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男衾三郎物語絵詞の謎

 あらすじにも書きましたが、畠山重忠について、私の目から見た疑念を書いたエッセイになります。

 従って、畠山重忠ファンの方々からすれば、怒られて当然のエッセイですので、そういう方はこの時点でそっ閉じをお勧めします。

 数か月前に完結させた「源頼家に転生した(以下、略)」において、今になってみればですが、ここはこう描くべきだったのでは、と私自身が後悔することが幾つかあります。

 とはいえ、実際に修正や改作等を始めると、それこそ作者的に言わせてもらえば、無間地獄に堕ちかねない(永久にここはこう直した方がいい、という底なし沼にハマる)事態になるので、描き直しは決してしないことに今の私は決めています。


 そう考えつつ、後悔することの一つが、畠山重忠の描き方です。

 結果的にですが、作中屈指の脳筋武者となってしまった和田義盛と好一対、と言われても仕方のない描き方になってしまい、思慮深く、又、人への思いやりもあり、吾妻鏡において「坂東武者の鑑」と謳われた面影が乏しい人物に、畠山重忠はなってしまいました。

 実際、現在も放映中の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の中でも、畠山重忠は周囲から好感が持たれる人物として描かれた上で亡くなっています。

 そうしたことからすれば、尚更に後悔したくなります。


 ですが、その一方で、本当に畠山重忠はそんなに周囲から好感が持たれる人物だったのか、と私の性格が悪いのか、そういった疑念が、快晴の空の中で浮かんでいる、本来なら無い筈の浮浪雲を見つけたときのような想いが、ふと私の中で沸いてくることがあります。


 何を言っている、畠山重忠こそ坂東武者の鑑、と言われそうですが。

 このエッセイで、順次、私の疑念の根拠を幾つか挙げて述べたいと思います。


「男衾三郎絵詞」という絵詞が、今に伝わっています。

 正確に言えば、この絵詞で今に伝わっているのは前編のみのようで、後編は散逸している代物です。

 この絵詞の概略を説明すると、中世で良く見られる観音霊験譚の一つらしく、武蔵国の住人、吉見二郎と男衾三郎という兄弟が主要人物で、吉見二郎の娘、慈悲がヒロインになります。

 吉見二郎は上京の際に山賊に襲われて亡くなり、男衾三郎は吉見二郎の所領等を横領し、慈悲を下働き等で酷使します。

 更に慈悲の婚約者には、慈悲は死んだと告げて、男衾三郎は自分の娘と結婚させようとしますが、婚約者は出家して旅に出ます。

 又、武蔵の国司が京から赴任してきて、慈悲に一目ぼれするも、男衾三郎は自分の娘を国司に勧め、国司が拒絶するところで終わっています。

 私としては、後編で観音菩薩の霊験によって国司が真相に気づき、男衾三郎は断罪されて、慈悲は父の所領等を取り戻して、更に慈悲と婚約者は改めて結ばれる幸せな結末が描かれたのでは、と考えますが、後編が散逸している以上、真実はどうなのかは闇の中です。


 そして、この絵詞で出てくる悪役の男衾三郎ですが、そのモデルは畠山重忠である、という説が極めて強いのです。

 又、吉見二郎のモデルは、梶原景時ともされています。

 畠山重忠は男衾に館を構えており、又、梶原景時は上京を試みる途中で討ち取られている等、様々な類似点がこの説の根拠として、論者からは示されていて、私もこの説に基本的に賛同しています。


 ですが、その一方で、何故に畠山重忠を悪玉として、梶原景時を善玉として、この絵詞の作者は描いたのか、という疑念が沸き起こります。

 この絵詞は鎌倉時代後期に作られたようであり、この頃に絵詞を作るとなると、それなりの有力者でないとできるものではありません。

 裏返せば、そういった有力者が、このような代物を鎌倉時代後期(それこそ吾妻鏡の見解が、公式見解になっていた時期と言ってもあながち間違いでない時期)に何故に作ったのか、

 吾妻鏡では、畠山重忠と対照的に梶原景時は基本的に悪玉として描かれています。

 何故に善悪が逆転しているのか、私には謎でなりません。

 ご感想等をお待ちしています。

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― 新着の感想 ―
[一言] 会津家老の梶原平馬が景時の子孫である事を鑑みるに、景時死後も梶原家はそれなりの力を保持しつつ血統を後世に遺してたと考えています。
[気になる点]  ──男衾三郎絵詞──  (*´-`)これは「鎌倉武士=蛮族よりひどいナニカ」でインパクトのある武士ライフなイラストの数々で良く資料にされるブツ!(特に居館にズラリ生首があるのは強烈)…
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