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9.シュブラン皇国王子フェイロン

暫くして滞在予定国の一つ、シュブラン皇国からフェイロン皇子がやって来た。

彼は第二皇子であるが、実は一番皇位に近い人物だ。

正直、この時期によく来訪したなと思う。

共に連れて来られた護衛と側近は全部で5人か…。

人数的には少ないが、相当な手練れであることが伺える。


シュブラン皇国は、沢山いる皇族のうち、国民投票で次代の皇帝が決まる。

1年の間に何回か投票を繰り返し、その都度で最下位になったものは脱落していき、最終的に多くの支持を集めた者が皇帝となる。

次の選挙は3ヶ月後にあるため、フェイロン皇子の他の兄弟姉妹たちは国内でのロビー活動に(いそ)しんでいる。

ただ、そのシュブラン皇国で圧倒的な人気を誇っているのが、この『フェイロン・シン・シュブラン』なのである。


シュブラン皇国では、皇位継承権を持つ皇子、皇女達の名前には必ず名前に『シン』が付いている。

選挙を行っていき、皇帝になれないことがわかった時点で戸籍からこの字は消されてしまう。

『シン』は、真に皇位を継ぐものだけが継承できる名前なのだ。

確か選挙も残りわずかだった筈だ。

まだ『シン』を継承できているフェイロン皇子は流石と言えよう。


「フェイロン皇子、ようこそいらっしゃいました」


アレクシス殿下が出迎える。


(ハオ)、アレクシス王子」


そう言って、二人は握手を交わす。


「私のことはアレクで構いません」

「では、我の事もフェイで構わない」


フェイロン皇子は現在30歳。

ただ、シュブラン人は総じて童顔が多いため、とても30歳には見えない。

青味がかった黒髪に、常にニコニコとしているため目は糸目だが、その目が見開かれた時に覗くのは切れ長の黒い瞳。

全てを見透かすような瞳である。

背は高いが体つきは普通。

ただ剣舞が得意らしく、見た目とは違い恐らく武人のような体つきなのであろう。

性格は温厚だが抜かりはない。

非常に厄介な相手と言える。


「フェイ!!」


皇子を呼ぶ声が聞こえた。

これは…。


「アイヤー!叔母上!ご健在でしたか!!」

「当たり前だろう?妾は健康が取り柄のシュブラン人だぞ?」


やって来たのは王太后のユファ様だ。

フェイロン皇子と同じ黒目で、青味がかった黒髪には白髪が見え隠れする。だがシュブラン人の特徴に漏れず、歳を感じさせない容姿をしている。

ちなみに体の弱かった先王様は、すでにご逝去されている。


「しかし…、まだお前が『シン』を名乗れているとは。世も末だな」

「これは手厳しい!さすが、嫁がなければシュブランの皇帝になっていたと言われている叔母上だ」

「まったくだ!お前の父には散々煮え湯を飲まされたわ!!本当に忌々しい…!!禿げろ!クソ兄貴」

「もう、禿げてます。それにいかに身内といえども、政敵を貶めるのもシュブラン皇族の(さが)ですよ」


そう言ってフェイロン皇子は笑う。


「まぁでも、妾はこちらに来て良かったかもしれぬ。おかしな事に、祖国よりミストラルの方が水が合っている。そういった事も見透かされていたのだろう」

「皇帝の千里眼の賜物です。それに皇帝はいつも叔母上の事を気にかけていますよ」

「わかっておる。皇族は政争が激しい分、懐に入れた者には特に目をかけるからな…。そうか…、兄上は禿げているのか。フフッ…。フェイよ、帰るときにこちらの毛生え薬でも手土産に持っていけ」

謝謝(シェ・シェ)、それはありがたいです。大変喜ばれると思いますよ」


ユファ王太后様とフェイロン皇子は、特に仲が良い親族のようだな。恐らく皇帝から何かしらの密命を受けているのであろうが、久しぶりの親族との再会に王太后様も嬉しそうだ。


