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15話 再会

 何故こんなところに少女が? 見た目的にただの人間という訳でもないようだけど、それにしてもこのダンジョンで他人に会えたのが初めてであったので俺は少し嬉しくなる。それと同時に少女の状態が芳しくないことが理解できた俺はすぐさま少女の呼吸を確認する。


 苦しそうではあるが一応、息はしているな。生きていることさえわかればこっちのもんだ。


「パーフェクトヒール」


 俺は少女に向けてパーフェクトヒールを放つ。俺の手から発せられた漆黒の力はどう見てもヒールのようには見えないが、その黒いベールが解かれた時、少女の体の傷はすべて癒え、過呼吸気味であった少女の呼吸も安定した。


 なんとか助けられたな。そうホッとしている俺のそばでグルルルルッという獣の低いうなり声が聞こえた。夢中になっていたから忘れていたが、そういえばこの娘は魔物と戦っている最中だったな。


 うなり声が聞こえる方を向くとそこにはどこかで見たような黒い狼の魔物がいた。おいおい、この姿はもしかして。


 ===================

 種族名:ヘル・フェンリル

 レベル:3500

 スキル:『獄炎』、『身体強化Ⅴ』、『魔法無効』、『状態異常無効』、『パーフェクトヒール』

 ===================



 予想は的中だ。俺をこのダンジョンの底へと突き落とした元凶、ヘル・フェンリル。あの時は落下の衝撃で即死してくれたからなんとか助かったが今回ばかりはそうもいかない。レベルも前の倍以上あるし。てかここボス部屋でもないのになんでこのレベルが出てくるんだよ。


 そして何より厄介なのがパーフェクトヒール。このスキルは即死でない限り完全に回復するとかいうチート級のスキルだ。使っているからこそわかる、あれはヤバい。


「ガウッ!!!!」


 獄炎を口から吐きながらヘル・フェンリルが凄まじい脚力でこちらへ飛び掛かってくる。後ろにはさっきの少女がいる。避けることはできない。なら!


 スッと剣を構える。剣の握り方なんて教わったことがないから自己流だ。だがそれで良い。魔物を狩るのに卓越した技術力なんざ要らない。


「獄炎!」


 獄炎には獄炎を。龍王の宝玉で出来た赤い剣身が黒い焔を纏いながら走りゆく。


 ガキンッ!


 辺りに金属音が鳴り響く。龍王の剣とヘル・フェンリルの牙が真正面から衝突し、せめぎ合う。せめぎ合う中で両者が纏う獄炎が互いに相対する者へと燃え移っていく。


 対象がこの世から消えるまで残るまさに地獄の焔。それは術者であるヘル・フェンリルの身体をも蝕んでいく。そう、これが俺の狙いだ。


「残念だったな。この剣には炎無効が付いている。お前がくらっても俺には効かないんだよ!」


「グオオオオオッ!!!!」


「どうだ? 苦しいだろ? 俺も味わったことがあるからお前の苦しみは理解できるぜ!」


 互いを燃やす黒い炎はやがて両者の炎を飲み込み一つの大きな獄炎へと変化する。ヘル・フェンリルのパーフェクトヒールも空しく徐々にうめき声が小さくなっていき、最終的には獄炎に燃えつくされていく。


「俺の勝ちだな」


 未だ燃え続けながら自身の勝利を噛みしめる。獄炎を使うヘル・フェンリルが炎無効スキルを持っていないことからまさかと思い突撃してみたらうまくいったな。自分でも喰らうから中級ダンジョンではむやみに炎を吐かないようにしていたのかもしれない。もしこの炎を放てばあの場に居た者は皆、死んでいただろうな。


 そしてヘル・フェンリルを倒した俺にはとある一つの課題が残っていた。


「それでどうやって消すんだ? この炎」


 燃え移ったら対象物が燃え尽きるまで消えないこの炎。この剣を握っている限り俺には効かないため、当然俺の身体が燃えることはない。そのため永遠に燃え続けているのだ。


 当然水魔法で消そうとすると蒸発して何の効果も得られない。


 確か以前は闇魔法を使って逃げ延びたのだが、それではなんか根本的な解決にならない気がする。いや、待てよ?


「闇魔法は獄炎を()()()()()()?」


 あの時、闇を移動した俺の体には獄炎は付いてこなかった。それを考えるなら。


黒い穴(ブラックホール)


 闇魔法で掌の上に小さい団子のような大きさの黒い球体を作り出す。すると、みるみるうちに獄炎は吸い込まれていき、元通りとなった。


「なるほど、闇魔法って結構使えるんだな」


 元々の持ち主であるあの骸骨君には感謝しないとな。ぶった切って倒しちゃったけど。


「一応、ヘルフェンリルも宝玉化しておくか」


 スッとヘル・フェンリルの身体に向かって手をかざし、いつものように宝玉へと変化させると『収納』へとしまいこむ。


「あとはあの()だけど」


 そうして俺は女の子が倒れているところへと介抱しに戻るのであった。

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