4.デート
休日。
俺はレティをデートに誘った。
昔に比べれば、スマートに誘えるようになったと思う。
レティは既にウィラー公爵邸に居を移しているため、エントランスホールにて待ち合わせだ。
暫くすると、レティが階段を降りてくる。
「ロイ様!お待たせしました!!」
今日のレティの装いは、ネイビーのサマーニットトップスと水色と白のストライプ柄のスカートを組み合わせたドッキングワンピースだ。髪の毛は、以前プレゼントしたバレッタタイプの髪飾りですっきり一つに纏められている。
レティの上品で清楚な様子がこれでもかと現されていた。
公爵家の侍女達、いい仕事したな。
レティの支度を手伝ったであろう彼女達が、柱の影から笑顔でサムズアップしている。
あれは自分の仕事をやりきった顔だ。
臨時ボーナス狙いか?
考えておこう…。
そんな事を思いながら、近くまで来たレティにエスコートのため手を差し伸べる。
俺の素直な気持ちを伝える事…と、心の中で繰り返し、レティに向き合う。
「その服、すごく似合ってる。プレゼントした髪飾りもつけてくれているし、俺の好みに合わせてくれたの?」
あざとく小首を傾げるのも忘れない。
「ロイ様が気に入ってくださって良かったです!さすが公爵家の方たちですね!素晴らしいです!!」
あれ?あんまり響いてない?
この言い回しはダメだったのか…。
レティを褒めたのに、何故か公爵家の使用人の仕事が素晴らしいという話になっている。
もっと直接的にならないといけないのか…。
「どうしました?」
レティも小首を傾げて聞いてくる。
めっっっちゃ可愛い…。
天使か!
「いや、なんでもないよ。では行こうか」
俺は気持ちを立て直し、街に繰り出した。
王都の街・エヴァンスは大きな街道が整備されているため、様々な商品が集まってくる流行の発信地だ。ヒトとモノの流れが激しいため、要所要所に騎士団の詰所が設置されており、治安は保たれている。
貴族の子女が護衛を連れずに歩いても大丈夫なほどだ。
この状態を維持する事は並大抵の事ではない。
偏に、王族による善政が布かれているからだ。アレクシス殿下にもぜひ精進してもらおう!
「レティは気になるお店とかある?」
「そうですね…、紳士用の洋品店に行きたいです。いつもロイ様にプレゼントを貰ってばかりなので、今度は私がプレゼントしたいです!」
「そんな事、気にしなくてもいいのに…」
「いえいえ、プレゼントさせてください!…それとも、私の選んだものはお嫌ですか?」
絶対家宝にします!!帰りに丈夫な金庫を買わなければ!!
だからそんな悲しそうな顔しないで。
「そんなことないよ!すごく嬉しい。どんなものを選んでくれるのか楽しみだ」
「良かったです。私の髪飾りのように、普段から身につけられるものにしようかと思っていたので」
レティがホッとしたような顔をする。
金庫却下だな。この命尽きるまで身につけよう!!
そうして俺たちは紳士用の洋品店に立ち寄った。
「これはこれはロイド様!いつもご贔屓にありがとうございます!」
馴染みの店主が揉み手で挨拶してくる。
この男、態度は胡散臭いが審美眼は一流だ。仕事に関しても妥協せずにきっちり納品してくれる。自分の仕事と信頼に誇りを持っているタイプの人間なのだ。そのため、代々ウィラー公爵家の男はこの店で服や小物を誂える。最新の流行も押さえているため、この店を使えばまず間違いない。
「邪魔するぞ、ニクラス」
「おや、ロイド様。後ろにいらっしゃるのは婚約者様ですか?」
「あぁそうだ。婚約者のスカーレット・ミレン辺境伯令嬢だ」
「ミレン辺境伯のお嬢様でしたか!いやぁ〜、お美しい!ロイド様に見劣りしない美女なんて、私初めて見ました!!」
「いえ…、そんな、買いかぶり過ぎですわ…」
レティが恥じらう。
「そんなことありませんよ!クロエ様とはタイプが違いますが、稀に見る美女ですね。しかも、お兄様達と同じように武芸を嗜まれるのですか?」
「えっ?何故それを」
「体つきと所作でわかります。伊達に王都で40年テーラーをやってませんよ」
俺は下衆な目でレティを見るな!と冷ややかな視線をニクラスに送る。しかし、ニクラスは意に介さない。
「この前、お兄様達もこちらにいらっしゃいました。とても洗練された体つきでしたので、よく覚えています。やはり関節部分の可動域を重視した、丈夫な素材の洋服を求められていきましたよ」
「そうだったんですね!」
「淑女用の洋服やドレスは、私の妹が店主をやっている店が近くにあります。スカーレット様も、もしよろしければ足をお運びください」
ニクラスめ…。上手いこと自分の所の商売につなげている。
だが、武人の要望にも応えるなんて…。
やはり、仕事の出来る男なんだな。
「所で、本日はどのような用件でしょう?」
「今日は、スカーレットが私にプレゼントを見立ててくれる。案内を頼む」
「かしこまりました。スカーレット様、どうぞこちらへ」
ニクラスは奥から女性店員を呼ぶと、店内を案内させる。
それを眺めていると、ニクラスが声をひそめ話しかけてきた。
「今回の即位式で滞在予定の4国ですが、特に別の狙いがあるわけではなく、純粋に祝う気持ちのようです。まぁ、ティーダ国は里帰りのついでのようですが…」
「そうか。引き続き、何かあれば報告してくれ。特にダイス王国のショウ王子の動向は注意深くお願いしたい」
「ショウ王子ですか?かしこまりました。でも珍しいですね。ロイド様がそこまで個人にこだわるなんて…」
「まぁ、ちょっとな…」
いくらニクラスでも、この先起こるであろう事をわかっているなんて言えない…。
ニクラスの本当の正体は公爵家お抱えの諜報員だ。
洋品店を経営しながら、物流と他国の動向を探っている。
彼の取扱う品は一流品のため、他国王族も御用達にしている。そのため、他国王室の動向も把握しやすいのである。
まぁ、出入りさせてるのはニクラスだけではないがな…。
そんな事を話しているうちに、レティの買い物が済んだようだ。
「お待たせしてしまいましたか?」
レティが上目遣いに聞いてくる。
「全然待ってないよ。どう?俺に似合いそうなものは見つかった?」
そう聞くと、恥ずかしそうに俯いてしまった。
「は、はい…。気に入っていただけると嬉しいのですが…」
「絶対に気に入るよ。間違いない」
俺はそう言ってレティから袋を受け取り、大事そうに一撫でした。
「ロイド様、この前頼まれていたものも仕立て終わりましたが…」
いい雰囲気だったのに、ニクラスが割って入ってくる。
コイツ、わかってて言ってきてるな。
その証拠にニヤニヤしている。
俺は苦虫を噛み潰したような顔をして、ニクラスに答える。
「あぁ、では受け取っていこう。ごめんレティ。先に外に出ていてくれないかな?」
「わかりました!」
そう言ってレティを先に見送り、ニクラスに頼んだものを取りに向かった。
次回、スカーレット視点です。
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