風のふく日
今日は寒いせいか、近所のじいちゃん達もモーニングな気分にはならないらしい。
挽いてしまった豆を1人分だけ入れコーヒーを沸かす。
LINEを見ると珍しく風ちゃんからで、“入院するので暫く週末は手伝いに行けないので代わりに皐月とこの寧々ちゃんに頼んだのでバイト代をだしてください”と。
(風ちゃん、具合悪かったの?)とLINEを返すと
”職場の検診受けたら引っかかったので、精密検査の為に入院するの。“
先週手伝いに来た時には一言もそんな話してなかったのに。
昔からそうだ。
風邪を ひいて高熱を出しても他の姉たちと違い騒ぐ訳でなく1人で氷枕を用意し、静かに部屋で布団にねているような
3番目の姉、風香はそんな性格なのだ。
1番目の姉、花織さんに電話をしてみる。
カップにコーヒーを入れながら電話…と思ったらワンコールなり終わる前に出る。かなりのせっかちなひとなのだ。
「おはよう?洋武、朝からめずらしいね。なに?なんか用?あたしものすごーく忙しいんだけど。今さ風ちゃんの所に行くのに車運転してて、それ終わったら旦那の会社に行かなきゃいけないんどけど。だからお店は無理よ?」
…相変わらず人の話の前に自分の言いたいことぶっ込んでくる。
「風ちゃん、どこ悪いの?」
トーストを焼きながら、レタスをさらに盛り付ける。
「ん〜、膵臓?なんか粘液の入った腫瘍が膵臓を包むようにあるんだって。切らないと分からないけど、とりあえず悪性では無いだろって。あ、面会は無理よ。帰ってきてから会いに行くようにね。」
じゃあね。とさっさと電話を切られて僕はトーストを頬張りながら、薄い空色の空を見ていた。