熱光線』『収納』『獄炎』『飛翔』『バリア』『受け流し』

 ===================



 アリスの称号もちゃんと魔王候補から魔王へと変化している。少し表記は違うが。


「やはりライトの方が早かったか」


「そんな大した差じゃないだろ」


 それに俺はアルムで魔王の力を使いながら倒しているのに対してアリスは自分の力だけで倒している。どちらかといえばアリスの方が称賛されるに値するだろう。


『ふむ。揃ったな。正直言って魔王が二人というのは史上初で不安はあるが、君達ならば大丈夫だと信じよう。では』


 そこまで言うと意味深な笑みを浮かべてこう問うてくる。


『汝らの欲しいものを述べよ。我が一つ叶えてやる』

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