「ユファ様。勝手に薬の横流ししないでください」

「チッ。五月蝿いのが来た…」


そう言って登場したのは父である宰相だ。


「フェイロン皇子、ようこそいらっしゃいました。宰相のルーカス・ウィラーです」

「フェイロン・シン・シュブランだ。此度はよろしくお願いする」


二人はそう言って握手をする。


「大広間で陛下がお待ちです。案内させていただきます」

「では、頼む」

「お供の方もどうぞこちらへ」


こうして、シュブラン皇国一行は大広間へ向かった。



―――大広間


「フェイロン・シン・シュブラン、言祝(ことほ)ぎの為、シュブラン皇国より参りました」


片膝をつき、フェイロン皇子が陛下に挨拶をする。


「ありがたく頂戴する。楽にしてくれ」


陛下の言葉でフェイロン皇子が立ち上がる。


「王太后もそなたの到着を心待ちにしていたぞ。私にとってもそなたは従兄弟だ。心からの(もてな)しを用意しているので、ゆるりと過ごされよ」

謝謝(シェ・シェ)。陛下の配慮に感謝します」

「アレクシス!フェイロン皇子を頼むぞ」

「承りました。フェイロン皇子、どうぞこちらへ」

謝謝シェ・シェ、アレク。我はこの国の菓子が大好物なんだ」

「それは良かったです。レセプションルームに色々用意していますよ」


歓談しながら部屋へ向かう。

給仕をする侍女の中にユリアを紛れ込ませてある。

フェイロン皇子が転生者か確認してもらうためだ。

アレクシス殿下だけでは心許ないからな。

さて、吉と出るか凶と出るか…。


「…ハハハ。ところで、この国には剣姫がいると聞いた。アレクは知っているか?」

「あぁ、それならロイドの婚約者のスカーレット嬢です。剣豪エドワード・ミレン辺境伯の娘ですよ」

「なんとっ!!我はエドワード卿の大ファンなのだ!滞在中に是非とも手合わせ願いたい!」


キラキラした目でこちらを見てくるが、これはNGワードでは無いのか?

俺はチラッとユリアを見る。

ユリアが微かに首を横に振った。どうやら違うらしい…。


「スカーレット嬢に話してみます。ただ、嫁入り前ですので御手柔らかにお願いしますね。例え皇子と言えど、婚約者を傷つけられて我慢出来るような胆力は持ち合わせていませんので」


本当は紹介するのも嫌だが、他国の皇子に請われては仕方ないだろう。これが俺が出来る精一杯の譲歩だ。


「おや?牽制されてしまったか。君ほどの者がこう言うのだ。スカーレット嬢はさぞや素晴らしい女性なんだろうね?」


フェイロン皇子の目が見開かれている。

ヤバいな、興味を持たれてしまったか…。

俺はフェイロン皇子を睨む。

それに気付いた皇子がまた糸目に戻った。


「心配するな、他意はないぞ!我にもシュブランに最愛がいる。純粋に剣を嗜む者として力試ししたいだけだ」

「そうなのですか?」

「信じてくれ」


他国の皇族にここまで言われては引き下がるしかない。


「わかりました。なんとか滞在中に日程を組むように(つと)めてみましょう」

「感謝する」


アレクシス殿下が、信じられない者を見るような目で見てくる。失礼な…。俺だって国のためなら譲歩することだってある!


各国の位置としては、

ミストラル王国を中央として、南にティーダ国、東にシュブラン皇国、北にオルフェル連邦国、西にダイス王国となります。

領土の広さでいうと、

シュブラン皇国>ミストラル王国=ティーダ国>ダイス王国>オルフェル連邦国 です。

シュブラン皇国は大国です。


✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩


読んでみて面白かったなぁと思われた方は、よろしければブクマ評価もお願いしたいです!!

大変、励みになります(。>﹏<。)

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